テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
藤白りいな…お転婆で学校のマドンナ。天然で、先輩や後輩など学校のほぼすべての人が名前を知ってる。
海と仲が良いが、最近結構意識してる
天童はるき…ツンデレの神。りいなのことが大好きだが、軽く、好きなど言えない。嫉妬深い。
男子と仲のいいりいなが誰かにとられないかと心配してる。海に嫉妬中!
佐藤海(かい)…りいなのことが昔から好き。りいなと好きなど軽く言い合える仲。
結構チャラめ(?)デートなどはゲームだと思ってる
月下すず…美人だがなぜかモテない。はるきと海の幼馴染。りいなのことは好きだが、嫉妬中(?)
はるきと海のことが気になってるが、どちらかというとはるきのほうが好きらしい(?)
海は、目覚ましよりも少し早く目を覚ました。 窓から差し込む柔らかい光の中で、昨日のことを静かに思い返す。照れちゃった選手権、りいなの手の温度、はるきの視線。そして――りいなの「今でも」という気持ち。
「…あの“好き”が、ほんとだったなら。俺、ちゃんと動かなきゃ」
Tシャツを引っ掛けて、髪を軽く撫でつけて。 朝食もとらずに玄関を出ると、まだ街は静かで、セミの声がぽつぽつ響いている。
スマホを握りしめながら、海はひとつだけメッセージを打つ。
「今朝、話せる?ちょっとだけ、ちゃんと伝えたいことがある」
送信相手は――りいな。 いつもみたいにふざけた絵文字もつけずに、真面目に送った。
駅へと続く道を自転車で走りながら、心はどこか緊張していた。 昨日の罰ゲームは、笑顔のまま終わった。 でも海の中では、ずっと“まだ終わってない”って感じていた。
りいなは受け止めてくれるだろうか。 はるきの気持ちも、すずの目線も、全部知ったうえで――それでも「自分らしく好きだよ」って言えるだろうか。
「言うよ、ちゃんと。“俺は、りいなが好きだ”って。 昨日の罰ゲームを、本当の始まりに変えたい」
風に髪が乱れて、陽射しが背中を押す。 海の一歩が、少しずつ新しい物語を動かしていく。
朝の駅前、まだ通勤ラッシュ前の落ち着いた時間。風が少しだけ涼しくて、歩道のすみにあるベンチがぽつんと静かに置かれている。
そこに海が立っていた。 昨日の余韻が抜けきらないまま、りいなの心に何か残っているんじゃないか――その思いだけで、来てしまった。
「…おはよう」
すこしだけ照れた声。 りいなは、自転車で近づいてきて、海の横にそっと止まる。
「おはよう。こんな早くから、どうしたの?」
海は少しだけ口元を噛んで、それから言う。
「昨日さ、罰ゲームとかふざけてたけど…りいなの“照れてる顔”、すっごい嬉しかった」
りいなはふと目を伏せる。 海は続ける。
「でも、そのあと…りいながはるきと話してる時の顔、ちょっと違って見えた」
「…見てたんだ」
「うん。だから、悩んでるんじゃないかなって思って。 俺が言いたいのはひとつだけ。“今、俺のことどう思ってるか”は聞かない。 でも、俺は――昨日からずっと、りいなのことが好きだよ。 選ばれることじゃなくて、りいなが“どういう気持ちでいたいか”が、大事だと思うから」
りいなは、目を見開いて海の顔を見る。 まっすぐすぎるその言葉に、昨日の“揺れ”がまた胸でじんわり動き出す。
「…ありがとう。迷ってるの、ほんと。自分でも情けないくらいに」
海は笑って、ポケットに手を突っ込んでみせる。
「じゃあ、照れちゃった選手権はまだ続きってことで。 今日も一緒に学校行こ。途中まででもいいから」
りいなは、ほんの少しだけ首を傾けて、それから小さく笑う。
「…罰ゲームは?」
海はニヤッと笑って、少しだけ距離を詰める。
「りいなが手をつないでくれるかどうか、それで判定する」
りいなは頬を赤くして、「ずるいな、それ」と言いながらも、そっと海の袖口をつまむ。
繋ぐでもない、離すでもない、その距離。 それが今の“選手権”の答えだった。
駅前の道を、りいなと海が並んで歩いていた。 袖口をゆるくつまんだままのりいなの手に、海は触れることも、引くこともせず、そのまま隣を歩いてる。
角を曲がった先、ちょうど横断歩道を渡ろうとしていたのは――はるきとすずだった。 ふたりがこちらに気づく。すずは手を振り、はるきは少しだけ驚いたように、そして静かに目を逸らす。
りいなも目を伏せて、でも一歩一歩を止めずに歩み寄る。
「おはよう」と、海が口を開いた。 すずが「おはよー!ふたりで登校とか、珍しいね」と軽く笑う。 はるきはそれには答えず、「…早いね」とだけ言う。
すずが、りいなの袖口に目を向ける。そこにある“ふれてるけど繋いではいない手”。 何も言わないけど、すずの目にふっと何かが灯る。 そして、はるきの横顔にも、昨日の余韻が微かに滲んでいる。
その瞬間、交差点の信号が青に変わった。
4人は足並みをそろえて横断歩道を渡る。 だけど、心の歩幅は、それぞれ少しずつ違っていた。
