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私の学校には裏庭があります。私を含めた10人程度しか知らない小さな裏庭で、特別な抜け道を通らないと行けないような場所でした。
しかしあの事件の後から、私は近づかなくなりました。
ある日いつもの通りに抜け道を通り、裏庭で知ってる人たちと鬼ごっこをしていました。私は逃げる側だったので、体力を温存しておくために木がたくさん生えている方向に走っていきました。
雨上がりだったので地面がドロドロしていて、道中で何度もこけそうになったのを覚えています。
走っていると何かに足が当たり、グシャッと派手にこけたんです。お気に入りのフリフリのスカートが泥まみれになって涙をぽろぽろ流しながら大声で泣いていると、後ろから肩をぽんと叩かれました。不思議に思い後ろを見ると、そこにはダイヤモンドやルビーがたくさんついた箱が落ちていました。
「何だろう…?きらきらしてて、綺麗!」
「あれ?あいつだけ見つからねぇ!」
遠くから私を探す声が聞こえますが、幼かった私は宝石箱に夢中になっていました。ドロドロの地面に落ちている、傷や汚れがひとつもない箱は今考えると異常ですが、当時の私はなぜかこういう物と納得していました。
「もう帰ろーぜ、あいつも帰っただろ」
「うんうん、私たちも帰ろ!」
遠くでざわざわと話している友達の声が聞こえて、慌てて走って戻りました。もちろん、箱は丁寧に抱えながら行きました。
他の友達が驚いた表情をして、たくさん質問をしてきましたが、私は林の方を指差して
「あそこに隠れてた」
と言いました。すると私の友達の1人が、どうしてそんなスカートが汚れているのかようやく分かったと大声で笑い始めてしまいました。
ここは立ち入り禁止の場所なので、声で気づかれる!とみんなで走って出て行きました。
その日は金曜日で5時間目が体育だったので、殆どの人も泥まみれのスカートなんて気に留めずにそれぞれいろんな話をしていました。私は持ってきた箱を丁寧に服でくるむと、脱いだスカートと一緒に袋にポイと投げ入れました。
ようやく授業が終わって、みんなで帰りの会をしました。クラスの中心に立ってる女の子がとっても明るい声で
「きりーつ!れーい!さようなら!」
周りの人も、さようなら!と、大きな声で言いました。みんなが下駄箱目指して廊下を走り、途中で他のクラスも帰りの会が終わったのか、全力ダッシュしている私のクラスと一緒に走り出しました。校長先生は目が悪いので、走っていても気づかれませんでした。私は袋から箱を取り出した時に、ふと思いました
これ、開けたら何が入っているんだろう
そんな好奇心が私を動かした。いや、動かしてしまったのです。箱には小さな鍵と鍵穴があって、鍵を差し込み回すと、カチャッと軽快な音と共に蓋が開く…その瞬間、全身にぞわわっと鳥肌が立ったのです。
まだ中を見ていませんでしたが、開けてはいけない雰囲気を醸し出していました。私はなんて事をしてしまったんだと、その瞬間にこれは何かを封じていたって事が分かりました。箱は汚れるときっと効果が無くなってしまうので、汚れないように呪い《まじない》をかけたのでしょう。
私は怖くなって、箱をがしっと掴んで、蓋が開かないようにしながら家に帰りました。私の家は昔からある有名な神社で、お父さんやお兄ちゃんはみんな頭が坊主?だったのです。家に帰ってお父さんに箱を見せた瞬間に、バシンと頭に衝撃が走りました。
「どこで拾った!!!バカ娘!!!」
バカ娘なんて言われた事がなかったので、私は大声で泣き叫びました。お父さんはいつもは心配してくれるのに、その時はとても冷めた目で私を見ていました。
しばらくして、私の目からはもう涙が出なくなりました。その時お父さんが話し始めました
「ありゃ、かみさりさんを封じてるもんだ。お前みてぇなアホなやつを標的に、箱を開けた人を呪う。お前箱を開けて中を見たか?」
父に聞かれて、ぶんぶんと横に首を振りました。でも、かみさりって何?神様と間違えてるのかな
と、当時はそのくらいにしか思えませんでした。しばらくして、学校からのお便りに臨時休校をするという事が書かれていました。 ラッキー!と飛び跳ねて喜びました。だってあの場所には近づきたくなかったので、今までで1番嬉しかったと思います。その日お父さんは私が見つけた箱を持って、出張にいきました。臨時休校の時と出張のタイミングがピッタリで驚くより、休みの方が嬉しかったので、そのまま忘れて眠ってしまいました。一週間くらいたった頃でしょうか、ようやく臨時休校が終わり、私は憂鬱な気持ちでランドセルを背負って学校に向かいました。今日も休み時間に裏庭に行こうという話になって、秘密の抜け道を使おうとしたら、黄色いテープまで立ち入り禁止の文字がありました。結局、私は箱が何だったのかも分からないし、今となっては確認する術がないです。一つわかるのは、あの裏庭には
『何か』
がいた事だけです。