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「さて今日もムアニエル平原行くぞぉ〜」
と朝ご飯をかき込みながら言うダイン。
「なんかわかんないけど、オレ、カカシジ苦手な気がする」
と朝から食卓に並んだ肉の一欠片をフォークで刺すヲノ。
「お。じゃあなおさら行ったほうがいいな」
と武器屋のおっちゃんが笑いながら肉を口へ運ぶ。
「はぁ〜…。カカシジねぇ〜」
ということで今日もムアニエル平原へ行くことに。
「それにしても遠いんだけど」
「それは同感」
ひたすら前回カカシジを浄た“浄め場”へ歩く。
森を抜け、カカシジを浄た広場に出た。カカシジが華麗に跳ねるように走っている。
「さて。いるかなぁ〜?」
「いるじゃん」
「いや、カカシジじゃなくて」
「あ、違うのか」
「言ったろ?イグニル」
「げっ。マジ?」
「マジ」
「ダインも苦手って言ってたろ」
「そうなんだよなぁ〜」
と言いながら空を見上げるダイン。ヲノも空を見上げる。綺麗な青空にまばらに雲が流れていく。
小さな鳥たちが戯れるように飛んでいる。小さな鳥たちが休憩するように木の枝に留まった。
「いい光景だなぁ〜」
「癒されるなぁ〜」
まるで田舎の家の縁側で景色を眺めるおじいちゃんおばあちゃんのような会話をするダインとヲノ。
するとその留まっていた小鳥たちがなにかを察して一斉に飛び立った。
枝が揺れ、葉も散る。大きな太い枝を鋭い爪を持つ足が掴んだ。
大きな翼をバサバサと羽ばたかせ、ゆっくりと翼を収める。
「来た」
ダインが呟く。鋭いクチバシに鋭い目、イケメンな顔をした至って普通の鷲の姿をしていた。
「…え?」
拍子抜けしたヲノ。「これが?」と言わんばかりの顔をダインに向ける。
しかし、本当に苦手なのだろう。しばらくイグニルを見たままのダイン。ヲノの視線に気付き、ヲノを見る。
「これが?」
とイグニルを指指すヲノ。
「そ」
「めっちゃ普通じゃん。オレもっとフェニックスみたいに燃え盛った状態で現れるのかと思ってた」
「まあまあ。ここからここから」
ダインはハンマーにブル下げていた手甲をヲノに渡す。
「なにこのもふもふ」
「手につけろ」
「おぉ」
ヲノはそのもふもふの装備を手にはめる。ダインも手にもふもふの装備をはめる。
「似合わねぇ〜」
と笑うヲノ。
「うるせぇ」
「ま、オレはスマートでイケメンだからなんでも似合うけど」
「ぬかせ」
「で?これなに?」
「これはスポーレの素材で作った装備だ」
「あぁ!だからダイン似合わないんだ」
「うるせぇ」
「へぇ〜。カッコかわよ」
「肉屋に卸すか素材屋に卸すかで変わってくるんだ。肉屋に卸せば対価を貰える。
素材屋に卸せば、対価は貰えないが、その分装備を作るための素材が貰える。
ま、正確に言えば肉屋に卸しても素材は貰えるんだが、レア度が低い素材ばっかりが手に入る。
素材屋に卸すとレア度が高い素材が手に入るってわけだ」
「なるほどな。じゃ、効率良く装備を作るためには」
「素材屋に卸すほうがいいかもな。
ただ、装備を作るにも金がかかるから、肉屋に卸して対価も貰わないといけない」
「はあぁ〜…。大変だ」
「そ。リンピアドールは意外と大変なのよ」
「で?なんでこれ着けたの?」
「頃合いかな」
ダインがイグニルを見上げる。イグニルは首から上だけを動かしヲノとダインを見つけた。
すると目にあたる光がクルンと回転したかと思うと
大きな翼を出してゆっくりと動かし始め、枝を揺らすほど翼を羽ばたかせ浮上した。
ヲノとダインから目を逸らすことなく、大きな翼を使い移動してきた。
