「助けてくれてありがとうございます。」
そう言って彼女は頭を下げた。
「全然だいじょ…」
時が止まった。自分でもなぜ彼女を助けたのか分からない程必死だったため、彼女の顔をしっかり見ることが出来ていなかった。
「かわいい…」
不意にその言葉が出てしまっていた。透き通った肌に銀髪の長い髪。まるで違う世界から来たかのような容姿だった。
「あ、あの…」
呆然としていた僕に彼女はキョトンとした様子で尋ねる。
「ごめんね。大丈夫だよ!」
「それは良かったです!」
安心しきった表情で彼女は更に質問してきた。
「あの、お名前聞いてもいいですか?」
少し顔を赤らめ聞いてくる彼女にすこし動揺しながら答える。
「和人です、橘和人」
少しキョドった言い方になってしまったが、こんな美女目の前にしたら誰でもこうなってしまうだろう。
「和人さん…私は藍沢彩夢」
「あむ…」
「はい!彩るに夢と書いて彩夢です!」
「すごく素敵な名前だね」
そう答えると彼女は少し照れた様子で聞いてきた。
「あの、なんで助けてくれたんですか?」
回答に困った。自分でも分からなかったからだ。でも、気づいたら体が動いていた。でも、頭の隅で考えていた素直な言葉を気づくと口にしていた。
「彩夢さんには悪いけど、君を助けることで自分がいい事をしたって思いたかったんだ。」
思ってもいなかった回答だったのか彼女はキョトンとした表情で僕の顔を見つめていた。
「なんて言うか、君を助けたことによって自分が生きる意味を少しでも見つけられたらいいなって…」
自分でも分からなかった。なんで会ったばかりの人にこんなに素直に話せているのか。今まで誰にも素直に話すことが出来なかったのに。
「そうなんですか…」
僕の思考を遮るかのように彼女は話し出した。
「あの、私じゃダメですか?」
その言葉の意味を理解することが出来なかった。言葉の意味を理解しようと頭を回していると彼女が食い気味に言った。
「ですから!私では生きる意味にはなりませんか!?」
「えっと…?」
やはり理解が出来なかった。なぜそんなことを言っているのか。僕は彼女に届くかわからない程のかすかな声で彼女に聞いた。
「それは、君のことを僕の全てにしていいってこと…?」
その言葉に彼女はにこりと笑って答えた
「はい!私をあなたの全てにしてください!」
その時の気持ちは言葉に表せない程だった。でも一つ変わった事があるとするならその瞬間僕の世界は彩りを少し取り戻した。これが恋というものなのか。そんな思いを胸に彼女に言った。
「君に尽くさせてください!」
その時の言葉は自分の口から出たとは思わないほどの声量で、彼女は少しびっくりした表情で言った。
「はい!こんな私でよければ!」
それから彩夢とは恋人になった。
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