◇◇◇◇◇
ドクストン迷宮から飛び立ったマリスは、近くの森付近まで飛んでレキを降ろした。
マリス:「レキ。これからどうするの?」
レキ:「ああ。このまま聖なる樹海沿いにヘルサイズ本部を目指す。少し長旅になるぞ。
もう、たぶん俺たちの素性は知れたと思った方がいいだろうからな。
悪いが大きな街は避けて直接向かう。」
マリス:「あら、気にしなくていいわよ。
ヘルサイズ本部の場所は知ってるの?」
レキ:「ああ、元々ある時期に拾われてから、そこで育ったからな。俺は問題ない。
問題はマリスをどうするか?だな。」
マリス:「どういうこと?」
レキ:「マリスはヘルサイズに所属してないだろう。
どうやって紛れ込むかを考えなきゃいけないと思ってな。」
マリス:「普通に入ればいいじゃない。
強制的に言うことを聞かすことはできると思うけど。」
レキ:「それはダメだ。
言ってなかったが、俺はまだヘルサイズでは翠帳頭という位でな。
幹部になるまでは呪術で縛られている。」
マリス:「へえ。初耳ね。その呪術って厄介なの?」
レキ:「よくわからんが、即死する可能性がある。
この胸の刻印がそうだ。」
マリス:「ああ、これね。そういうことだったのね。」
レキ:「厄介なことに解呪されるまでは、俺の命はヘルサイズに握られている。」
マリス:「どうすれば、解呪できるの?」
レキ:「ヘルサイズ本部に専門の呪術師がいる。
幹部になった時に解呪されるんだよ。」
マリス:「そうなのね。じゃあ、幹部になるしかないってことかしら?」
レキ:「今のところはそうだな。」
マリス:「わかったわ。幹部になる当てはあるの?」
レキ:「ああ、それについてはある程度条件は決まっている。10代でなった奴はいないが、そこはなんとかなるだろう。
とにかく、ヘルサイズ本部に着く前に条件をクリアしてから戻る予定だ。」
マリス:「そう。ならいいわ。行きましょう。」
◇◇◇◇◇
リオたちは、翌日出発する予定で一晩教会に泊めてもらっていた。
サントス:「もう出発するんですかな?」
リオ:「はい、お世話になりました。」
サントス:「そうですか。無事に試練を達成されることをお祈りしております。」
リオたちは教会を出て、ひとまずギルド支部に向かった。
こちらに向かう途中で狩った魔物の魔心を換金するためである。結構な量である。
ギルド支部に入るや、いきなり声をかけられた。昨日の管理人である。
管理人:「あ!お前たち!昨日迷宮にいた奴だな。
ちょうどいいところに来たな。
昨日の出来事を説明してくれよ!」
何やら昨日の管理人が受付の女性に訴えている。揉めてるのかな?
受付:「この方達が昨日一緒にいた人ですか?」
管理人:「そうだよ!」
受付:「すいません。昨日迷宮入り口にいらっしゃいましたか?」
受付の女性はリオたちに声をかけた。
リオ:「あ、はい。いましたけど。」
管理人:「な!言っただろ!
こいつらにも事情を聞いてくれよ!」
受付:「事情を聞かせていただいてよろしいですか?」
リオ:「あ!はい、いいですけど……。
魔心の買取もお願いしたいんですが……。」
受付:「はい。後ほど伺います。
こちらにお越しください。」
リオたちは受付の女性に連れられて、階段を登って支部長室に案内された。
コンコン!
ランディ:「はい、どーぞ。」
受付:「支部長。例の迷宮の件で話があるんだけど大丈夫?」
あれ?支部長にはタメ口なの?
リオたちが受付の女性と共にちょっとだらけた支部長と対面した。
ランディ:「こちらは誰?」
受付:「はい、管理人が言ってた例の生き残った冒険者なんですけど、状況を確認するために来てもらったんですよ。」
ランディ:「おお、あれね。本当にいたんだ。で、誰?」
リオ:「あ!リオです。
それとリンドウとカゲロウです。」
ランディ:「俺はここで支部長やってるランディ・ブルース。よろしく。
そちらの女性2人って、もしかしてSランク?」
リオ:「あ!はい、そうですね。
最近2人はSランクに上がりましたね。」
ランディ:「ああ、やっぱり。
なんか本部から連絡あったわ。
ふーん。そうなんだ。異常だねぇ。
君たちのグループのことは聞いてるよ。」
受付:「えー!?
Sランクが2人いるグループ?
