⚠ご本人様とは一切の関係ございません
基本🟪視点のみ(🟨🟪)
学パロ
®️なし
長いです
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
桜の木々は花びらの代わりに青々とした葉を生い茂らせている
暦上では夏を指すものの、未だ春を感じる暖かさ。 程よい日差しと、風に吹かれて心地よい音を鳴らす木々たち
─そんなの眠くならない訳が無い
🟨「──おーい、スマイルー、また船漕いでんぞー」
🟪「…っあ、…悪い」
🟨「何回目だよ、体調悪い訳じゃないよな?」
🟪「んん…?いや、普通に眠いだけ」
シャーペンでおでこを軽く叩かれ、意識が急浮上する。俺は両手を組んで大きく伸びをした
中間考査が再来週に迫る中、ぶるーくの提案により、六人で勉強会をやろうと誘われて学校の自習室にいる
がしかし、誘った張本人は呼び出しをくらって早々に離脱。他3人はというと彼が戻ってくるまでゲームをする、とないに等しい時間設定を設けてパズルゲームに興じていた
まともにしているのは俺ときりやんの2人のみ。かくいう俺も強めの睡魔に襲われていて、ノートにはミミズの這ったような筆跡の方が多い。実質彼しかテスト勉強していないようなものだ
🟨「っは、ノートやばお前」
「どうやったらそんな字書けんだよ」
🟪「いやマジで眠くてさぁ、それどころじゃないんだわ…」
「てか、ぶるーくが提案したくせに本人居ないのおかしくない?」
🟨「それはそうなんだよね」
「じゃあ一旦休憩する?お前も寝るなら今寝なよ、起こしてやるから」
ぱたんと教科書の閉じる音がする。俺は彼の言うとおりにしようと目を閉じた
しかし睡魔とは不思議なもので、こう言われてしまうと眠気なんてものは吹き飛んでしまう
薄く目を開けると、彼はスマホを弄っているらしく、画面をスクロールする親指がかすかに見えた
頬杖から腕を枕にする姿勢に変える。そのまま彼の方を見るとちょうど目が合って、何だと言わんばかりに眉を動かされる
🟪「……きりやんはさぁ、進路どうするの」
「やっぱこの前言ってたとこにするのか?」
🟨「うーん、今のところなんとも言えないんだけど、一応そんな感じで先は見てるね」
🟪「…そうか」
🟨「こればかりはお前と同じにする、とかも無理だもんなぁ。結局は自分の行きたい道に行く訳だしさ」
鈍い痛みが胸の辺りを襲う。もう慣れてしまったこの痛みは、膨らんでは萎むを繰り返していた
そもそも伝えてすらいないのに、あの時ほぼ振られたと言っても過言じゃないのに。今の言葉も、日々の行動も全て友人としての態度なのだから
決して自惚れてはいけない。思い上がるのはよせ。
何度繰り返し唱えたことだろう。それでも些細なことで舞い上がり、勝手な考察でキリキリと胸が締め付けられる。俺はこんなに女々しかっただろうか、と自嘲してしまいそうだった
そんな時に思い浮かぶのはいつも同じこと
相手が俺なら良かったのに
沈む感情に覆い被さるようにして睡魔がやって来る。身を任せて静かにまぶたを閉じた
意識が水面下に降りる前、彼が何か言っているような気がしたが、それを言葉として俺の脳が認識することはなかった
・・・
………重たい
休憩がてらの仮眠から起きた時、初めに感じたのは背中に感じる違和感だった
起き上がろうにも何かがのしかかっている様で身動きをとる事が出来ない。わけも分からず身じろいでいると、ふにゃふにゃの笑い声が聞こえてきた
🟥「あ、起きた?おはよぉ」
「よく起きなかったね、結構体重かけてたと思うんだけど」
🟪「…いつから?」
🟥「ゆーて10分前とかじゃないかなぁ」
「きりやんとずっと喋ってたけど全然起きなかったし」
動けなかった原因はぶるーくが乗っていたかららしい