りいなは、海の隣で少し笑う。でも―― 横目で見えたはるきの表情に、ほんの一瞬だけ胸が痛くなった。
すずは、海とりいなの距離を見ながら、心の中で思う。
「私、まだ勝ってない。 でも、負ける気もしてない。」
そしてはるきは―― りいなの笑顔を見たあと、前だけを見つめて歩いた。
「手紙の返事はまだ出してない。 でも、言葉よりも“決意”を見せたい気がしてる。」
信号の向こう、朝の光が4人を包む。 交差した心は、また別々の方向へと少しずつ動き出していく。
朝のホームルームが終わり、教室の空気は少しずつやわらいでいく。 窓から差し込む光が黒板に淡く映って、椅子を引く音やノートのページをめくる音が静かに重なる。
誰も何も言わない。だけど――それぞれの目線や仕草が、小さな“揺れ”を伝えようとしていた。
りいなは、席についたまま教科書をめくりながら、ふと海の机の上に置かれたペットボトルを見る。 昨日ふたりで分け合ったジュースと同じ種類。 手が止まる。記憶が、ふっと蘇る。
海は、何気なく自分の机の下で足を組み替えながら、りいなの横顔をちらりと見て、すぐに視線を逸らす。 彼女の指が袖をつまんでいた今朝の感触が、まだ指先に残っている気がして。 でも、何も言わずに、その“余韻”を自分の心に押し込める。
はるきは、前の席で体を少し後ろに向けながらも、りいなを見ることはない。 だけど、彼のペンがノートの端を無意識に“R”の文字で埋めていることに、本人は気づいていない。
そして――すずは、席に座りながら髪をほどいて結び直す。 その仕草は、昨日の選手権で“照れポイント”にされそうな動き。 でも今日は、誰もそれをジャッジしない。ただ静かに彼女を見つめる目だけがある。
授業が始まる寸前――教師がまだ来ていない時間。
沈黙のなか、誰も声を出さない。 それでも教室には、昨日の“照れちゃった選手権”の続きが、言葉じゃない方法で静かに流れていた。
教室のざわめきの中で、ふと――りいなが立ち上がる。 静かに教科書を持ったまま、何かを確かめるように教壇の方へ歩いていく。
すずがその背中を目で追う。海は、ペンを回す手を止めて。 はるきは、ノートに目を落としたまま、指先だけが小さく動く。
先生が遅れて入ってくる直前、りいなが声を出す。
「…ねえ、昨日の照れちゃった選手権って、なんかすごかったね」
ふわりと、空気が変わる。 誰も答えないけど、教室のあちこちから“聞いてるよ”って雰囲気が伝わってくる。
りいなは少し笑って続ける。
「罰ゲームって言ってたけど――ほんとは、誰かの本音が聞けるチャンスだった気がする。 私も、ちょっとだけ…照れたけど、ほんとに言えた気がしてるから」
その瞬間、すずが静かに笑う。はるきのペンが止まり、海がりいなをしっかり見つめる。
りいなの声はもう一度だけ、軽く続く。
「…今日も、誰かに照れちゃったらいいな。昨日みたいに、“本気の照れ”が見れたら、ちょっと嬉しいかも」
先生の足音が遠くから近づいてくる。 だけど、誰もそっと笑う表情を止めない。りいなの言葉が、教室の空気を少しだけ柔らかくした。
昼休みのはじまり。いつも通りな空気のはずだったのに、今日の教室にはすこしだけ、静けさが流れていた。 風に揺れるカーテンの影が、りいなを柔らかく包む。彼女は窓の外をぼんやり眺めながら、心のどこかで何かが始まりそうな予感を抱えていた。
「ねぇみんな、昨日の“照れちゃった選手権”の最優秀照れ顔って、まだ決まってないよね?」
いきなり教室の真ん中で、海が声を上げた。注目されることにも物怖じせず、彼は余裕の笑みを浮かべて続ける。
「だからさ、最後に俺が最高の“照れ”を見せてみるよ。…りいな、ちょっとごめんね」
ざわつくクラス。すずが「え、なになに?!」とはしゃぐ中、はるきは静かにノートから視線を外す。
海はりいなの席にまっすぐ歩いていき、堂々と立ちはだかる。
「俺、りいなのことが、好きです」 「罰ゲームって言って告白してみるつもりだったけど……いや、マジで。本気で言ってる」
その瞬間、教室が時を止めたように静まり返る。誰もが彼の言葉に反応を忘れるほど、予想外だった。 りいなの目が大きく開かれ、頬に熱が走る。息が少しだけ浅くなる。
「な、なにそれっ…!罰ゲームのレベルじゃないってば…」 照れ隠しに、ペンを持つ手で顔を半分隠すりいな。すずは「きゃああ!なにこの青春展開っ!!」と大騒ぎ。
海の告白と、その堂々たる姿に教室がざわついた瞬間――
りいなは頬を染めながら、ゆっくりと海の差し出した手に伸ばそうとしていた。 でも、その瞬間。静かだった教室の奥から、スッと影が前に出てきた。
はるきだった。
彼は何も言わず、りいなの手にそっと触れて、その両手で包み込むように握った。
教室が再び静まる。誰もが予想していなかった展開に、時間が止まったようだった。
