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篠原がその噂を初めて聞いたのは、大学のゼミ室だった。
金曜の午後、外は小雨。
レポート提出を終えた学生たちは談笑し、ノートパソコンの画面を覗き込みながら動画を見ていた。
「なあ、EndPointって知ってる?」
同じゼミの佐伯が、何気ない調子でそう言った。
篠原は椅子にもたれたまま顔を上げた。
「なんだそれ。アプリ?」
「サイト。アクセスすると、自分の“残り時間”が出るらしい」
数人が笑った。
「またそういうオカルトサイト?」「タイムカプセルとかじゃね?」
佐伯は笑わず、スマホを見せた。
そこには白いページのスクリーンショット。中央に大きく「72」と表示されていた。
「この数字、三日後にゼロになる前に消えた人がいる」
佐伯の声は冗談めいていたが、目の奥は固かった。
篠原は興味を引かれた。
ありそうで、なさそうな話。ネットに転がる怪談のひとつ。
だが、“残り時間”という言葉が耳に残った。
夜、雨音を聞きながら篠原はパソコンを開いた。
EndPoint。
検索すると、まったく情報が出ない。
それらしいブログ記事や掲示板の投稿も、すべて削除済みかエラー表示になっていた。
諦めかけたとき、古いまとめサイトのコメント欄に短い文字列が残っていた。
endpoint.jp/time
「もうすぐ終わる」
篠原は半信半疑でアドレスをコピーし、ブラウザのアドレスバーに貼り付けた。
Enterキーを押す。
画面は真っ白だった。
中央に小さく数字がひとつだけ。
49
それだけだった。
上下左右どこをクリックしても反応がない。
ただ、右下に「単位:h」と書かれている。
時間? 49時間?
篠原は苦笑した。くだらないジョークサイトに違いない。
タブを閉じようとして、なぜか指が止まった。
その数字が、どこか現実味を帯びて見えたのだ。