テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#友達
たつ
53
#成長
ももは
551
#地獄
ユーカ
201
冬の夜。
一祟は薬局の袋を手に、静かな住宅街を急いでいた。
妹・琴音のための薬。
一刻も早く届けなければならない。
白い息を吐きながら足を進めていた、その時だった。
路地の奥から、四つの人影が現れる。
まるで待ち伏せしていたかのように。
一祟は立ち止まった。
「……お前が一祟か」
低い声が響く。
黒ずくめの男女。
その瞬間、一祟は悟った。
(この気配……)
ゆっくりと腰を落とす。
自然な動作で構えを取る。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
礼儀正しい口調。
だが瞳は鋭い。
最前列に立つ男が前へ出る。
カイン。
その隣には巨漢のレオン。
妖艶な笑みを浮かべるセリーナ。
そして獣のような眼光を放つダリウス。
「アビス、ですか……」
一祟の表情がわずかに引き締まった。
するとセリーナが優雅に歩み出る。
「私はセリーナよ。よろしくね、一祟くん」
柔らかな微笑み。
その美貌に、一祟はほんの一瞬だけ視線を逸らした。
だがすぐに表情を戻す。
「ご挨拶ありがとうございます」
深々と頭を下げる。
「ですが今は急いでおります」
薬の袋を持ち直しながら続けた。
「通していただけませんか?」
そして静かに言う。
「これ以上は、僕も手加減できません」
セリーナは微笑んだまま片手を上げた。
それが合図だった。
次の瞬間。
鋭い蹴りが一祟の顔面へ飛ぶ。
「ッ!」
一祟は最小限の動きで回避。
同時に反撃の拳を放つ。
だがセリーナは軽やかに後退した。
「あら、速いじゃない」
「風音師範に教わりました」
一祟は静かに答える。
「女性との戦いで油断するな、と」
その瞳には冷たい光が宿っていた。
「甘く見ないでいただきたい」
その言葉と共に、残る三人も前へ出る。
「まずは坊主から潰すか」
レオンが笑う。
「できるならどうぞ」
空気が張り詰めた。
そして四人は、一祟の過去や寺のこと、住職のことまで口にし始める。
心を揺さぶるための挑発。
しかし。
一祟の怒りは叫びにならなかった。
静かに燃え上がる。
「……それを許すわけにはいきません」
風が吹いた。
彼の足元で空気が歪む。
「覚悟してください」
その瞬間。
戦いが始まった。
最初に動いたのはレオンだった。
「術なんていらねぇ!」
巨体が猛牛のように突進する。
重い拳が振り下ろされた。
だが。
「……遅いです」
一祟は軽く身をひねる。
拳は空を切った。
そのまま背後へ回り込み、足払い。
体勢を崩したレオンの顎へ掌底を叩き込む。
「なっ!?」
レオンが大きくよろめいた。
続いてカインが飛び込む。
「隙ありだ!」
計算された絶妙なタイミング。
しかし。
「読めていますよ」
一祟は肘打ちを返す。
カインは吹き飛ばされながら舌打ちした。
「近接も強いのか……!」
その時。
上空からダリウスが襲いかかる。
「ぶっ飛べぇ!!」
鋭い蹴り。
だが一祟は掌を添えるだけで軌道を逸らした。
「焦りは隙になります」
空中でバランスを崩したダリウスが着地する。
そこへセリーナが舞うように接近した。
「ふふっ」
鋭い爪撃。
死角からの一撃。
だが。
「美しい動きです」
一祟は低く回転しながら回避。
そのまま足を払う。
「ですが、それだけでは足りません」
セリーナは地面に着地しながら微笑んだ。
「面白いじゃない」
四人の猛攻。
だが一祟は一度も膝をつかない。
風のように流し。
雷のように反撃する。
まるで自然そのものだった。
レオンが血を拭いながら笑う。
「なら次は術だ」
ダリウスも笑った。
「ここからが本番だぜ」
一祟は静かに構える。
「……では」
風が巻き起こる。
雷光が揺らめく。
「こちらも本気で参ります」
レオンが拳を掲げた。
「轟雷砕!!」
巨大な雷が落ちる。
だが風の障壁がそれを霧散させた。
「何っ!?」
カインが続く。
「断界崩!」
地面が裂ける。
岩塊が襲いかかる。
しかし一祟は空高く舞い上がり、それらを風で吹き飛ばした。
ダリウスの斬撃。
セリーナの連続攻撃。
全てが空を切る。
誰一人として一祟を捉えられない。
やがて。
一祟は両手を広げた。
風と雷が全身を包み込む。
「見せてあげましょう」
静かな声。
「神威風雷――」
轟音。
暴風。
雷光。
嵐そのものが生まれたかのような圧力が四方へ放たれる。
四幹部は耐えきれず後退した。
吹き飛ばされる者。
膝をつく者。
誰も前へ出られない。
静寂。
雪だけが静かに舞っていた。
一祟は深く息を吐く。
「これが――」
風が収まる。
「僕の答えです」
その背後で、薬の袋が静かに揺れていた。
だが。
倒れた四幹部の口元には、まだ不敵な笑みが残っていた。
まるで――
本当の戦いは、これからだと言わんばかりに。
コメント
1件
おお、第45話読み終えたわ!いやもう戦闘シーンのテンポ良すぎない?一祟くんの「読めていますよ」からのカウンター連発がめちゃくちゃ気持ちいい。しかも四人相手に一度も膝つかず、風と雷の複合技で吹き飛ばすとか格好良すぎだろ。最後の四幹部の不敵な笑みも「まだあるのか…」って震えたわ。妹の薬届けなきゃいけないのに、もう一波乱ありそうで続きが気になる!