「……それは、俺にやらせてほしい」 はるきの声は小さくて、でも確かに届く。
りいなは目を見開く。「はるき…?」
はるきはりいなの目を見つめて、言葉を紡ぐ。
「りいなの手を取るってことは…ただの照れじゃなくて、本気ってことだろ?」 「だったら、俺も言いたい。今のこの空気に甘えて…言えなくなる前に」
海は、一瞬驚いた顔をしてから、ふっと笑った。「…そっか。はるき、ずるくない?でも、いい勝負だな」
すずは完全にパニック状態。「え!?え!?三角関係はじまった!?青春濃すぎて呼吸困難っ!!」
りいなは戸惑いながらも、はるきの手のあたたかさに、心が少しずつほどけていく。
「…ずるいのは二人ともだよ。でも……今は、その手が落ち着く」
海はゆっくりと手を下げ、「じゃあこの“照れちゃった選手権”、りいなの気持ちが審査員ってことで」
はるきは少しだけ照れて笑いながら言う。
「罰ゲームとかじゃなくてさ、俺は本気でりいなが好きだよ」 「でも、それって“選手権”じゃない。ただの俺の気持ち」
教室はシンと静まり返っていたけど、その静けさは、まるで物語の“次のページ”をめくる前の間のようだった。
りいなは、小さく深呼吸してから、目を閉じる。 そして、手の中のぬくもりにそっと力を込める。
海とはるきの“告白大事件”の余韻が残る教室。その静けさを打ち破るように、すずがバッと立ち上がる。 白衣(のつもりで給食エプロン)を羽織り、手には理科室から拝借してきた実験ノート。
「はいっ!ここからは恋の感情ラボによる緊急調査ですっ!!」 「被験者はこの空間にいる全員、特にりいなちゃん!今の感情、教えてくださいっ!」
りいなは顔を真っ赤にして「なにそれ…意味わかんないし…」と照れながらも笑ってる。 すずはノートを開いて、さっそく質問開始。
🔬 第一項目:心拍数、どうですか? 「え、わかんないけど…普通じゃないことは確か…」
🔬 第二項目:海からの告白、何ポイントで心揺れた? 「100点。いや、ズルいから120点」
🔬 第三項目:はるきに手を包まれたとき、どうなった? 「……なんか、静かにあったかかった。びっくりしたけど…嫌じゃなかった」
すず「ふむふむ、つまりりいなちゃんの中には2種類の“好き反応”が同時に発生している可能性がある…これは貴重なデータです!」
海「俺、実験対象になってる…」 はるきは「データ化される恋心って、けっこう怖いな…」とぼそっと。
🧪 感情測定装置・すず式照れメーター:MAXを振り切っております!! すずは黒板に「恋の化学反応式」を書き始める。
りいな(天然系・繊細感受性)
+ 海(明るめ・大胆アタック型)
+ はるき(静けさの中に情熱型)
= 青春の三角関係生成反応♡
「これは…化学じゃなくて完全に魔法だよねっ!!!」と叫びながらノートを閉じるすず。
「じゃーん!今日のすずは“恋の感情ラボ”拡張モードで〜す!」
すずが給食の時間が終わるのを待たずに、机をカタカタ鳴らしながら立ち上がる。そして、手には配り切れないほどの手書き用紙の束。
「これから、このクラスにいる“かわいいと思う女子”をひとり書いてくださいっ!」
教室がざわっとする。「え!?突然!?」「選ばれなかったらどうすんの〜!」と動揺が広がる。すずは笑って言う。
「いいの、感覚で書けば!なんなら“かわいさ=尊敬=推し”でもOK!!恋じゃなくてもキュンはあるってことで〜」
海は「またすずの暴走か…」と笑いながら用紙を受け取る。はるきはちょっと迷いながらも、ペンを手にする。 りいなは「…やめてよ〜そんなの。ていうか誰にも書かれなかったら泣くから」と口では言うけど、ちょっとだけドキドキしてる。
昼休みのあのざわめきのあと。すずが集計した「かわいいと思う女子」アンケート。 クラス中がドキドキしながら結果を待つ中、すずが黒板に貼り出した1枚の紙には、ただ一言——
りいな(100%)
「ちょ……全票一致!?そんなことある!?」 すずは目を見開いて、資料を抱きしめて叫ぶ。「りいな、かわいいっていう概念の集合体なんじゃ!?」
クラスのみんなは盛り上がる。「りいなの天然と笑顔が優勝」「照れた顔が反則」と口々に言いながら拍手が起こる。
海は小さく微笑んで、「俺が一番最初に書いた自信ある」って得意げ。 はるきは静かに言う。「…文字にしたけど、本当は目で見た瞬間に思った」
りいなは顔を覆ってうずくまる。「むりむりむり…!恥ずかしすぎる!!!」と叫んでるけど、耳まで真っ赤。
すずは机にのぼって叫ぶ。
「これにより、今後“かわいい責任者”として、りいなは感情ラボの象徴と認定されました〜〜〜!!」
すずは黒板に「りいな=100%かわいい」と書き終えた瞬間、急に振り返りながら叫ぶ。
「よし、次は男子版やるか~~~!!!」
教室が再び沸く。「男子版!?」「海とはるきがエントリー確定でしょ!」「これは祭りだ〜!」 海は「あ、それはちょっと待って!心の準備が…!」と慌てて机の下に隠れようとする。 はるきも一瞬、ペンを落としながら「俺は…こういうの、参加希望してないんだけど…」と目を泳がせる。
