⚠ご本人様とは一切の関係ございません
基本🟪視点のみ(🟨🟪)
学パロ
®️なし
他匂わせあり
他生徒→⬛
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
この時期の雨は恵をもたらすと言われているらしい。しとしとと降る雨の中吹く風は、俺の頬をひんやりと撫でていく
優しく冷たい雨風と背中をさする手に、今は身を委ねることしか出来なかった
・・・
⬜「ねぇこれの元の位置わかんない…」
🟪「俺も知らねえよ…」
⬜「いやいやスマイル図書委員でしょ?知ってると思うじゃん普通に!」
なかむが手に持っている、恐らく地形や大気に関する…何だ?図鑑とも雑誌とも取れそうな書籍数冊と、かれこれ数十分にらめっこしている
放課後いきなり「ちょっとだけ手を貸してほしいことがある」と彼に連れられて向かった先は図書室。しかも資料室とかいう、高頻度で通っている俺でさえ入ったことの無い部屋だった
彼曰く今日地学の先生が資料として持ってきたものらしいが、教室に置いたまま帰ってしまったらしい。次の授業は来週、更に非常勤教師の為いつ居るかすらも明確に分からないのだという
書籍たちにラベルが貼ってあるのを見るに図書室の物だと判断した彼は、返却しに行こうとした。しかし返却場所が分からない。そこで俺が図書委員であることを思い出したらしい
あくまで俺はクラス内で図書委員なだけで、本の貸出や図書室内での仕事なんて全くしたことがない。そうして今に至る訳だ
🟪「分かんないなら司書の人に任せりゃ良いだろ…」
⬜「でも忙しそうだったし、別にスマイルもこの後予定ないんだろ?」
「あと入ったことない場所とか、そんなの入りたくなるくね?」
🟪「いや、まあそう、か…?」
上手いこと丸め込められたような気もするが、確かに自分が手に取らない分野を知る機会にはなったなと思う
問題は配架場所だ。ラベルはもちろん全て貼られているのだが、古くなり色焼けを起こして見づらいものが大半を占めていた。おまけに狭い割に敷き詰められた本棚のせいで、移動も一苦労という有様である
どうにか図書記号を読み取っては配架場所を探す、を繰り返して残るはなかむが持つ一冊のみとなった
🟪「なかむ場所分かりそう…って何読んでんの」
⬜「え?いやぁ、ちょっと捲ってみたら思ったより面白くてさぁ…」
「これだけ他の本達と毛色違うんだよね、コラムが書いてあるんだけど全部季節が関連してるぽい」
本の中身が見える距離まで近づく。今までのよりは比較的新しめの書籍に見えた
ほら、と指で刺されたコラムを次々に目で追う。彼の言う通り季節で統一されているようだった
⬜「へぇ、今の時期降る雨は恵みの雨って言われてるらしいよ」
🟪「あー、、何だっけ、穀雨?とか言うやつだろ」
⬜「お、二十四節気とかよく知ってんね」
🟪「……たまたまな」
最近の俺はどうかしている。甘ったるいほど幸せな時もあれば、些細な事で刺されたかのように胸が苦しくなる
それもこれも全部、全部アイツのせいだ
考え直す余地が無いほど自覚してしまった今、隙あらば彼のことを考えてしまう。それでも、せめて表に出さないように、今年いっぱいまでは良き友人であれるように、と日々を過ごしている
来年、俺はどうするのだろう
三学期はほとんど学校へ出向かない。せいぜい出校日と卒業式の練習の数日だけ。数ヶ月前に生まれた問いの答えはすっかり出てしまった。これを昇華したいとか、伝えてどうこうしたいとかは一切考えていない
ただ、今のまま過ごしていけばそれで良かった
・・・
資料室の入口から声がする。いつの間にか残りの一冊もしまい終えて先に出ていたらしい
資料室の鍵を司書の人へ返し、図書室を出る。廊下の窓には小さな雨粒が張り付いていた
⬜「げ、噂をすれば雨降ってるし」
「俺傘持ってきてないんだけどやばいかな」
🟪「これぐらいなら待てば止むだろ」
⬜「そうしてくれると助かるんだけどなぁ」
階段をのぼり、教室へと戻る道を辿る。自分の教室にはまだ明かりがついていた。きっと雨が止むのを待つ生徒がいるのだろう、 まだ距離があるというのに賑やかな声が聞こえる。なんとも放課後らしい雰囲気だ
近づく度に話題の内容が見えてきた。誰が誰に片思いをしている、この二人が付き合ってたとかの言わば恋バナをしている様だ
あまりに入るのがはばかられる話題に苦笑いしながらも、なかむに軽い別れを告げ、扉を開けようとしたその時、聞こえてきた会話に硬直することになった
「─ところで”きりやん”は居ねぇの?好きな人とか」
予想だにしていなかった彼の名前が聞こえてきたことに驚きを隠せない。確かに彼らしい声が薄ら聞こえたような気がしたが、まさか本当にいただなんて
その質問が聞こえたのだろう、なかむもにやにやしながら隣で様子を伺っている
🟨「は!?…いや、まあどうなんでしょうねぇ」
⬛「お前それはいるって言ってるようなもんだって」
⬛「聞きっぱなしとかナシだろマジで」
⬛「で、いつから?何組?言わねえと帰らせねえよ?」
🟨「えぇ何それだる…」
「……じゃあ、誰にも言うなよ?─」
笑いを含んだ挑発にうんざりしたような声で応じた後、あからさまに 声が落とされる。直後、さっきと比べ物にならない声量ではやし立てる声が教室から放たれた
