Bad Eud
【すち視点】
「…そういや、さっきの人は?」
「あぁ、もういなくなりましたよ。」
「…そっか」
少しずつ、足音が消えていった。みこちゃんが離れちゃったんだ。
「…危ないわね、なんで音を出そうとしたのよ!」
みほさんは何度も何度も私の頬を平手打ちしたり、体を傷つけるようにカッターで切り刻んできた。身体中痛くて、声すらもう出なくなった。
「…こいつを適当に捨てなさい。」
そう周りの秘書の方に言った。秘書の中は私を心配している人も数人いたが、みほさんが怖いのか、黙ってみることしかできていなかった。
何人かで抱えられ、冷たい地面に投げつけられた。体が動かなく、ただひたすらに、静かに涙を流すことができなかった。
【みこと視点】
今日はなんだか嫌な予感がしたから、普段よりも早く帰るように、すちに連絡をした。
『すち、今日普段より早く帰るね。』
そうスマホで伝えて、そっと閉じた。
しばらくして仕事が終わったため、家に帰ってもすちがいなかった。スマホを確認しても既読にならず、なにかあったのかと不安になり、すちと共通で使っているGPSを確認すると、会社のオフィスあたりで途絶えていた。
用事なしですちが会社に来ることはないから、なにかあったのかと思って、急いで会社に向かった。
「ッ、はぁ、はぁッ、 」
会社についても、すちはいなかった。誰か知っているだろうと思い、近くにいた秘書数人に話しても、声を揃えて「知らないです。」としか言わなかった。
そうだ、今日きた女の人って、すち?すちだったら辻褄が合う。ならみほが知っとるはず。急いでみほに連絡を取った。
『みほ、オフィスに来てほしい。』
『了解です。』
数分後、みほが駆けつけてくれた。
「みこと社長、ご用は、?」
「…緑髪の、赤い瞳の女性来なかった?」
みほは思い当たるような顔で考えていた。きっと来ていたのだろう、と思った。
「…あぁ、来ましたよ」
やはり来ていたようで、今どこにいるのか聞こうとした途端、
「あの女、みこと社長にお弁当作ってたり、スマホケースが一緒だったり、ちゃん付けしていたり、とても迷惑でしたよ?wしかも妊娠してたなんてw。体自体とてもよかったですけど、妊娠した体でみこと社長を誘惑しようとしていたんですよ。」
…妊娠、?すち、妊娠したん…?なら尚更、家におらんといけんのに…ッ、?ほんまにどこにおるんや、?
「ッみほ、どこにおるの?」
「え?」
「すち、ッ、どこにおるの、?!」
みほは戸惑った顔で俺を見てきた。なにを言っているのかまるで理解できなかったかのように。
「…適当に周りの秘書に捨てさせました。」
「…は、ッ、?」
捨てた?妊娠しとる人を捨てたなんて…。
「…なにしたん、その人に」
みほは思い出そうと頭を抱えていた。その後すぐに思い浮かんだのか、誇らしげに語り始めた。
「叩いたりカッターで切り刻んだり、服を裸させたり、蹴ったり、踏んだりしましたよ。」
「ッ妊婦の方になんてことしとるんよ!?」
みほは俺の怒鳴り声にびっくりして、肩をすくめた。まるでみほは、俺がなにに怒っているかすらもわからなかった。
すちを傷つけたのも許せんよ。けど、人にするようなことじゃない。
「…捨てたって場所どこ?」
「多分、ぁっち、です…」
プルルルルルルルルッ、
電話、、?こんな時間に一体誰が…。
…〇〇から、?なんで急に…。そんな考えが頭によぎり、電話に出た。
「〇〇なに、?今急いどるんよ、!」
「…すちのこと?」
なぜ”らんらん”がすちのことを知っとるのか、分からんかった。けど、すちのことが今ならなにか分かるかもしれん。
「すち、?今そこにおるん!?」
「いるよ、今から位置送るね。みこと、すぐきてね。」
と言われ、電話を切った。そしてみほに、
「あとで話すことがある、。」
と冷たい目で伝え、らんらんが送ってくれた場所に向かった。
ガラガラッ
「すち、ッ!!」
病室のドアを開けると、身体中傷だらけで、点滴をつけられているすちを、見守るらんらんがおった。
「みこと、ッ、」
らんらんは悲しい顔で、俺を見てきた。らんらんも悲しいんだ…。
「…道を、散歩してたらすちが倒れてたんだ…。それで、ッ、それでぇッ(グスッ、」
「…大丈夫よ、ありがとね、 」
…すち、ごめんな。俺が悪かったんよな。誰にもすちのこと話とらんかったから、。
「…私、ちょっと外の空気吸ってくるね、」
らんらんはきっと、俺とすちの時間を作るろうとして、部屋を出て行ったんかな、って、思ってまう。
俺はすちの手を握り、目を覚ますことを願うことしかできんかった。