すずはニヤリ。「逃げるの禁止~♡!」 用紙を配りながら言う。「かわいい男子を書いてください!ポイントは見た目だけじゃなくて、しぐさ・言葉・ギャップ・背中で語る系もOK!」
「海の大胆すぎる行動がかわいい。あれを本気でやれるの、すごすぎ」
「はるきが黙ってるとき、言葉より優しいの伝わるからずるい」
「海は照れて笑う顔。はるきは手を包む手の柔らかさ…どっちも反則」
すずはテンションMAXで叫ぶ。
「これはあれだね!?女子の“きゅん図鑑”に男子を追加する流れ!!」 「りいなもちゃんと書いてね!一番“青春感じた男子”!」
りいなは顔を真っ赤にしながら、「どっちもかわいかったから…困るんだけど…」と小声で言って、紙に向かう。
海とはるきは並んで紙を受け取りながら、目を合わせないようにしてる。 海がぼそっと「負けたら、照れ選手権の優勝トロフィー返す…?」 はるきは「そもそも俺は出場してたっけ…?」
教室は笑いと照れでいっぱい。「かわいい」が性別を超えてうごめき始める。
「りいなの全票かわいい事件を経て、すべての美は記録されるべき!!」 そう叫びながら、すずは黒板に大きく書き出す。
『かわいい男子ランキング1位争奪!照れ写真撮影会、ただいまより開幕です!!』
机から引っ張り出されたのは、すずが持参したインスタントカメラ、 それに手作り背景布(星柄&「青春爆発注意」って書いてある)と謎のかわいいポーズ指示カードたち。
💫 撮影ルール
ポーズはランダムカードで指示!
表情は「照れ顔縛り」!
小道具(折り紙ハート、ペットボトルキャップ花束など)は自由に使用OK!
🧃 海のターン: カードの指示は「片手で髪をかき上げて、もう片方で折り紙ハート持ち」 海は「え、これ…やるの?マジで?!」と照れつつ、 笑いをこらえてポーズ決行。「俺のかわいさ、ポーズ次第じゃなくてタイミングだから〜〜!!」とか言いつつも、 カメラの前では無意識に目を伏せて、ちょっと笑う——それ、完全に狙ってなくても100点。
りいなは心の中で「…やば。なにその顔。ずるい」ってつぶやいてる。
🕶️ はるきのターン: カードの指示は「後ろ向きで振り返って目線を送る」+「手に小道具」 はるきは無言で、すずが渡したペンを指先でくるくる回しながら、 静かに振り向く。カメラのフラッシュのタイミングで目が光る。
教室の女子たちから「え、ちょっと待って…はるき、顔じゃなくて空気がかわいいんだけど」ってざわつく。
りいなは(…なんかずるい。動き少ないのに、ちゃんと心動かされる)って目を見張ってる。
1位:海(動きのかわいさ)・はるき(静けさのかわいさ) 「これはもう、“りいながドキッとした回数”でしか決められない!!」
撮影会が終わったあと、すずは写真を現像して“照れ顔図鑑”を作り始める。 その表紙には、りいなが描いた「青春のかわいい輪郭線」のイラスト。 海とはるきは並んで写真を見て、「…俺たち、かわいかったんだな」と照れながら肩を並べる。
すずは、りいなの耳元でささやく。
「ねえ、りいな。最後の1枚は、“りいなが撮る側”でもいい?」
りいなは、少し頬を赤らめて、カメラを構える。
グラウンドでは体育の授業が終わり、校舎にはお弁当の香りが漂いはじめる。 りいなは、すず・海・はるきの3人と約束していた「なんでもないお昼時間」を、校舎裏のちいさな芝生スペースで過ごすことにした。
すず:「見て見て!タコさんウインナーが4匹いるの、きょうのテンションに合わせた数なの!」
海:「おれのは昨日の残り物を母ちゃんがアレンジした…多分これ、カレーの具が変身してる」
はるき:「……普通の卵焼きと梅干しだけ。飾りないけど、味は信頼してほしい」
りいな:「わたし、ピンクのふりかけかけてみた。映えってわけじゃないけど…ちょっとかわいくしたくなって」
みんなの“こだわり”が並ぶと、それだけでお弁当がちょっと物語になる。
ずはしゃべりながら食べてる。「ねえ、りいなの今日のふりかけ、謎に乙女じゃない!?かわいい〜〜」 りいなは「…やめてってば、ただの味の気分だし!」と照れるけど、笑顔は自然に広がっていく。
海は唐揚げをかじりながら、「この時間、なにも起きてないのがちょっとありがたいよな」ってぼそり。 はるきは静かに頷く。「…特別なことはないけど、みんながいるだけで、けっこう落ち着く」
そこにすずが「じゃあこれ、無理やり“イベント名”つけるならなんていう?」と聞いてくる。 海「普通弁当選手権?」 はるき「昼の静かさと仲良さの実験室」 すず「りいなピンクふりかけ記念日!」 りいな「ちょっとやめてよ、それは本気で恥ずかしい!!」
でも笑いながら、おにぎりの残りを分け合ってる。誰かが話して、誰かが笑って、誰かが黙ってる。 そのバランスが、ちょうどいい。