「きたきた」
「どーゆーことだよ」
「イグニルの主食はスポーレなんだよ。だからスポーレの装備をつけることで狙われやすくなる。
ただイグニルに対して有効な装備ではないから、防御力は期待するな」
「そういうことか…」
飲み込んだヲノだったが、バッっとダインを見て
「は!?防御力下がるっつった!?」
下がるとは言っていない。
「まあ…。基本防御力は上がってると思うが、イグニルに対しては弱い」
「おい!」
なんて話しているとイグニルがヲノ、ダインを目掛けて滑空してきた。
「来たぞ!」
ヲノはブレードを、ダインはハンマーを構える。
イグニルが滑空してきてダインがハンマーをイグニルに合わせて振り下ろす。
イグニルがダインの大きなハンマーの下敷きになる。かと思いきや
大きなハンマーなため、風圧もすごく、イグニルは上からの風を翼の背の前方に受けるようのして
前にクルンと回り、そのままもう一度上空へ飛び上がった。
ハンマーは空振り。地面に大きな凹みだけを作った。
「うわっ。俊敏」
ダインはハンマーを構え直し
「そうなんだよ。俊敏だし、オレのハンマーとも相性が良くない。だから苦手なんだよな」
「なるほどな」
イグニルは上空で翼を動かし、ホバリングしている。
もう一度ヲノとダインに向かって滑空してくる。
「ならオレの出番かな?」
とヲノがブレードを構える。
「もらい!」
ヲノがダインのようにイグニルに向かってブレードを振り下ろす。
イグニルは一刀両断、真っ二つ。かと思いきや
まるで遊んでいるかのように体を横向きにしてブレードスレスレを抜けてみせた。
そしてもう一度上空に飛び上がる。
「くそ!なんかムカつく!」
「弄ばれてる感じするよな」
イグニルはすぐにまたヲノとダインに向かって滑空してきた。
「今度こそ!」
「オレはヲノが攻撃できたら追撃する」
「オーケー。まかしとけ」
ヲノがブレードを構える。滑空してきたイグニルに対し
今度は右から左にスイングし斬りつけた。しかしまたも空振り。
たしかに振り下ろすとブレードとしては面が少ない。その分横からのスイングのほうがあたる面が広い。
しかし振り下ろしたほうがイグニルにあたる面は大きい。
そして横からのスイングだとイグニルにあたる面が小さい。一長一短である。しかし
「ヒット!」
と言いながら半回転し、ブレードの側面をイグニルに向かってスイングした。
するとイグニルの顔に命中した。イグニルはバランスを崩して地面に落ちた。
「ナイス!」
ダインはハンマーを振り上げる。
「よいしょーー!」
ハンマーを振り下ろす。しかしイグニルは後ろにクルンと回り
大きな翼を地面に向かって1回叩きつけるように羽ばたかせる。軽い土埃を回せ、一気に上空へ。
「くそ!」
パンチをもらったプロレスラーが顎を動かすように
ヲノのブレードに打ち付けられたイグニルもクチバシを動かす。
「すばしっこいな」
イグニルが翼を動かし、ホバリングしているかと思ったら
翼の根元から火が吹き出し、翼の先まで炎に包まれた。
「ほら」
ダインが言う。
「すげぇ…」
神秘的な光景に思わず見惚れる。見惚れているとイグニルが大きく翼を後方に反らせる。
そして前方に思い切り翼を羽ばたかせる。
すると大きな翼から燃えた羽がクナイのようにヲノとダイン目掛けて降り注いだ。
「ヤベッ」
ヲノはブレードの側面で、ダインはハンマーを掲げてガードする。しかしすべてはガードしきれず
「いった!」
「あっつ!」
足などに羽が刺さったり、防具に燃え移ったりした。
「厄介すぎる」
「そうなんだよ」
