🧹 やっと見つけたパートナー
夕方の五時頃、千里眼の魔女、フレイアは時計を見て、「いくらなんでも、遅いわねえ。」と言った。「確かに。でも絶対に五分もしないで戻ってくるはずだよ。なんてったって今日はセレネがずっと楽しみにしてたアレがあるんだもの」「そうそう。アコの言う通り。セレネさんが時間を忘れるわけはないと思いますわ」「でも五分過ぎても来なかったら…まあ、うーん」「セレネならきっと大丈夫だよ」と、フレイアのつぶやきに4つの声が答えました。魔女ママと呼ばれるフレイアのパートナーの猫たちです。パートナーとはいわば相棒ということで、すべての動物がパートナーになれるわけではありません。魔女と動物。心が通じ合った者同士だけがパートナーになれるのです。
「ただいま〜今帰ったよ!」「ああ。やっと帰ってきたわ」「おっ!帰ってきた!」「おかえりなさい」「おかえり。ずいぶん遅かったわね」「時間をよく見なさいね」と、みんな口々に言います。
「ママ!みんなぁ!あたしね、あたし、パートナーを決めたの!」ほんとうに嬉しそうな声でにっこりと笑っていいました。」「えっ?!」驚きのあまり、魔女ママはリュックを取り落とし、あんぐりと口を開けました。猫たちもです。「えっ?え?」魔女ママは驚きのあまり、ふるふる震えてしまい、猫たちの尻尾はピクピクと動いていました。
セレネはおどおどしながら言いました。「えっと、しょ、紹介するね」もう魔女ママたちは驚きのあまり、声も出ないようでした。ただ、こくこくとうなずきました。セレネはそれを見ると踵を返し、コアを抱いてきました。
「こ、この子!」
どうしよう。もしかして、馬鹿にされるかな?保護猫だからって、馬鹿にされるかな。
猛烈に恐怖が押し寄せてきた。怖くて目も開けられていません。
魔女ママはどわっと来る震えをどうにか抑え、よくよく猫を見ました。それはそれは黒い猫でした。角度が変わると、濃厚なチョコレートのような茶色にも変わります。そして気品よく輝く金の目には誰もが惹きつけられます。
セレネはゆっくりと目を開けました。みんな、コアを覗き込んでいます。コアの勇敢な雰囲気にセレネは勇気をもらいました。「この子はコア。生後9ヶ月の子猫、だよ。」「かわいいわね」誰かが言った言葉にセレネは、ほっとしました。「あれ?」セレネは違和感を感じました。何に違和感があるのかって言われたら、ここ!と言えるわけではないのですが、何かがおかしい。何かが、変。怖い。
直感的にそう感じました。じりっと後退りすると、魔女ママたちは我に返ったようにセレネを見て、「かわいいパートナーね。これからよろしくね。コア」にこりと笑いかけるその顔はいつもの魔女ママでした。嬉しくなって思わず、セレネも微笑んでしまいました。
「これからよろしくおねがいします。」コアはぺこりと頭を下げました。「これからよろしくね、コア!」セレネはぎゅっとコアを抱きしました。
喜ばしい反面、どうしようもない虚しさに襲われました。「…やっと、見つけたパートナーなんだ‥あたしは‥ダメな魔女っ子なんだ。」セレネあは、コアにも聞こえないほどの小さな声でぐっと歯を食いしばりました。
コメント
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かわいい!面白い!天才!
めっちゃいい✨️