チャイムが鳴って、今日も一日が終わった。 クラスに流れる「また明日」の空気の中、りいな・すず・海・はるきの4人は、誰からともなく「寄り道しよっか」って言い合う。
行き先は――学校近くの川沿いの小道。 ポプラ並木が続いてて、風がふわっと髪を揺らす。喧騒はないけど、そこにはちゃんと“誰かといる静けさ”がある。
すずは「選抜おやつ会議を開始しまーす!」と叫びながら、10円ガムを大量に選び始める。 海は真剣にラムネを選んでる。「今日の気分はソーダ…いや、コーラ…いやいや、ブドウ系か…」 はるきは誰にも言わずに梅干し系のスナックを選んでて、りいなはそれを見て「渋すぎて逆にかわいい」と笑う。
りいなは、ピンク色のゼリーをひとつ選ぶ。「色が好きで選んだだけだけど…ちょっと乙女すぎる?」って照れると、海が「いや、似合うし!」って即答。 すずは「このゼリーが今日の“かわいい責任者”として認定された〜〜!!」と場を盛り上げる。
海は空を見ながら「夏の雲って、形も性格も自由すぎるよな…」
すずはゼリーの色にスマホカメラを向けて「青春色って、こういうことだと思うの!!」
はるきは自分の梅干しスナックを一口食べて「うん、酸っぱさは裏切らない」
りいなは4人並んだ影を見て、小さく笑う。「特別じゃないのに、なんかうれしいな、こういうの」
坂のてっぺんから、街が一望できる。誰も何も言わずに、風の音だけが鳴ってる。 はるきがポツリと、「この景色、ひとりだったら立ち止まらなかった気がする」って言うと、海が「俺も。寄り道って、誰かといるから意味ある気する」と返す。
すずが手を広げて「じゃあ記念に、坂のてっぺんジャンプやる?青春ってことで!!」と提案して、 4人がせーのでジャンプすると、スマホのセルフタイマーがバッチリその瞬間を切り取る。
川沿いの小道を歩いて、おやつを分け合ったあと。 「ゲーセン寄ってかない?」って、すずがふいに言い出す。
りいなは「あ、クレーンゲームやりたいかも…」ってポツリ。 海は「おっ、それ俺の得意分野!見せちゃおうか〜?」とノリノリで、 はるきは少し離れた場所で「…音ゲーだけは信じてくれ」と小さく笑ってる。
海は光るUFOキャッチャーに目を輝かせて「これだ!今日の挑戦はこれ!」と宣言
りいなはぬいぐるみゾーンを回って「あ、これすずに似てる…ちょっとツンツンした猫」って笑う
すずはプリクラ機の前で「ここで青春の証を残そう!?撮ろう撮ろう!!」と腕を引く
はるきは音ゲーコーナーにまっすぐ向かい、静かに画面をセットしてる
「これ、りいなの笑った顔とそっくりだから、絶対取りたい」と言って、クレーンを操作。 一回目は惜しいとこで落ちて「うわ…そう簡単にはいかないやつか」 二回目、クレーンがピタッと掴んで、グッと持ち上げて成功!
りいなは「…え、ほんとに?すごい…!」って顔がぱっと明るくなる。 海は「ほら、任務完了。これ、今日の記念ね」って差し出して、ちょっとだけ照れてる。
「はるき〜〜!!その静かな感じ、私がカラフルにしてあげる!」と隣の台に立って、音ゲー対決スタート。 はるきは「あまり騒がないのが俺の流儀なんだけど…」と言いつつ、本気モード。 2人並んでリズムを叩く画面は、まるで青春のグルーヴ。
りいなが「顔隠してもいい?…ちょっと照れるし」って言うと、すずは「じゃあみんなで口元だけにしよ!笑ったところだけ残そう!」と提案。 4人で撮ったその一枚、みんな笑ってて、誰が主役でもないのに、たしかに“好きな時間”が映ってる。
「今日、なんにも起きてないはずなのに、写真とかお土産とかあって…なんかすごく残る日になったね」 りいなは、ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら思う。 (寄り道って、ただの遊びじゃなくて——思い出を拾って帰ることなのかも)
「今日は、ただ走りたい気分!」 すずの謎テンションから、缶けり大会が始まった。体育でもない、部活でもない、ただ4人で公園で集まって――理由なんていらない。
りいなはそれを見て「…なんで麦茶なの?」と突っ込み、海は「中身が青春っぽいから!」と意味不明な返答。 すずは石で缶に星マークを描いて「これ、見張り役が“宇宙守る系”ってことで!」と言い張る。 はるきは静かに缶を立て直して、「蹴られてる姿が妙に哀愁あるね」とか言ってる。
見張り役・海 VS 隠れと逃げる3人
りいなは、公園のすべり台の陰に小さくしゃがんでて、すずが「そこ、顔見えてるよ!」と爆笑 ・すずは、木の後ろで枝を頭にかざして「森の一部になってるから!」と主張する ・はるきは、ベンチの下に潜って静かすぎて誰にも見つからない
海は本気の走りで「りいな見つけたー!!」って叫ぶけど、りいなが「すずがもっと見えてたってばー!!」と反論。 その混乱の中、はるきが音もなく缶に近づいて——すぱーん!見事に蹴り飛ばす!