目だけ動かして時計を動かす。眠ってから20分弱程しか経っていなかった。寝てる時間の半分くらいは俺の上に乗っていたのかこいつは
🟪「…とりあえずどいてくれないか」
🟥「えー!?スマイルの背中温かいし丁度いいからやなんだけどぉ」
🟪「いいから!重いんだよお前!早くどけ!」
語気を荒げて言えば、ちぇ、と言う声と共にようやく背中から重みが消える
姿勢を正せば頭に顎を乗せられる感覚。諦めて彼の好きなようにさせておけば、抱きつくような体制に近い状態でのしかかられた
🟪「…結局重いの変わらなくね?」
「大体さぁ、言い出しっぺが速攻で呼び出されるってどういう事だよ。見ろよ誰もやってないぞ」
🟥「あは、ごめんってばー」
「スマイルそんなに眉間にしわ寄せないでよぉ、せっかくの顔が台無しだよ?」
顔を覗き込まれて眉間をつつかれる。流石に慣れたが、相変わらず距離が近い。パーソナルスペースが狭い訳じゃないが、時折距離感には驚かされる
適当にあしらっていれば正面からの視線を感じた。それも威圧感のある視線
目線をそちらにやれば、同タイミングでスマホに目をやる彼。一見何ともなさそうだが、口はへの字に曲がっているし微かに眉を寄せている
ぶるーくもそれに気づいたらしく、身を乗り出して彼に声をかける
🟥「あれ、きりやん何か機嫌悪くなーい?僕たちに嫉妬しちゃった?」
🟨「……別に?」
「…スマイルも起きたんだしやらね?おい、なかむたちもやるぞー」
⬜「えー、今からいいとこなんですけどぉ」
🟨「…流石に今年赤点はまずいよな?」
⬜「まあ、そりゃあそうだけどさぁ…」
🟨「だよな?ほら ぶるーくも座れ、元はお前が言い出したんだからな 」
🟥「うぇー、わかったよぉ」
半ば無理やり話題を変えたような気もするが、言い分は正しい。文句の声と共にこちらにやってくる3人。ぶるーくも俺から離れて隣の席に座った。やっと背中が軽くなる
集まってから約1時間後、ようやく勉強会が始まった
・・・
⬜「…シャケー、ここ意味わかんない」
🟦「俺もそこ分かんないかも」
🟩「あー、それは──」
もっぱら文系の彼らは数学に頭を抱えているらしい。だがこの人数いれば、誰かの苦手分野は誰かの得意分野に当てはまる
現にシャークんが付きっきりで教えていた。ちらりと様子を伺えば、ノートを見せながら説明する彼とそれを聞く2人の姿が見える
彼の教え方が上手いらしく、時折感嘆と興奮の入り交じった声が聞こえてくる。彼の得意げな顔が見えてくるようだった
その声も目の前で起きている言い合いの声量からすれば小さいものなのだが
🟨「─いや単語は分かるんだけどさぁ」
🟥「じゃあもうすぐだってばぁ!ほらこれポンポンってできるじゃん!」
🟨「それが分かんないから聞いてんだろうがよぉ!」
…先程からこの調子だ。何も知らない人が見れば、喧嘩をしているように見えるだろう。これが通常運転なのだから、慣れとはやはり恐ろしい
半ばキレ気味の彼が面白いのか、腹を抱えて笑うぶるーくを横目に、ため息をついた
🟥「あ!きりやんのせいでスマイルにため息つかれたんですけどー」
🟨「いやいや、お前が適当に教えてくるからだろ」
🟥「ふーん、一生懸命教えてた僕にそんなこと言っちゃうんだ」
「あーあ悲しくなっちゃった、スマイルに慰めてもらお」
そう言って俺に抱きついてくる。さすがに暑苦しい。面倒だからとそのままにしておけば「無視されたぁ!」なんてその体制のまま揺さぶられる。たまったもんじゃない
酔う前に助けを求めようときりやんの方を向いた
何故か彼は不機嫌の色を前面に出していた。ぶるーくとのかけ合いが冗談だと分かる程に目付きが険しい
🟪「きりや─」
⬜「きりやーん!物理教えて!」
