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部屋にはまだ黒い灰が漂っていた。
焦げた匂い。
割れたガラス。
切り刻まれた椅子。
私はその光景を見つめながら、じっと息を呑む。
……ここは私が作った世界
そして、私が放置した世界。
その事実が、胸の奥にずしりと重くのしかかっていた。
琴葉「はぁあ…ヴィンテージの椅子なのに…」
琴葉は腕を組み、壊れた椅子を睨みつける
優葉はハッとして、俯いた
優葉「ごめんね……早く気づいてたら壊れなかったのに…」
琴葉「えっ…?優葉のせいではないよ」
そう言って琴葉は優葉の頭をぽん、と撫でた。
優葉は少し驚いた顔をして、すぐに頬を赤くした。
瑠葉は床に残った黒い跡を見つめながら呟いた。
「侵食速度が上がっています…。
最近のバグは…以前よりも明らかに″形″を持ち始めています。」
私は思わず肩を震えさせた。
意思。それはつまり
ただのエラーではない。敵と言うことだ。
優葉は私の顔を覗き込んで、優しく笑った。
「葉夢…大丈夫?」
私は何も言えずに頷く。
本当は大丈夫な訳がないのに。
喉が乾いて。心臓が早鐘のように鳴っている。
ギ…ギギ……
まただ。
ふと空を見つめるとはるか遠くの空に裂け目が出来ていた。
中は赤黒かった。
瑠葉はすぐに手を目にスライドさせて黒いモニターを装着し、右手を耳に当てた。
瑠葉「…ノイズ音……発生。
距離…1.2キロ。方角は北東。」
琴葉「……また?今日は厄日なの?」
無葉「…いやァ…?むしろ。今日が普通になってきてるんじゃ無ぁい?」
無葉はいつの間に帰って来ていた。
瑠葉「いつの間に…」
琴葉「今更遅いわよ!!」
無葉「はは。そんなに怒るなよォ」
優葉「何してたの…?」
無葉「エ?ラムネの特売日だったからさァ」
瑠葉「任務をすっぽかしてお買い物に行かないでください!!」
優葉が呟いた。
「葉花に報告しないと…。」
優葉が耳元に手を当て、何かを伝えるように目を閉じた。
すると、空気が少しだけ冷たくなる。
『優葉。聞こえる?』
ノイズ混じりの声。
葉花だ。
優葉「葉花…!!さっきバグが侵入してきたの…!」
葉花「…分かってる。」
「侵食が進んでいる。もう猶予がない。」
その声は妙に落ち着いているのに、どこか焦っている。
葉花「葉夢はそこにいる?」
優葉「うん…いるよ」
瑠葉がこちらを見て、頷く。
瑠葉「葉花様。葉夢さんは無事です。」
葉花「…そうか。良かったよ」
「葉夢、聞こえるかい?」
私は恐る恐る口を開いた。
「聞こえます…。」
葉花「貴方は今から。葉っぱを集めて。」
「この世界を守れるのは葉っぱだけ。
…今の人数では足りない。」
葉夢「仲間探しって事?」
葉花「最優先で合流するべき対象がいる。
星葉と滅葉……。」
その名前を聞いた瞬間。
私の頭の奥がまたズキンと痛んだ。
知らないはずなのに。
瑠葉「星葉さん。滅葉さん…中界に居るのですか?」
葉花「…中界北東。」
「神格反応が強い。バグが群がっている。
急いで。」
琴葉「行くわよ。」
瑠葉は冷静に頷き、装備を確認する。
瑠葉「葉夢さんも同行しますか?」
私は息を呑んだ。
…怖い。
行きたくない。
でも、ここで逃げたら行けない。
私は震える指を握りしめた。
「…行きます。」
優葉が少しだけ目を見開き、嬉しそうに笑った
「うん…!一緒に行こう!!」
無葉は面倒くさそうに肩をすくめる。
「はァ……まためんどくさいことすんの?」
琴葉「嫌なら置いていくけど。」
無葉「ははァ。冗談さ、ボクだって暇じゃないからね。」
瑠葉が扉を開ける。
空にはノイズの線が走り、遠くで森が歪んでいる
私たちは喫茶店を出た。
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森の中を走る。
優葉の手の中から薄桃色の光が漏れ、道を照らす。
火の塊の街灯がちらちらと揺れる。
空気は冷たいのに、肌はじっとりと汗ばんでいる
「ねぇ……葉夢?」
不意に無葉が私の隣に寄ってきた。
距離が近い。
無葉はニヤニヤ笑いながら言う。
「キミは……本当に作者なんだよね?」
「分からない…。」
私は正直に答えた。
無葉は笑った。
「ふーん。記憶喪失の作者様。ね。
面白いじゃん。」
その言葉は冗談っぽいのにどこか怖かった。
瑠葉が振り返って厳かに睨み付ける
無葉「何?」
瑠葉「…葉夢さんを不安にさせるような発言は控えて頂けますか。」
無葉「はいはい、優等生クン。」
琴葉は前を走りながら舌打ちをする。
「なんなの…。」
⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯
森を抜けた先。
そこには小さな街があった。
しかし、街は崩れていた。
建物は斜めに傾き、道路は割れ、空には黒いノイズが走っている。
空気が濁っている。
そして……
壊れそうな程のノイズ音。
瑠葉が叫んだ。
「反応が近いっ!!」
優葉が息を呑む。
「星葉たちがいる…!」
その瞬間。遠くから声が聞こえる
「ギャハハハハハハハハハッ!!