「おおぉー!ナイスはるき!」すずとりいなが歓声をあげる。 海は「今の完全にノーマークだった…」と倒れ込む。缶は星マークがひしゃげて宇宙終了。
「あれ、これって…最終的にみんな逃げてみんな笑ってたから、なんか全員優勝じゃない?」 りいな:「うん…勝ちとか、誰かに見つかるとかじゃなくて、…あの缶蹴った瞬間、自由になった感じだった」 はるき:「ずっと見張られてるのに、笑えるのって不思議」 海:「でもさ、誰かが“待ってる缶”があるってだけで、みんな動けるんだな」
「次はさ、空き缶じゃなくて“思い出缶”みたいなの作って、それを守ってみたくない?」 みんなが「なにそれ〜〜」と笑いながらも、その案にちょっとだけ心惹かれてる。
すずが「うち!?え、プライベート感すご!めっちゃ行きたい!!」って食いついて、 海は「俺、炭の火起こしだけは誰よりもうまいから!」って張り切りモード突入。 はるきは一歩引いたように笑って「…俺、焼くの地味に得意なんだよね」って呟いて、 なんだかもう、この時点で楽しいの確定。
到着すると、広めの庭には折りたたみのテーブルと、DIYで作ったグリル。 ぶら下がったランタンがオレンジ色の光を落として、りいなの家族が優しい目で「いらっしゃい」って言ってくれる。 芝生の上に、毛布とクッションを並べた“くつろぎスペース”もあって、ちょっとしたキャンプ気分。
りいなはお気に入りの花柄エプロンで登場。 「今日の焼き場、りいなが担当しまーす。手伝いNG!味見はOKです!」 ってウインクしながらトングをくるくる回す。
すず:持参したマシュマロを手に「焼く時はね、照れ笑いすると美味しくなるって信じてるんだよねー!」 誰にも頼まれてないのに、串に名前シール貼ってて細かすぎ。
海:火起こしに全力。うちわで風を送りながら「これぞ、炭の呼吸・壱ノ型!」と謎の型名を叫ぶ。 りいなに「そんな呼吸、聞いたことない」って突っ込まれてるけど、嬉しそう。
はるき:キャベツとピーマンの焦げ目を真剣に見つめながら「野菜って、地味だけどめっちゃ語れる」 誰も聞いてないけど、焼き加減に誇りを持ってる。火の前なのに静かな存在感。
りいな:「りいな焼きそば、そろそろ注文どうぞ〜」と完全にお祭り屋台テンション。 鉄板の隅でハート型に焼きそばを盛りつける芸も披露。なぜか拍手が起こる。
みんな食べ終わって、毛布の上に並んで座ってる。 すずが「こういう夜って、いつか思い出になるんだよね」ってぽつり。 海は「昼間じゃ言えないことも、火を前にすると言いたくなる時あるよね」 はるきが「言葉がなくても、隣にいるだけでちゃんと伝わる空気ってあるんだなって」 そしてりいながそっと「今日、来てくれて本当に嬉しかった…」と微笑む。
流れてる音楽は、りいなが選んだお気に入りのアコースティック。 誰もスマホを見ないで、ただ空を眺めてる。 ランタンの光が、4人の笑顔を照らして、風に吹かれて静かに揺れてる。
庭の片づけもひと段落して、すずとはるきが「そろそろ帰ろっか」と歩き出す。 すずが「次、またやる時は教えてね!りいな焼き場最高だった〜!」って笑顔を残して、はるきも「焼き加減、また任されたらがんばる」って静かに手を振る。 二人が門を出ていく音が遠ざかって、気づけば庭には海とりいなだけ。
りいな:「…静かになっちゃったね」 海:「なんか…ふたりきりって、変な感じ」 りいなは膝を抱えて座りながら「にぎやかだった分、静けさがくすぐったいかも」って微笑む。 海は少し照れくさそうに「…なんで俺残ったんだろ。火、消してないから…とか言い訳してるけど」
りいなが海を見つめて「残ってくれて、嬉しいよ」って呟く。 その声が小さくて、それでも炭火の熱よりずっとあたたかい。
海:「はい、今日の“花火じゃない乾杯”」 りいな:「なんそれ、語呂も謎すぎ」って笑って、 でもふたりとも、瓶の音がカチンって鳴る瞬間を大事にしてる。
風が少しだけ強くなって、りいなの髪が揺れて、 海はその髪を指でそっとよけて「…焼きそばの匂い、まだ残ってる?」と聞く。 りいな:「え、匂い?髪から?」 海:「…うん、あ、なんか…近づきたくなって」
沈黙じゃなくて、甘えた間。 りいなが真顔で「ずるい」って言うけど、その目は笑ってる。
りいな:「ねぇ、今夜…特別だったと思う?」 海:「うん。多分、忘れられない」 りいな:「…じゃあ、記念日ってことでいい?」 海:「え、記念日? BBQ記念?」 りいな:「ちがう。“ふたりでいた夜”の記念」
