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埃っぽい部屋、硬いベッド、朝の日差し。それらが僕を迎える。
「おはよう、ベル」
彼女は……彼女たちは、呆れ顔で俺を見つめる。
「やっと起きたか、だが、前より早いな。」
「……大体20時間でぇ、前より早いのぉ…?」
僕だって罪悪感はある、だが、これはスキルのせいなのだから。
「そういえば手塚さん、スキルって使ったことないよね?」
彼女はぼーっとしていたが、驚いたような顔で遅れて僕に意識を向けた。
「ぅんぇ?!そ、そうだけどぉ?」
その場を取り繕うような彼女の態度は気にせず、その答えに少し興味が湧いた。
「じゃあ、何か使ってみてくれないか?」
「わ、わかったぁ!えっとぉ、『薬剤生成』!」
その瞬間、瓶がどこからともなく現れて、妙で、非常に体に悪そうな、見るだけで体が拒否反応を起こす色の液体が瓶に注がれる。
「なあベル、この世界のポーションってこんななのか?」
彼女は僕が言い終えたとほぼ同時に否定をした、本当のポーションはみてて気持ちいいほど綺麗な青らしい。
そしてその【ポーション】ができた。
「……失敗したかもぉ。」
僕はそのポーションをためらいながら口に含もうとする、ベルの止める声が聞こえた気もしたが関係ない。
ゴクン
冷たい感覚が喉を通る、食道が熱い。
俺は悶え苦しむ、身体中が痛い、痒い、軋む。
生命の危機と、脳が信号を送り出す。
充血、頭痛、痙攣、感覚麻痺、吐血、指の壊死。考えうる最悪の状態だ。
五感が失われていく、俺はやっと【死】を悟る。
飲まなければよかった、あぁ、後悔を過ぎ、清々しさを感じる。
心地が良い……あれ?生きてる?
「……めっちゃ調子いいんだけどこれ」
「い、今までの吐血が嘘のようにぃっ!?」
ステータスを見る、なんかレベルが上がっている。
上がった幅が、10だ。えぇ?!10?!
HP 500
DFS 250
AT 200
MAT 200
MP 750
Lv.11
ちょうど全部5倍だ……じゃああの苦しみはレベルアップの負担×10だったのか?
「成功だったかもねぇ、この薬ぃ。」
「う、うぉー!なんか力がみなぎっt」
バタン
そういや吐血してたなぁ、あぁ、視界がモノクロになる〜。
ダグに潜って何時間かがたった。あれから敵を刺し殺してはいるけどもキリがない。
「ねぇ戸取木!もっと前に出てちょうだい!槍だけじゃもう限界だわ!」
「ひぃい!モンスターも怖いけど、澄子さんの方が怖いかもぉっ!」
「こんな密集してちゃあ、私の不意打ちも意味がないわっ!」
「も、もうMP切れだわ!」
みんなもう満身創痍、私も限…界……
地面が青白く光る、授業で習った転移魔法だ。
視界が真っ白になったと思ったら、次見えたのはいつもの城の訓練場だった。
「突破者はなし、全員負傷。上がったレベルは全体平均で2。この程度のダグも攻略できないとはな。」
「メガニアさん!あんな死にそうになるとは聞いてないですよ!」
みんなのヤジを打ち切るような大きな声。あんな優しそうだった顔が一気に狩る側の獣のような、恐ろしい顔に変貌する。
「うるさいぞ弱者どもッ!全員鍛え直しだッ!」
そうして、回復するまもなく稽古が始まった。こんな日常、私は耐えれるのだろうか。
ハッ!ここ…はベルのベッドか。
「……お前は何回気絶したら気が済むんだ?」
彼女の怒りが直接脳に響く。
「ごめんなさいベル様、どうか殴らないでください。」
幸い、彼女は許してくれた。
改めてステータスを見る、夢ではなかった。やはりLv.11と書いてある。
僕は端に目をやる、「新しいスキルが解放されました」と書いてある。
僕はそこに手を触れる、すると「人形武装」と映し出される。
「『人形武装』……?」
声に出してしまった、自分の両腕が瞬く間に分解、再構築される。
作られた腕はまるで、ドラゴンのようだった。
「お、おぉ…かっこいいな。これ」
「「?!」」
彼女たちが驚く、無理もない。
「ど、どうしたその腕は?!」
「く、薬の副作用かなぁ?!」
急いで彼女たちを落ち着かせる。
「なるほど、新しいスキルか。」
「外の人形でぇ、試してみようよぉ!」
半ば強引に藁人形の前に立たされる、そして僕はもう一度、『人形武装』という。
脳がひとりでに考える、自分の中で最も強いもの。
警察?いいや。兵隊?いいや。侍…そうだ。侍だ。
両手の形が刀を模したものに変わっていく。そして、疑惑も確信へと変わる。
「【両腕が考えていることを模した人形になる能力】……」
目の前の藁人形に間合いを詰める、腕を振る。
藁人形は一瞬にして半分になった、彼女たちは斬られた藁人形を呆然と見つめる。
「人形師って、弱いのって字面だけじゃね?」
手の形が戻る、彼女たちも冷静さを取り戻す。
「なあテル、ダグに潜らないか?」
……ダグってなんだ?
続く。
ほんとすまん、更新が大幅に遅れてしまった。
ゲームいっぱいしてた。ほんとに。
いやー照くん、強くなりつつありますね。て言うか強いですね、もう。
次回、更新はいつになるんでしょう!
さいなら!