楽しいネェ″!!!!」
…???
私は思わず足を止めた。
楽しい??
こんな地獄みたいな状況で?
琴葉が叫ぶ。
「星葉…!?」
街の中央。
瓦礫の上に、1人飛び跳ねた。
真っ黄色の髪、
細い瞳。
そして、ニコニコと笑う顔。
その人は両手を広げ、まるで踊るように敵を蹴散らしていた。
星葉「ほらほら…!!もっと来るネ!!!」
黒いノイズの塊が星葉へ襲いかかる。
しかし、星葉は笑ったまま拳を振り抜く。
空気が割れた。
衝撃で、バグが吹き飛び灰のように消える。
…人間じゃない。
優葉が叫ぶ
「星葉…!!!」
星葉は振り向いて目を丸くした。
星葉「優葉!?!?久しぶりネ!!!」
彼は嬉しそうに手を振った。
まるで戦場ではなく、遊園地にでもいるみたいに
しかし、星葉の後ろ。
瓦礫の影から、黒い刃が伸びた。
ギ………!!!
鋭い音が鳴り響く。
星葉の背中に迫る刃
「危ない!!」
私が叫ぶより早く、金属がぶつかる音がした
黒い刃を弾いたのは、1人の男だった。
短い黒髪。
頬には注意マーク。
そして、疲れたような顔。
滅葉「…星葉!!お前は何回同じ事を繰り返すんだ!!」
星葉「ギャハハハ!!滅葉が助けてくれたのネ!」
滅葉息を切らしながら舌打ちをする。
「笑ってる場合じゃない!!
敵が増えてる!」
滅葉の腕から血が垂れている。
さっき刃を受けた時に切れたのだろう。
優葉が駆け寄る。
「滅葉…!怪我してる…」
滅葉「大丈夫だ…。それより何故君達がここに?」
琴葉が後ろから叫ぶ
「説明は後!!」
瑠葉「敵影確認。バグの群れです。」
街のまわり。
ジワジワとノイズが蝕んでいる。
数が多い。
無葉「最悪。沢山いるじゃぁん。」
滅葉がこちらを見た
「君は…?」
「私は葉夢……。」
私の名前を聞いた瞬間、滅葉は信じられないような表情を浮かべた。
星葉はニコニコ笑ってこちらにやってきた。
星葉「葉夢!!やっと来たネェ!!」
「遅いのネ!!!」
その言葉に、胸が締め付けられる。
知らないはずなのに涙が出そうになる。
瑠葉が叫ぶ。
「会話は後です!!!」
ギギギギギギギギギ………!!
バグの群れが一斉に襲いかかる。
星葉は笑った
「ギャハハハハハハハハハ!!
いいネ!!!まとめて来るよろし!!!」
滅葉「おい!!!突っ込むな馬鹿!!」
星葉は地面を蹴り、バグの中へ走り去った
滅葉それを舌打ちして追った。
琴葉も手から黒い靄を出し、それを掴む。
「葉夢!!後ろに下がって!」
私はその場で固まった。
怖い。
死にたくない。
でも。
空が割れていく。
ノイズ音が大きくなる。
バグは増えていく。
早く逃げなきゃ、なのに。
その時、私の腰の工具がカチャリと鳴った。
……まるで、誰かが呼んでるみたいに。
私は震える手でドライバーを掴んだ。
その瞬間、頭の奥に文字が流れる。
【修復コマンド:起動】
【管理者権限:葉夢】
【修復率:0.3%】
「…え?」
私は息を呑んだ。
この世界が私の中で。
何かと繋がっている。
遠くで、星葉が笑っている
「葉夢!!何してるのネ!!!」
滅葉が叫ぶ。
「逃げろ!!!死ぬぞ!!」
私は足を踏み出した。
震える足で、壊れた街の中へ
私が作った世界を、
守る為に。