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他の全員が壁の向こうの山の上部に出来た穴を見て固まっている中、ウッドゴーレムの手の上で元気に喜ぶアリエッタとミューゼ。
「しゅごいしゅごいアリエッタ~! なんかアリクルちゃんが強くなったよぉ~!」
『やったー! だぁいせいこぉ~! やっぱ巨大ロボならぁビームだよね~!』
酔いとテンションの余り、前世の言葉で喜ぶアリエッタだったが、一緒に喜ぶミューゼも酔っている為、不思議に思われる事は無く、下にいるパフィも驚いてそれどころではなかった。
酒気の強いウッドゴーレムに乗っているせいで、さらに酔いが回っている。そんな2人が考えて動いて話す事は無い。完全に勢いだけの行動になっている。
「ぱ、パフィさ~ん!! 一体これはどういう事ですか!?」
「はっ……副総長? ええっと、その……」
いちはやく復活したロンデルが、パフィの元へと慌てて走る。つられてパフィも我に返り、頭の中を整理した。
パフィが話し始めると同時に、ウッドゴーレムが2発目のビームを撃ち、一瞬ビックリするが、なんとか持ち直したパフィは状況を説明し始めた。
「アリエッタがこのゴーレムの掌に乗せてもらって、胸の中心に絵を描いていたのよ。ほら、アレなのよ」
指差した先、ビームが射出された部分には、青い球のような絵が描かれている。ロンデルがそれを確認したと同時に、再びビームが発射された。
「確かに……あそこから光が出ていますね。何でしょう、あれは」
「さぁ……一体何を描いたのか、本人に聞ければと思うのよ……」
「……無理ですね」
現状、会話の通じないアリエッタに質問する事は不可能である。
2人は何度も発射されるビームと、掌の上で喜んでいるアリエッタを、ただ眺めるしか出来なかった。
「って、とりあえず止めないと! ミューゼさん、降りてきてくださーい!」
「え~~~……」
「いやいや早く降りてくるのよ……」
降りろと言われて嫌そうな顔になり、アリエッタを抱き締めるミューゼ。抱きしめられたアリエッタは幸せそうな顔になっている。
「こんな可愛い~ぃアリエッタをぉ…離せって言うのぉ? ひどくなぁい?」
「そんな事言ってないのよ……こりゃダメなのよ」
すぐに会話が通じないと悟ったパフィ。力づくで2人を降ろそうと、ゴーレムに近づいたその時だった。
ガコォン!
「うよぉっ!?」
「にゃふっ!?」
突然ウッドゴーレムに何かがぶつかり、衝撃でバランスを崩す。ウッドゴーレムは持ち直したが、乗っているミューゼとアリエッタは体勢を崩し、倒れこんで手にしがみついた。
「なんなのよ!?」
パフィが辺りを探る。原因はすぐに見つかった。
少し離れた空中に、たくさんの黒い影……ではなく黒い悪魔だった。
「む? 悪魔が姿を現してまで、何しに来たのでしょうか」
ロンデルのその疑問に応えるように、ウッドゴーレムからビームが発射される。しかし、そのビームは山に命中する事は無かった。
「んなっ!? アクマがカベになってあのヒカリをうけた…だと?」
「もしかして、山を守ったのよ?」
ビームを受けた部分の悪魔達は消滅し、代わりに別の悪魔がその場所を埋める。
さらに、パフィが倒した触手目玉の悪魔も複数現れ、触手を伸ばしてゴーレムの向いている方向に壁を作った。
「どういうことなのよ?」
「この大地を守る……それだけダ」
「!?」
パフィに答えたのは、少しくぐもった低い声。驚いて振り向くと、黒い人が空中に佇んでいた。
「……悪魔なのよ!?」
「ああ、オマエ達がそう呼ぶ者ダ。山を守る為にアレを破壊しにきタ」
「会話が通じるのですか?」
「……そんな事はどうでもイイ。オマエ達は邪魔をするナ」
そう言うと、人型の悪魔は少し離れ、片腕を異様に大きく変形させて、ウッドゴーレムと対峙した。
「アリクルちゃ~ん、敵だよ。やっつけて~!」
ミューゼが悪魔を見て、ウッドゴーレムに指示を出す。その後すぐに、掌からアリエッタを抱いて降りた。
「う~?」
何で?と言いたそうな顔のアリエッタ。抱えられているので、自分で動く事は出来ない。
酔っぱらったまま、いつものようにパフィと合流して戦闘態勢に入ろうとするミューゼだったが……
「今なのよ! 捕らえるのよ!」
「大人しくしてくださいっ!」
「ぅよわあぁぁぁぁ!?」
即座にパフィとロンデルによって捕まってしまう。杖とアリエッタを取り上げられたミューゼは、テンションが落ち着いたせいか、パフィに羽交い絞めにされたまま顔色を悪くして、項垂れてしまった。
一方のアリエッタもちょっと暴れたが、ロンデルの腕の中で撫でられて、あっさり眠りに落ちた。
「……最初からこうすれば良かったのよ」
「まったくですね」
「う~……」
こうして騒動の元凶2人は、あっさりと捕獲されたのだった。
話をした人型の悪魔が、ウッドゴーレムに向かって大きくなった腕を振る。叩かれたウッドゴーレムは少し揺れるも、すぐに立ち直る。あまり効いていない様子である。
