テラーノベル
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「日織さん、怖がらせてすみません」
私の反応に修太郎さんが申し訳なさそうに頭を撫でていらして、
「でも……もしも叶うならば――」
私は修太郎さんが「触って欲しい」とおっしゃるよりも先に、そこへおずおずと手を伸ばしていた。
「――ひ、日織、さんっ?」
手に、すべすべとした温かい肌触りが伝わってきて、私はその手触りを意外に思った。
その猛々しい見た目から、もっとゴツゴツとした無骨な感触を想像していたから。
「しゅ、修太郎さん。あの。わ、私、どうすれば……貴方を気持ちよくできます……か?」
自分でも物凄く恥ずかしいことを申し上げているという自覚はあって……。でも、それよりも修太郎さんに感じて頂きたいと思ってしまった。
聞きながら、手の中のモノを指で包み込んだら、修太郎さんが「……んっ」と小さく声をもらされた。
「あ、ご、ごめんなさいっ」
触れたことのない、恐らく男性の身体で一番敏感な部分。どんな風に触って差し上げるのが良いのか力加減さえ分からない。「痛かったですか?」とお聞きしたら、修太郎さんは首を横にお振りになられてから、「僕の方こそ……変な声を出して……ごめんなさい」と潤んだ目で私を見ていらした。
(どうしようっ。感じていらっしゃる修太郎さん、物凄く可愛いのですっ)
なんて、思ってしまったことは、口には出さない方がいい、ですよ、ね?
もっと修太郎さんがいっぱいいっぱいになられているお姿を拝見したい。
なのに、私は彼に触れたままの手をどうしたらいいのかさえ分からなくて、情けない気持ちになる。
とりあえず手を退こうにも、下手に動かせば、もしかしたら修太郎さんに痛い思いをさせてしまうかもしれないと思うと怖くて動かせない。
「日織さん、大、丈夫ですから……。怖がらないで?」
切なげにそうおっしゃると、修太郎さんは私の右手を御自身の両手で包み込んでいらした。そうして私の手の中に、彼のものをギュッと握り込ませると、
「このまま、動かしても……構、いません、か?」
耳許に彼の低く掠れた吐息混じりの声を注ぎ込まれると、私はそれだけで全身が熱く火照ってしまう。
「日織……さん」
ほわほわとした浮遊感の中、熱い吐息とともに彼に名前を呼ばれた。その途端、身体に甘くとろけるような電流が走って、
「……ふ、あっ」
彼の声に、背筋がゾクリと粟立って、気がつけば私も鼻にかかった吐息を漏らしてしまっていた。
身体の奥の方がキュンと疼いて、私は思わず両足をすり合わせるようにして脚をギュッと閉じた。
「日織さん、これ以上……僕を、煽らないで?」
耳元で重ねられる修太郎さんの切なげなお声に、
「あっ、耳も、とでっ、そんなっ、されたら……無、理っ……なのですっ」
何とかそう言ったら、耳朶を優しく食まれた。
その刺激に思わずギュッと手に力が入ってしまう。
「――あ、日織っ」
初めて彼に呼び捨てられたことが切なくて、くすぐったくて……。
私は身体中の血液が沸騰してしまうんじゃないかと思うくらい、熱くなった。
「……日、織さん、……すみ、ませんっ」
修太郎さんが荒い息の合間、途切れ途切れに謝罪なさるのへ、私は思わず思い切り首を振って「よ、呼び捨て、嬉しかったのですっ。――すごくドキドキしてしまいましたっ」と必死にお伝えした。
修太郎さんは私の言葉に瞳を見開いて驚かれると、私の手をそっとご自身から放された。
そうして私の手をティッシュを何枚も使って丁寧に拭ってくださいながら、「いや、そこではなく……」と恥ずかしそうにおっしゃると、「その、僕だけが達してしまったので……」と申し訳なさそうにうつむかれた。
私は修太郎さんの言葉に、初めて彼の謝罪の真意を知って、途端ドギマギしてしまう。
ひゃー。言われてみれば私、手が汚れてしまっているのですっ。……それに……車内にも先ほどまではなかった青臭いにおいが……。
筍の皮とか……栗の花とか……そういうのに似たにおい。
ってこれがもしかして……あのっ……。
#ラブコメ
月詠 涼
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コメント
2件
ひおりちゃん、案外大胆かも(笑)
感想、もう宝物みたいに大事に抱えたい一話でした……! 呼び捨てにされた瞬間のドキドキが、こちらまで伝わってきて、思わず息を止めて読んでしまいました。修太郎さんの「日織」と呼ぶ声、すごく切なくて甘やかで……。触れ合う手のひらの温度や、掠れた吐息のひとつひとつがこんなにも繊細に描かれていて、もう胸がいっぱいです。ずっとふたりのこの距離感を見守ってきた読者としては、たまらない進展でした。大切にゆっくり紡いでくださって、本当にありがとうございます。