騒がしい舞台裏で 彼らは騒ぐ
この世界では無いどこかの世界
1人、また2人と
顔を変えては笑っている
「……」
暗い面持ちで佇む青色
「、仏…じゃないかMr.Mummy
手が凝ってるね」
「ありがとう!匂いまでこだわったよ!」
「…くっ、、、さぁ……近寄らんといて」
「はぁ?!」
ファンキーな色をした香り
赤を示した匂いは
きつい水色の香水で誤魔化されている
ピリッと痛みが走った
「あぁ…?
…Mr.WereWolf 直ぐに噛みつかないで」
そう言うと
腕に噛み付いた歯を引き抜く
「歯が疼いて仕方がないんだよ」
赤髪の彼は可笑しそうに笑う
赤髪、今日は銀色に染まっている
「骨でも噛んだらどう?」
「血が出ないじゃんか」
楽しそうに笑った
視界に映るオレンジ色
可愛らしい”仮装”
「こんばんは jack-o-lantern
カブはもうやめたんだね」
白髪が似合う彼
今日は毛先が濃いオレンジだ。
「こんばんは。カブはもう懲り懲りだよ」
瞳をギラりと輝かせ
作り込んだ笑顔を見せる
「そっか 似合ってるんじゃない?」
可愛い彼とは暫くのサヨナラだ。
「……こんばんはMr.Witch」
「Mr.Witch……?おかしい言葉だね」
ふふ、と笑う
大きな帽子で顔はよく見えない
「顔が見たいよ。」
「仰せのままに。」
帽子を取ると
キツく塗られた化粧が見える
薄い お面。
化粧の裏
本当の彼がチラつく
「…化粧が少し落ちているよ」
ファンデーションを重ねて塗ると
ありがとう と微笑んだ
部屋を見渡す
「……」
今年も彼は来ない。
いつからだろう
彼はずっと姿を見せない
あの時、舞踏会が終わって
精一杯の仮装も役目を終えた時
化粧を落とす俺らを横目に
彼は静かに消えていった。
変身を解く事もせず
ただ 静かに。
今年は来るかな、なんて
彼に見せてもいい格好で、なんて。
張り切った仮装は
彼がいなければ意味を成さない
「そろそろ行こうか」
今宵 年に一度の マスカレイド
、
、
、
どんな姿でも構わない
きっと彼らは
俺とすれ違おうが気が付かない
もうやめたんだ こんなアソビを。
「……」
舞い踊る彼ら。
バレバレの仮装
人間だって すぐに分かるのに。
喉から鳴る音
人とはかけ離れた匂い
濃く 深い瞳の色
人外の耳と腐った皮膚
年に1度 ”本当の俺”を出しても
誰も目に留めない、そんな日があった
だから
”仮装”なんて呼ぶ彼らの隣で
俺は変身を解く
人から獣へ
舞踏会が終われば また俺は仮装をする
獣から人へ
バレないように、彼らには絶対に。
なのにあの日だけは
上手く仮装が出来なかった
耳が飛び出たままで
人では無い香りは 濃さを増す
気がついたら逃げ出していた。
こんな俺を 許してはくれないか。
捨て猫だった俺を拾ってくれたお前らを
騙したけれどどうか、どうか。
「…………」
いいさ 許されなくても
許されない事を 実際 しているのだから
「…こんばんは」
「、?」
後ろから声がかけられる
「一緒に踊りませんか?」
…この人も きっと仮装だけど
本当の彼が見えない
上手くできている
青い 猫。
「勿論」
彼の手を取るそして踊り出す
お互い剥がせない仮面を
そんな仮面の裏を
探るように舞う
クセのあるステップ
俺はどこかでこの踊りを
見た事がある。
否 彼とは絶対に
一緒に踊った事がある。
「………」
思い浮かんだ人
「…?どうか、されました?」
「……いえ、何も」
そう言うと 彼は俺の手を少し強く握った
「…あの、、俺、貴方と何処かで……」
確信に染まった瞳
あぁ、完全に
懐かしい彼に 涙が浮かぶ
「いいえ、お会いしたことはありません。」
もう此処には 来れないな。
いっそ最後に 俺の名前を呼んで欲しかったな。
俺は目を瞑って 記憶を消した。
「悠佑、?」
ポツリと呟かれた言葉
彼は一体誰だろうか。
少し微笑んで一礼し
俺は会場を後にした。
コメント
1件
最後すれ違うところも含めて 世界観が好きだな 人と人ならざる者が交差する感じ 良いよね…… 仮面を重ねた嘘の舞踏会に紛れて 彼を探して期待する …そんな感じの話良いな 語彙力たんねえ やっぱすげえな あまねの話。