海は一瞬戸惑ってから「…それ、すごい良いじゃん」って照れくさそうに笑う。 その笑顔を見た瞬間、りいながそっと肩を寄せてくる。 海も気づいてないフリして、手を添えて「なんか、これって…恋にちょっと似てる?」ってつぶやく。
りいな:「…ちょっとじゃなくて、だいぶ似てるかも」
「海って、いちゃつくのうまいね?」 海:「え、それ今ほめられてる?それとも煽られてる?」 りいな:「…んー、どっちも!」ってクスクス笑いながら、手をぎゅっと握る。
ふたりだけの音、ふたりだけの灯り、ふたりだけの夜が ゆっくりと、何かをはじめていく予感に満ちてる。
BBQの名残が庭に漂うなか—— 「ちょっとだけ、部屋来る?」と、りいなが小声で誘う。 海は一瞬驚いたように目を丸くするけど、「…行く」と短く答える。
ドアを開けると、ふわっとアロマの香り。 窓辺には折り紙の星、机には小さなペットボトルキャップが並び、 ベッドの上にはぬいぐるみと、手紙が挟まったノート。
りいな:「ここ、“誰も入れたことない”って言ったら、特別っぽく聞こえる?」 海:「聞こえる…てか、まじでそうなの?」 りいな:「うん。ていうか、今日から“ふたりだけの基地”ってことにしない?」
海は少し照れくさそうに部屋を見渡して、「…ここ、りいなの世界って感じ」 りいな:「でしょ?この部屋で一番の景色は、いま海が座ってる場所だから」 海:「それ、ずるい。そういう言い方されたら、動けないじゃん」
「これ、ふたり用プレイリスト。勝手に脳内で作ったやつ」 って言って、りいながスマホをタップすると、優しいピアノの音色が流れ出す。
ふたりはベッドに並んで座り、 りいなが枕をぎゅっと抱えたまま、海にちらりと顔を向けて——
「…ねえ、“ふたりきりの時間”って、どこまで特別にできると思う?」 「いや、もう十分特別だし。こういうのって…時間ってより、誰といるかだし」
りいながそっと海の袖をつまんで「…じゃあさ、次は“隣にいてほしい”って、はっきり言っちゃっていい?」
海は息をのんで、黙って——でも、手でりいなの指を包んだ。
カーテンを閉じて、間接照明だけの部屋。 「ここから先は、誰にも見せないって決めてる空間だよ」 というりいなの言葉に、海は「その中に俺、入れてくれるの?」と優しく返す。
そっと肩を寄せ、頭を預けるような姿勢。 りいなが少しだけ震えるように笑って「…たぶん今、“好き”って言われたら、泣くかも」 海が小さく囁く、「じゃあ、言わない。でも…ずっと、隣にいる」
ふたりの夜が、BBQのにぎやかさを超えて、 静かなけど強い、記念日になっていく。
静かな夜、りいなの部屋。 ベッドの上、隣に並んで座った海の肩がふわっと触れてきて、 りいなは少しだけ動いて「近いし…」って照れたふうにつぶやく。
でも、その声は離れてほしいんじゃなくて—— もっと、近づいてほしい声。
海がりいなの手をとって、そっと指を絡める。 「この手、焼きそば作ってたときより、ずっと柔らかい」 りいな:「え、それって…褒め方として正しい?」 海:「正しくないかも。でも、好きって思ったから言った」
指先が少し熱を持って、くすぐったくて、気持ちいい。 りいなが指の背をなぞると、海は目を細めて笑って「その触れ方、反則」
ふたりの顔が近づいて、息が触れるくらいになって。 りいな:「…目、見すぎ。キュンするからやめて」 海:「じゃあ、目つぶってて」
海がゆっくり顔を傾けて、おでこをそっとりいなに重ねる。 熱も鼓動も伝わってきて、りいなは声にならない笑いをこぼす。 「ねぇ…もうそれ、好きって言ってるみたいじゃん」 「言葉にするより、伝わってたら嬉しいかも」
りいなが横になって、海が隣にしゃがんでくる。 そっと髪を指でなぞる海の手つきは、緊張と甘さが混ざったみたいで。 「この髪、今日炭のにおいちょっと残ってる」 「やだ、それ恥ずかしいじゃん」 「いや、俺は…その匂いも、今日の記念っぽくて好き」
髪を耳にかける指が、ついでみたいに頬をすべって、あごのラインをなぞって、 りいなは「…なんか、いま映画の中の人みたい」って照れながら微笑む。 海:「じゃあ、このあと台詞いくね。“好きだよ、たぶん昨日より”」
りいなが「さすがに近すぎでしょ」って言いながら、 海の胸に頭をのせて「…でも、あったかいから許す」
海は腕を回して、ふわっと引き寄せて「りいなって、こういうの得意?」 「え、なにが?いちゃつき?」 「うん。もう完全に、ふたりだけの世界になってる」 「だったら…もっと、いちゃついてみる?」
