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#シングルマザー
水羽凛
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「へ?」
「瀕死の花巻くんの前で、他のお見合い相手がを褒めるなんて、酷すぎるわ」
「あっっ」
思い出して足元に立っていたハムスターを見ると、白目で仰向けの姿で倒れていた。
「十五時二十四分ーー永眠です」
「勝手に殺すな」
白目のハムスターは息も絶え絶えに起き上がった。
「男は顔じゃない! 情熱と愛だ !」
と言いつつも大粒の涙を目元に溜めていた。
確かに指名して来た花巻ハムスターに対して、不誠実な発言だった。
「あの、ごめんなさい。少女漫画の読み過ぎでつい」
「大丈夫。俺は君に決めている。が、君の幸せが俺じゃなかったら、ちゃんと諦めるよ」
ハムスターの愛らしい顔で私を見つめてくる。
私は現実から逃げて、拒絶してしまったのに。
今、少女漫画みたいな友達のお見合いを羨ましがって傷つけたのに。
「諦めがつくまでは頑張ってアピールするから。ルームフェアよろしくな」
「ルームシェア、ですね」
花巻ハムスターは悪い人ではない。純粋で優しい人なのは言葉から感じる。
なので強く言えなかった。
受け入れるしかない。
無茶苦茶に嫌な人だったら良かったのに。
お見合い相手がハムスター。
複雑な気分のまま、ハムスターと校門まで歩いた。
「すげえ、花巻がる!」
「花巻一慶がいるってよ」
ハムスターは知っている人は驚いたり黄色い声をあげて、一緒に記念写真をとったりサインに応じたりしていた。
「いやあ、学生でも一応は知っててくれているんだな」
蕩けたスライムハムスターは始終笑顔だった。
「皆がポーズしてたけど、左腕を突き出して左腕の前に右手を突き出してピースサインってなに?」
「ああ、俺の左腕に傷痕があるんだ。v字型の」
見せてくれたけど、ハムスターの小さな手しか見えない。
「まあ、女の子に見せるものでもないか」
小さな手を後ろに隠して小さく笑って見せた。
その笑顔は灯りが消えたように心ともない。
「いや、見せて。よく見せて」
ハムスターだから抱っこしようと持ちあげたが、びくともしない。
まるで根が生えた木のようだ。
「全然動かない」
「当たり前だよ。俺、何キロあると思ってるの」
「ハムスターは200グラムもないはず
「ハムスターはね。俺はきみを片手で持ち上げることもできるよ」
ハムスターに見えている今、彼に片手で持ち上げられるのは嫌だな。
「やってあげようか?」
「いえ。傍から見たら、動物虐待みたいですし」
やんわりと断りながら校門に進むと、空を見上げてボーっとしている一河が待っていた。
車椅子の車輪に蝶々が止まってるのに気づきもしない。
考え事をしているというよりも、なにかに心を奪われて心ここにあらずな様子だ。
「おーい、一河」
「……」
返事がない。
試しに額に手を当ててみたら『ぬぉうんど!』と謎の奇声をあげた。
「熱がないか触ってあげたの」
「なんだ……。流伽ちゃんか」
驚いたよーってのんびりした口調で言うのは、いつも通りの一河だ。
「って、あれ? そちらの人は?」
「えっと、その……ハムスターです」
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