そんなの聞いたことないですよ!」
受付の女性は驚きの様子で叫んじゃったよ。
ランディ:「そうなんだよなぁ。
Sランク美少女が2人で、そのリーダーがCランクの少年。
どうしたら、そんな組み合わせになるのかなぁ。羨ましい……。」
受付:「支部長!心の声がダダ漏れしてるよ!」
ランディ:「おーっと。いかんね。
それで、リオくん。どうやって彼女たちと知り合ったの?」
受付:「支部長!聞くのそれじゃないでしょ!」
ランディ:「えー。だって気になるじゃん。」
受付:「そうですけど……ちゃんとしてください!」
ランディ:「わかったよ。
じゃあ、昨日の様子を教えてもらえる?」
リオは昨日あったことをランディさんに一部を伏せて話し始めた。
ランディ:「ふんふん。なるほど。
そこにいた謎の2人が冒険者殺しの犯人なわけね。君たちでも手強いとなるとやばいねぇ。
その分だと迷宮内でも同じことが起きてたかも知れないねぇ。」
リオ:「はい、一人はレキ・グランベルという少年で、もう一人は確かマリスって女の人です。」
ランディ:「あれ?冒険者登録ではカランマ・グランベルとマリス・オズボーンってなってるけどね。」
リオ:「たぶん、少年の方は偽名だと思います。
本人に確認しましたから。」
ランディ:「うーん。そうなんだ。
まあ、危険だから本部に連絡しておくよ。
管理人の言ってたことともだいたい合ってるしね。そうすると管理人は疑って悪かったな。
日頃の行いが悪いから自業自得だけど。」
受付:「いやいや、支部長が一方的に疑ってただけなんですけどー!」
ランディ:「あれ。そうだったっけ?」
受付:「そうですよ。管理人の対応はこっちでやっときますから。いいですね?」
ランディ:「ああ、ビネルさん。適当によろしく!」
ビネル:「もう!これだから!
強いだけで頭は脳筋なんだから。」
ランディ:「あらら。ひどい言われようだな。
まあ、間違ってないけど。
じゃあ、気をつけて帰ってね。」
そのあと、ビネルさんに魔心の換金をしてもらって、冒険者ギルドを出発した。
リオは、魔心の換金したお金1220万ペロを受け取った。
チャリン(効果音)
所持金:12275000ペロ
◇◇◇◇◇
その夜。支部長室にて。
ゼビウス:「ランディ!来たぞ!」
ランディ:「あ!ゼビウスさん。来てもらってすいません。早かったですね。」
ゼビウス:「ああ。ちょうど、本部に帰る途中でこの辺にいたからな。それにしても本部は人使い荒いな!すぐに行けって!」
ランディ:「それはいつものことでしょう。」
ゼビウス:「お前も本部に戻ってこないか?」
ランディ:「いやですよ!
せっかく支部長になったのに。」
ゼビウス:「確かにな。ただ、Sランクは少ないからな。
いてくれると助かるんだが……まあいい。
で、聞かせてくれ。」
ランディはリオから聞いた話をゼビウスに説明した。
ゼビウス:「なるほどな。
リオはもうここまで来てたのか。
それとその2人組は相当の手練だな。
リオたちでなんとか追い払ったと。」
ランディ:「はい、本部で手配書を出した方がいいでしょうね。」
ゼビウス:「目的は何なんだろうな。
ここに来るまでにも冒険者が殺されているのを見かけたが、それもそうかもしれん。
レキ・グランベルにマリス・オズボーンか。
わかった。本部で手配しておくよ。」
ランディ:「よろしく頼みます。」
ゼビウス:「それとな、ランディ。
ここだけの話だが……。
教会は隠しているが、300年ぶりに教皇候補が現れたという情報を本部が入手した。」
ランディ:「え?それって?」
ゼビウス:「ああ、もし本当ならヘルサイズは動くかもしれん。
元々あいつらは魔教信者の集まりだ。放っては置かないだろうな。」
ランディ:「でしょうね。もし本当なら。」
ゼビウス:「そうなったら、お前も支部長はやってられんかもよ。ハンターズも聖教側として動くだろうからな。」
ランディ:「はぁ……。
せっかく隠居生活を楽しんでたのに……。」
まだこの時は、リオが教皇候補であることは、教会の一部の人間しか知らない。
リオたちは、聖なる森を目指して北西に。
レキたちは、ヘルサイズ本部を目指して北東に、それぞれの運命に向かって進んでいった。
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