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#近未来
鳳蓮荘
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#憑依
成瀬りん
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#家族
たつ
53
その瞬間――。
四人の放った技は、すべて一祟の前で空を切った。
雷は届かず。
大地は砕けず。
斬撃は風に流される。
圧倒的な力の差。
それを目の当たりにした四人の幹部たちは、言葉を失っていた。
「……想像以上に強すぎる……」
セリーナが震える声で呟く。
レオンは歯を食いしばった。
「雷も地震も通用しねぇなんて……」
「こんな化け物がいるとは思わなかったぜ……」
カインも苦々しく顔を歪める。
「四人がかりで、この結果か……」
ダリウスは拳を握り締めた。
「全力だったんだぞ……」
「なのに、まるで届かねぇ……!」
誰もが限界だった。
そして――
ついに膝をつく。
カイン。
レオン。
ダリウス。
セリーナ。
四人全員が地面へ倒れ込み、意識を失った。
静寂。
雪が舞う夜道に、風の音だけが響く。
一祟は静かに立ち尽くしていた。
乱れた呼吸を整えながら、ゆっくりと目を閉じる。
戦いは終わった。
その胸には、確かな決意だけが残っていた。
同時刻――ORVAS本部。
監視モニターに映し出された映像を見ていたジュリーが息を呑む。
そこには、一祟がアビス四幹部を圧倒する姿が映っていた。
「嘘でしょ……」
畑中が即座に立ち上がる。
「急げ!」
「現場へ向かうぞ!」
公太と唯我も後に続いた。
数十分後。
現場へ到着した二人の目に飛び込んできたのは――
無残に倒れ伏すアビス四幹部の姿だった。
そして。
その中心に立つ、一人の男。
一祟。
静かな瞳。
乱れのない呼吸。
まるで何事もなかったかのように立っている。
公太が呆然と呟く。
「……お前、一人でやったのか?」
一祟は短く答えた。
「えぇ」
その声は穏やかだった。
だが。
どこか冷たかった。
公太は思わず言葉を失う。
唯我もまた無言だった。
二人とも理解していた。
目の前にいる一祟は、これまで知っていた一祟とは違う。
優しくて。
礼儀正しくて。
誰よりも穏やかな男。
そのはずだった。
だが今の彼は違う。
圧倒的な実力を持つ戦士だった。
戦闘後。
一祟の瞳にはなおも冷たい静寂が残っていた。
ジュリーが思わず口を開く。
「一祟……」
「あなた、一体何者なの?」
風音も息を呑む。
「……想像以上です」
「まさか、ここまでの力を秘めていたなんて……」
畑中は腕を組みながら苦笑した。
「ったく……」
「毎回予想を超えてきやがる」
その時。
一祟が静かに口を開いた。
「住職と……仲間を侮辱されるのは」
「決して見過ごせません」
穏やかな口調。
だが。
その言葉の奥には怒りがあった。
一瞬だけ。
その場の全員が息を呑む。
優しい男だからこそ。
守るべきものを傷つけられた時は、誰よりも恐ろしい。
公太は後ろからその姿を見つめていた。
(……マジかよ)
(一祟……)
(ほんとに俺たちと同じチームなのか……?)
圧倒的だった。
唯我も強い。
だが、一祟はさらに別次元だった。
その後。
一祟は何も言わず、その場を後にする。
向かう先はただ一つ。
妹・琴音の待つ場所だった。
数日後――
ORVAS本部。
戻ってきた一祟を迎えたのは、畑中、ジュリー、風音の三人だった。
畑中が誇らしげに言う。
「見事だったな」
「一人で四幹部を倒すとは思わなかった」
ジュリーも肩をすくめる。
「ほんと反則よね」
「ただの坊主みたいな顔してるくせに」
風音は優しく微笑んだ。
「私の教え子がここまで成長するなんて」
「指導者として嬉しい限りです」
一祟は静かに頭を下げる。
「ありがとうございます」
「ですが、まだまだ未熟者です」
その様子を見ていた唯我が小さく呟いた。
「当然の結果だ」
「……あいつならやれると思っていた」
そこにあったのは嫉妬ではない。
純粋な敬意だった。
しかし――
公太だけは違った。
胸の奥が苦しい。
焦る。
悔しい。
唯我はゼノスを倒した。
一祟は四幹部を圧倒した。
なのに。
自分だけが何も残せていない。
(俺だけ……)
(俺だけ空回りしてるみてぇじゃねぇか……)
誰にも聞こえないように拳を握る。
気付けば、公太は背を向けていた。
畑中も。
唯我も。
その背中を見送る。
だが、あえて呼び止めなかった。
今の公太に必要なのは慰めではない。
答えを見つけることだ。
歩き去るその背中には――
悔しさ。
焦燥。
劣等感。
そして。
誰にも負けたくないという強い意志が滲んでいた。
新たな試練は、すぐそこまで迫っていた――。
コメント
1件
いやー、圧巻でしたね。一祟、想像以上の強さでした。あの優しい口調で「住職と…仲間を侮辱されるのは決して見過ごせません」って言うシーン、ゾクッとしましたよ。普段温厚な人が怒ると一番怖いって、まさにあれですね。それと公太の焦りも痛いほど伝わってきました…。「俺だけ空回りしてる」って感情、すごくリアルで胸が締め付けられました。このチーム、それぞれの成長が楽しみです!