りいなが海の胸元を軽くつついて、「ね、今の俺に夢中になっていいよ」って言わせてみる。 海:「…言うけど、それ、りいなに言われたら本気にするからね」
部屋の灯りは柔らかくて、壁に映る影もぼんやりしてる。 ふたり、ベッドの上でごろんと横になって、同じ枕を分け合ってる。 りいなの髪の先が、海の腕にふれてて——それだけでも、十分くすぐったい。
「眠くなってきた…」ってりいながぽそっとつぶやくと、 海は「寝ていいよ、俺、ここにいるから」って その声だけで、安心が溶けるみたい。
りいなはふと、海のTシャツの裾をつまんで「ねぇ…」 「なに?」 「寝る前に…ちょっとだけ、いちゃついてもいい?」
海は笑って、「もうしてるじゃん」って言いながら そっと、りいなを自分の胸のあたりに引き寄せる。
りいな:「…目、あけてるのに、夢見てるみたい」 海:「俺も、今の時間って現実じゃない気がする」
そのまま、何も言わずに—— 海がそっと、りいなの頬に触れてから ふたりの唇が、ほんの少しだけふれあう。
あいまいで、軽くて、でも心臓がドクンって鳴るほどの “ちょっとだけのキス”
りいなはキスが終わったあと、ぎゅっと目を閉じて、 「今の、夢の中で続きあるやつ」ってぼそっと笑う。
海:「じゃあ、俺も寝る。夢の中で、またキスする」
窓の外、風が星を揺らしてる。 部屋の中は、静かであたたかくて、 ふたりの距離はもうゼロに近い。
「…おやすみ、りいな」 「おやすみ、海」
そして、同じ夢の中で、またふれあう。
窓から差し込む光が、カーテン越しに部屋を優しく染める。 ベッドの上、ぬくもりが残ってる。りいながふわっと目を覚ますと、隣には…まだ寝てる海。 顔を近づければ、少し乱れた前髪。ゆっくりした寝息。昨日の“ちょっとだけキス”の余韻が、まだりいなの胸をくすぐってる。
昨日みたいに大胆にはなれないけど、指先で「おはよう」って言うみたいに腕をなぞる。 すると海がもぞっと動いて、目をうっすら開ける。
海:「…夢、続いてる?」 りいな:「え、何の?」 海:「最後に、りいなにキスされる夢」
りいなは枕に顔をうずめて、「え、覚えてるの?昨日の…」って声が小さくなる。 海:「うん。あれ、本当にだったよね?」 りいな:「…うん」 海:「じゃあ、今日の“おはよう”も、ちょっと特別にしていい?」
海がゆっくり顔を近づけて、でも昨日よりもっと慎重に。 目を合わせて、りいなが小さく頷いて—— 朝の光の中で、そっとキス。昨日の延長じゃない、ちゃんと“新しいふたり”のスタートみたいな。
キスが終わっても、どちらも離れようとしない。 りいな:「海って…朝の方が甘えんぼじゃない?」 海:「りいなの枕に顔埋めて寝たら、もう抜け出せないから」 りいな:「それ、ちょっとキュンポイント高すぎ…」
りいなが「パン焼いてくる!」ってキッチンに走ろうとすると、 海が「俺も一緒に行く。なんか…ひとりにしたくない」って。
キッチンで並んでパンを焼きながら、 「焼きすぎたら、昨日のBBQの再来になるよ」 「じゃあ、焦げ目=愛ってことで」
パンの香りと、ふたりの笑い声。昨日の夜とは違うけど、同じぐらい特別。
りいながふわっと近づいて、「…そっか、帰る時間なんだね」 海:「うん。…でも、なんか…このドア開けたら普通の時間に戻っちゃいそう」 りいな:「うちの部屋って、そんなに魔法かかってた?」 海:「うん。昨日の夜から、ずっと夢みたいだった」
海はドアノブに手をかけながら、だけど回さない。 りいなの目を見て、「…りいなが“帰らないで”って言ったら、引き返すかも」
りいなはちょっと考えて、くすっと笑って 「言わないよ。だって、次にまた来てもらう方が嬉しいもん」
海が一歩近づいて、りいなの頬に手を添える。 「…じゃあ、約束。次は昼の秘密基地で会おう」 りいな:「約束したら、その日までソワソワしちゃうじゃん」 海:「いいじゃん、それ。“会いたい”って気持ちが続くの、恋っぽくて」
ふたり、もう一度だけキスしようか迷って—— でも今回は、ふわっと額同士をくっつけるだけ。 昨日とはちがう、朝のやさしさ。
ドアを開けて、ひとつ息を吐いて、 海:「…じゃあ、またね。りいな」 りいな:「うん。次も、うちの魔法かかってもらうから」
海がドアをくぐって一歩外へ。 でも振り返って、「…あ、言い忘れた」って言うから、りいなが「なに?」と聞くと—— 「昨日の“好きかも”ってやつ、今日の方が強くなってる」
りいなが笑って、「あたしも、記念日更新中かも」
ドアが閉まっても、ふたりの気持ちはまだ部屋の中にふわふわ残ってる。 そして次の“秘密基地時間”へとつながっていく。