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有菜は、小さいころから「普通」が苦手だった。
教室のざわめきが痛い。
予定が急に変わると頭が真っ白になる。
みんなが笑って流せることを、何日も引きずってしまう。
病院で「発達障害」と言われた時、有菜は少し安心した。
理由があったんだ、と思えたから。
怠けているわけじゃない。
変なわけでもない。
脳の感じ方が少し違うだけ。
だから有菜は、自分でたくさん調べた。
どうすれば疲れにくいか。
どう説明すれば伝わるか。
どんな工夫があるのか。
知れば知るほど、「自分を守る方法」が増えた。
でも同時に、別のものも増えていった。
クラスメイトの言葉だった。
「またミス? 障がい者じゃん」
「それガチで発達っぽいw」
「空気読めなさすぎ」
みんな笑いながら言う。
冗談みたいに。
軽いノリで。
まるで流行りの言葉みたいに。
最初、有菜は笑っていた。
笑えば終わると思ったから。
「気にしすぎだよ」
そう言われるのも嫌だった。
だって、“気にするな”と言う人は、最初から傷ついていない。
ある日、男子がふざけて言った。
「お前、発達障害なんだから仕方なくね?」
周りは笑った。
有菜も反射的に笑った。
でも、その瞬間ふと思った。
――みんな、“発達障害”を悪口として使ってる。
それが一番苦しかった。
障害そのものより。
「変」「劣ってる」「面倒」
そういう意味で使われることが。
有菜は、自分のことを説明するたびに、自分が“人より下”だと言われている気分になった。
本当は違うのに。
できないことはある。
でも、できることもある。
苦手なだけで、存在まで否定される理由にはならない。
なのに教室では、
「発達w」
の一言で全部終わる。
人格も、努力も、苦しさも。
全部まとめて笑いものになる。
ある日、有菜はついに言った。
「それ、やめて」
教室が静かになる。
言った本人は、困った顔をした。
「え、冗談じゃん」
その言葉を聞いた瞬間、有菜は思った。
冗談って、誰かが傷ついても成立するんだ。
じゃあ、“面白い”って何なんだろう。
誰かを踏んで笑うこと?
苦しんでる人をネタにすること?
有菜にはわからなかった。
でも、一つだけわかった。
人は、自分が知らない痛みを簡単に軽く扱える。
だからこそ、有菜は思う。
「知らないなら、せめて笑わないでほしい」
理解できなくてもいい。
ただ、人の苦しみを“ネタ”にしないでほしかった。
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