イグニルは燃え盛った翼のまま、ヲノとダインに向かって滑空してきた。
しかも体を回転させながら。ヲノとダインから見たら炎の円が向かってきているように見える。
ヲノとダインはそれぞれ左右に飛んで転がり避ける。イグニルはまた上空に飛び上がる。
「埒が開かねぇぞ」
「だな」
上空のイグニルが高度を少し落とす。そして羽ばたきを大きくする。するとヲノとダインに熱波が届く。
「あっつ!」
「あっち!あっち!」
イグニルが羽ばたかせ、熱波を送るのをやめる。
「手も足も出ねぇ」
イグニルが上空を、円を描くように飛ぶ。円を描くように飛びながら燃えた羽を投下する。
ヲノ、ダインが炎を纏った羽の円に囲まれる。イグニルが高度を落として熱波攻撃を仕掛けてくる。
「ぐっ…」
「あっ…つ」
逃げようにも逃げられない。熱波攻撃が終わる。
ヲノがブレードで燃えている羽を切り裂くようにスイングする。
ダインは燃えている羽をハンマーで叩き潰す。炎の切れ間から外に出る。
「あいつがまた低空にきたら、またブレードの側面で叩き落とす。
そしたら今度はハンマーを振り下ろすんじゃなくてスイングしてみてくれ。
振り下ろすとまた後ろに回転してかわされるかもしれない。
横からのスイングだとどうなるか試したい。トライ&エラーしかない」
「オッケー!」
と話しているとイグニルがヲノ、ダインに向かって滑空してきた。
「よっしゃー!」
ヲノはイグニルに向かってブレードをスイングし斬りつける。まずは空振り。想定内。
「ここから!」
一回転し、今度はブレードの側面をイグニルに向かってスイングした。
キーン!とバン!が同時に鳴ったような音をさせ
イグニルがバランスを崩し、地面に落下する。するとまたも後方に回転したイグニル。しかし
「っしゃきた!」
ダインはハンマーを、今度は振り下ろすのではなくスイングしたので、イグニルの背中に命中した。
「きたきた!」
イグニルはダインのハンマーに押される形で前に吹き飛ぶ。
「ナイスゥ!」
ヲノに向かって吹き飛んできたイグニルに向かって
ヲノはブレードでスイングする形で斬りつけた。当たった。
しかし、イグニルは大きな翼で自分を包むようにガードをした。
そのまま地面に落ち、姿勢を整えて地上で翼を広げる。
地上で翼を大きく羽ばたかせる。するとヲノを熱波が襲う。
「ガラ空き!」
ダインが飛び上がってハンマーを振り下ろす。イグニルは一回地面に向かって思い切り羽ばたかせ宙に浮く。
ダインの上からのハンマーの風力を翼の上部にあて、前方に回転し、そのまま上空に飛び上がった。
「惜しかったな」
「ただ、たいぶ削ってるはずだ」
「だな」
イグニルは上空で円を描くように飛び始める。そしてそのまま地上に燃えた羽を投下した。
燃えた羽の円にヲノとダインが囲まれる。
このままだとまた逃げられずイグニルの熱波に包まれると思った2人は
ヲノはブレードをスイング、ダインはハンマーで叩き潰そうとした。その瞬間
「ギコ。グルルル。ゲコ。ギーッ。ギーッ。ギーッ」
という声と共に目の前の羽の炎が大きくなった。2人とも後退る。
「どうなってんだ?」
「さあ?」
と言っていると案の定、高度を下げたイグニルが2人に向かって熱波攻撃を仕掛けてきた。
後ろは燃えた羽の炎が大きくなったら炎の柱
上空からはイグニルの翼から発せられる熱波で挟まれた。ただただ耐えた。
燃えた羽の炎が小さくなったのを見計らって、ダメージ覚悟で円の外に飛び出た2人。
「…はあぁ…はあぁ…」
「はあぁ…はあぁ…」
汗が滴り落ちる。汗を拭う2人。腕から汗が飛んだその先に眠そうな目の蛙がいた。