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ジリジリと焼けるような暑さに汗がぽとりと落ち、硬いアスファルトの道路にシミを作った。身体を覆う汗の気持ち悪さを感じながら、せめてもの想いと顔を手で拭う。直後に持っていたレジ袋がかさりと揺れ、急に軽くなる。何があったんだと横に視線を移すと、見覚えのある好青年がいた。


「え」

「わ、やっぱりおんりーやった!」

「持つよ、重いやろ」



名前を呼ぼうとした言葉は無慈悲にも相手の悪気の無い言葉に掻き消された、次の言葉を出したいが上手く言葉が出ない、いつもは早い頭の回転が、今は暑さですっかりだめになっていた。もしや、これは夢では無いのか、それとも昨日の事が夢だったのか、都合のいい幻覚…とまで思う程。そんな自分はお構い無しに彼は世間話に花を咲かせている。その顔が、その目が、まるで愛するものを、全身で愛しいと訴えかけるように見詰めてるもんだから、胸が少しズキリと傷んだ。どうしてこう優しくしてくれるんだろう、どうしてこう突き放さないんだろう、彼の長所の優しさが、自分をこれ程までに苦しめる。それがまるで彼を否定してるようで更に自分を苦しめた。込み上げてくる涙で少し視界が霞む、だめだ抑えろ。泣いたらだめ、でも思いっきり泣きたい、嫌われる、嫌われてもいい。理性と感情がせめぎ合って、ぁ、だったかぅ、だったか、ひとつ声が漏れた。


「ん、?どーかしたん?」


いつもは嬉しくて堪らないだろう心配そうに見つめてくる彼の優しさが今は堪らなく苦しかった、怖かった。どうしてこう、何事も無かったように話せるのだろう、少しの不安と少しの羨ましさをかすかに思いながら乾ききった喉を無理に動かして出た声は酷いくらいにか細く弱かった。


「どうして」


たったの4文字、されどやっとの4文字。そう呟いて終わる自分に全く意図が汲めない様子の彼がなんとも言えない表情をしている


「ぇ、っと?何が?」


ごめん、わからん。申し訳なさそうに此方を見ている大きな彼の瞳に吸い込まれるかと思った。実際、惹き付けられていたのは事実だろう、彼から目が離せなかった。


「おらふくんの事好きだって、昨日言ったでしょ」

「うん。」

「どうして優しくするの、」

「だって、僕も」

「諦める為に、ケジメをつける為に告白したんだよ」


ちゃんと振ってよ。そう言いかけた言葉は、どうしても言いきれなかった。彼の言葉を遮ってまで放った言葉は言いきれなくて、投げ捨てたはずの感情が、今も尚自分にへばりついていて、自分の弱さと惨めさに嫌気がさした。


「おんりー、ごめん」


「振れないな」


夏の嫌な暑さを飛ばすように一際大きな風が吹いたとき、え、という素っ頓狂な声とちゅ、と小さいリップ音が風に紛れて消えていった。

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