続いて悪魔は周囲の悪魔に指示を出した。触手の悪魔が動きだし、ウッドゴーレムの腕や頭を拘束する。
「あのアクマは、『ダイチをまもる』といってたな?」
「えぇ。山を守って小さい悪魔が盾になっていた事から、嘘ではないと思います」
「訳が分からないのよ」
戦闘の様子を見ながら、悪魔の言葉の意味を考える一同。
「そういえば、先程からあの光が撃ちだされていませんね」
「む……?」
「たぶん、アリエッタが離れたからなのよ。紙の時だって、動かしたら壁が消えたのよ」
「ほう、ならそっちはもうアンゼンだな。あのマルだけで、とんでもないイリョクのコウゲキになったのは、しんじがたいが」
「一体何だったんでしょうね、あの攻撃は」
肝心のアリエッタに聞こうにも、質問が出来ない上に、今は寝ている。パフィ達にしてみれば、やったら駄目だと叱ることも出来ない。
一旦それは諦めて、悪魔とウッドゴーレムの様子を見る事にした。
一見悪魔が有利に戦っているように見えるが、悪魔の攻撃はウッドゴーレムにあまり効いているようには見えない。目に見える戦果は、触手で動きを止めている程度のものである。
「もしかして……悪魔って弱いのよ?」
「昨日の戦闘からしても、見えた時点で無力化していますからね。おそらく戦闘経験があまり無いのではないでしょうか」
体は変形させているが、これといって武器が無く、あまり強いと思える感じの攻撃をしていない。戦闘に慣れているパフィ達からしてみれば、子供のような戦い方にみえているのだ。
しばらくそんな様子を黙って見ていたピアーニャが、決心したように少し前にでて、パフィとロンデルに語り掛けた。
「このバはわちがひきうける。おまえたちは、アリエッタとミューゼオラをつれて、うしろのモノたちをおちつかせながら、ここをでるジュンビをしておけ」
「……了解しました」
「わかったのよ。ほらミューゼいくのよ」
「ぅや~ぁ~ありえったぁ~ぁ~」
すっかりテンションが落ちきったミューゼは、フラフラしながらパフィに連行されていった。
「さて、さいきんはアリエッタのせいで、なさけないスガタばかりみせていたからな。ひさしぶりにいいトコロをみせてやるか」
逆にやる気が出たピアーニャは、『雲塊』に乗り、悪魔達の元へと向かっていった。
悪魔達は焦っていた。ウッドゴーレムが硬すぎて、一向に破壊できないでいるのだ。
動きを止める事は出来ているが、いつまたビームが発射されないか、警戒しながら戦っている。
腕を大きくしたといっても、人の大きさの体に、ウッドゴーレムと同じ程度の腕のサイズになっただけ。近寄って攻撃すれば、反撃される危険性もある。その考えが、さらに腕の動きを鈍らせていた。
そして危惧していた通りに、ウッドゴーレムが人型の悪魔に向かって腕を伸ばす。
「グッ……」
反応が遅れ、体を強張らせる悪魔。ウッドゴーレムの手が悪魔を摑まえる……と思われたその瞬間、腕が横から破壊され、吹き飛んだ。
そのままバランスを崩して、ウッドゴーレムは数歩移動する。
「ア?」
「あぶなかったな。ここからは、わちもてつだうぞ」
ウッドゴーレムとピアーニャを交互に見て、悪魔は少し考えた。警戒は解かないままで、ピアーニャに向かって話しかける。
「…………異界の者カ」
「む、たしかに。ほかのリージョンのことはしっていたのか」
「ふン、よけいな事をしてくれタ、外部因子どもメ」
「……なるほどな。やはりわちらは、おまえたちのセイカツの、ジャマをしてしまったのだな」
「そうダ」
悪魔はピアーニャを睨みつける。しかしピアーニャはそれが当然と受け止め、会話を進めていく。
「ジジョウはわかった。とりあえずアレをシマツする。そのあとは、おびやかしたワビと、こんごのハナシをしたい」
「……どれもお前たちの後始末ダ。感謝はせんゾ」
「もちろんだ」
2人ともたどたどしい口調で話を進め、やる事が決まったとばかりにウッドゴーレムに視線を向ける。
人型の悪魔が触手の悪魔に指示を出すと、ウッドゴーレムから触手が離れ、悪魔達はピアーニャ達の後ろへと移動する。
ウッドゴーレムが動き始めると、ピアーニャは『雲塊』を変形させ、攻撃を始めた。
「いけっ!」
掛け声とともに掌を突き出し、2つある『雲塊』の1つを1本の太い槍のように変形させ、串刺しにする。ウッドゴーレムはその勢いに押され、ピアーニャ達からかなり離れた場所まで移動した。
そして……
「むんっ!」
ピアーニャがかざしていた手を勢いよく握った次の瞬間、ウッドゴーレムの内部で『雲塊』をウニのように変形させ、全方位に貫き粉砕した。
そしてビシッと腕を振りポーズを決め、不敵な笑みを浮かべるピアーニャ。
(よーし、ひさしぶりにクールにできたぞ! アリエッタにみせられないのがザンネンだが、これでロンデルとパフィにイゲンをしめせただろ!)
かっこよく決めた行動とは裏腹に、見た目と内心は残念な、シーカーの総長であった。