あまり声量に思わず肩がすくむ。なかむも驚いたようで反射的に耳を抑えていた
⬜「え、うるさ…てか聞こえなかったの残念だわー…スマイル?」
「……俺の教室行こ?電気ついてなかったから誰もいないだろうし」
俺の顔を覗き込んだ彼は何かを察したような顔をしていて、半ば強引に背中を押されて彼の教室へ足を運んだ
俺は今、どんな顔をしているんだろう
2つ離れた彼の教室に招かれ、彼の席へ向かう。座るよう促されたのでとりあえず腰を下ろす。彼は前の席にもたれかかってこちらを見ていた
外では未だに雨が降り続けている。微かに強まった雨音が、静かな教室に響いた
⬜「……スマイル、見間違いならそう言ってくれていいんだけどさ」
「何でそんなに泣きそうな顔してんの?」
🟪「─え?いや、そんなはず…」
ない、とは言えなかった。喉奥が締まる感覚。反対に目元には何か熱いものが集まっているように感じた
俯き黙っていると、おもむろに彼が俺の隣に移動してきて、やや声を落として言葉を続けた
⬜「……さっきさ、めっちゃうるさかった時『一年の時から』とか、『一目惚れ』とか聞こえてきたんだよね、」
🟪「……っ」
⬜「…話せる範囲で教えてくれない?ゆっくりでいいからさ」
「スマイルが泣き止むまで待つから、ね?」
彼の言葉の途中から、視界が不明瞭になり、それが頬に落ちる感触があった。思わず両手で顔を覆い隠す。かすかな嗚咽さえ漏らすまいとしているせいで、肩が大きく震えてしまう
彼はそれに触れることなく、こちらの様子を伺っているような気がした
諭されるように優しい声と子供をあやす様に背中をさする手に身を委ね、俺は絞り出すような声でぽつ、ぽつと言葉をこぼした
・・・
どれくらい時間が経ったのだろう、雨足は弱まり、いつ止んでもおかしくなさそうだった
鼻をすすり、袖で目元を拭う。数ヶ月前から今までのことを、めちゃくちゃな時系列で話した。聞き苦しかっただろうに、彼は静かに聞いてくれた。ふいに背中から手が離れ、彼が前の席に腰を下ろす。その顔はどこか寂しさを隠すような笑顔を浮かべていた
⬜「…スマイルの聞いちゃったわけだし、俺も教えてあげるよ」
「……ずっと昔から好きな奴がいるんだよね、かれこれ4、5年くらいかな?所謂片想いってやつ」
「あ、きりやんじゃないよ!?…ってそこまで言えばバレちゃうか」
🟪「……きん、とき?」
⬜「お、正解ー」
腫れぼったくなった目を見開いた
とてもそうには見えなかった。俺が鈍いだけなのかもしれないが、彼がきんときに対して特別な視線や態度を向けていたように見えなかったから
いつもの様にコロコロ変わる表情の内側から、切なげな表情が滲んで見えた
🟪「…すごいな」
⬜「でしょ?毎日頑張ってんのよ実は」
🟪「辛くないの、それ」
⬜「うーん、まあ辛い、かな」
「でも後悔はしてないよ、今も昔も。親友のポジションってさ、意外とおいしいんだよね」
あは、と笑う彼が無理をしているようには見えない。きっと本心なのだろう
俺には到底出来そうにない
🟪「……もしさ、進学先別れたらどうすんの」
⬜「んー、その時は言うかもしれないわ」
「例えば卒業式前とかに伝えるかも、その先で後悔したくないし」
🟪「そう、か…」
⬜「さすがに俺も考えたくないから、中間考査までは見ないフリするつもり」
「スマイルはどうすんの?」
🟪「俺、は……」
どうしたいのだろう
今のままでいいと思っていたのは”相手に想い人がいない”ことが前提な訳で、想い人がいる、しかも三年間の片想い付きとなれば話は別だ
ならば、彼の言う通りこの先後悔しない為にも、どこかで踏ん切りをつけた方がいいだろう
何時がいいだろう、の問いにはすんなりと 答えが出た
🟪「……2月の頭」
⬜「あー、…立春?だっけ」
🟪「そう、最初に決めた日に全て終わらせる」
⬜「ふぅん、スマイルらしいじゃん。いいと思うよ俺は」
それまでは、その日までは、彼の友人として隣にいさせて欲しい
放置していたスマホを何となく見てみると、そこには助けを求めるメッセージが数件入っていた。恐らく、あの話題の時に送ってきたのだろう。思わずヒリつく頬が緩んでしまう
戻ることを伝えようと文字を打とうとして、ふと手を止めた
🟪「…なかむもきりやんと同じ駅だったよな」
⬜「?、そうだけど」
🟪「頼むから一緒に帰ってくれないか…?」
「ちょっと、今色々聞かれたらボロが出る気がする。目とか…腫れてるし」
⬜「っはは、いいよ全然」
「あ、それならきんときも待って一緒に帰ろうぜ、雨だし部活早く切り上がるんじゃないかな」
そういえば図書室から帰る時、遠くで運動部の掛け声が聞こえたような気がする。時計を見てみれば、かなりの時間が過ぎていた
🟪「じゃあきりやん拾って部室の方寄ってみるか」
⬜「おっけー、一応きんときに連絡しとくわ」
画面に文字を打つ彼の顔はかすかに笑っているように見える。窓の外を見れば すっかり雨が止んでおり、雲間から光が差していた
それぞれ想いを寄せる相手を迎えに行くため、俺たちは教室を後にした
続く
コメント
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何でこんなにも語彙力が あるんでしょうか???? 続きが楽しみです✨ 頑張って下さい~!!!