🟨「おけ、今行くー」
さっきの機嫌の悪さは見間違いだったのかと思うほど、いつもと変わらぬ調子に戻っていた
俺が再度声をかける間もなく、彼はなかむのいる奥の席へと移動していった
しかし珍しいものだ。冗談混じりで怒ったり拗ねたりする姿は度々見るが、あそこまで機嫌の悪い彼を見ることはほとんどない
さっきも今と似たような様子だった。何が彼の気に触ったのだろうか全く分からない
とりあえず共通点を探してみることにした。とはいえテスト対策をしていたことと、ぶるーくがいた事ぐらいしか思いつかない。別に勉強に水を刺されて怒るような奴でも、友人同士の距離感に対して嫌悪感を抱くような奴でもない
ならば何故?ぐるぐる回る思考に過去の情報がまとわりつく
ドクン、と心臓が音を立てた。考えたくもなかった。だが一度思い浮かんでしまったそれはあまりに辻褄があってしまうように思える
いや、ありえない。でも、もしそうだとしたら─
🟥「スマイル見てこれ」
🟪「っ何、どれ…」
いつの間にか俺から離れていたらしいぶるーくに声をかけられ、意識を現実に向ける
見ると、彼はノートの端っこを指さしていた。大方落書きでもしたのだろうと顔を近づける
書かれていたのは落書きではなく、たった一言
『僕じゃないよ』
なんのことか分かっていない顔をしていたのだろう。その横にまた文が付け足される
完成した文章に、俺は大きく目を見開いた
『きりやんの好きな人』
勢いよく顔を上げる。彼はうっすら微笑んでこちらを見ていた
🟪「……何、で」
🟥「んー、なんとなくそうかなぁ?って」
声を落として問えば同じように声を落として答えられる
彼がいきなり図星をつくことは多々あるが、いざ当てられると衝撃よりも困惑が勝つらしい
🟥 「それに僕きりやんに相談してる身だからね?流石にありえんでしょ」
🟪「そう、か」
「…いや待て初耳なんだけど」
🟥「だって言ってないもーん、嫌じゃね?色んな人にバレるの」
「意外と慎重派なんだよね、僕」
突然落とされた情報に驚きが隠せなかった。彼ならすぐ行動に移していてもおかしくない。それを聞くと「鈍感すぎて気づかれる素振りもない」らしい
🟪「…叶うといいな」
🟥「ま、お互い様だよね」
⬜「なーにがお互い様だってぇ?」
突然伸びてきた手がぶるーくの肩を掴む。声も出ないぶるーくの後ろから、聞き逃さなかったぞと言わんばかりになかむが顔を覗かせていた
⬜「面白そうな話してんじゃん、何?恋バナ?なんで俺も混ぜてくんないの?」
🟨「おいなかむ、まだここ解き終わってない─」
⬜「いやでも休憩大事じゃん?ずっとやってるんだし、ちょっとくらい良くね?」
🟨「まあそう、か…?」
なかむが時計を指さしながら話を続ける。確かに結構な時間が経っていた。むしろ彼は頑張った方だろう、きりやんも納得せざるを得なかったようだ
同じく集中力が切れたシャケやきんときも休憩する気満々でこちらを見ていた
⬜「それで?誰の話してたの?」
🟥「いやぁー?まあ、気のせいなんじゃね?」
⬜「なんでだよ教えろよ!」
「教えてくんないならスマイルに聞いちゃうもんねー」
🟪「え?…ああ、じゃあこっち来てよ」
🟥「ねぇなんで!?」
ぶるーくの焦り具合が面白くてつい笑ってしまう。それからは主にぶるーくが被害者の恋バナやら雑談やらで時間が過ぎていき、それ日は勉強会が再開されることは無かった
会話が進む中、どこか安心している自分がいた。友人が恋敵、なんて悲惨なことにならなかったからだろう
それでも、と心の隅で微かに燻る黒い感情
来年の冬明け、俺は一人の友人を無くすことに変わりは無い
彼の恋が潰えるか、俺がそれまでに綺麗さっぱり諦めない以外に、この事実は変わることは無いのだから
続く