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ラフ・メイカー
涙で濡れた部屋に
ノックの音が転がった
誰にも会えない顔なのに
もうなんだよ どちら様?
「名乗る程たいした名じゃないが
誰かがこう呼ぶ」
「” ラフ・メイカー”」
「アンタに笑顔を
持ってきた」
「寒いから
入れてくれ」
“ラフ・メイカー”
冗談じゃない
そんなモン呼んだ覚えはない
構わず消えてくれ
そこに居られたら泣けないだろう
ルララルラ ララルラ
大洪水の部屋に
ノックの音が飛び込んだ
あの野郎まだ居やがったのか
消えてくれって
言っただろ
「そんな言葉を言われたのは
生まれてこの方初めてだ」
「非常に哀しくなってきた」
「どうしよう
泣きそうだ」
“ラフ・メイカー”
冗談じゃない
アンタが泣いてちゃ仕様がない
泣きたいのは
俺の方さ
こんなモン呼んだ覚えはない
ルララルラ ララルラ
二人分の
泣き声遠く
ドアを挟んで背中合わせ
しゃっくり混じりの泣き声
膝を抱えて背中合わせ
すっかり疲れた泣き声
今でもしっかり俺を
笑わせるつもりか
“ラフ・メイカー”
それだけが
生き甲斐なんだ
笑わせないと
帰れない
今ではアンタを部屋に
入れてもいいと思えたが
困った事にドアが開かない
溜まった涙の水圧だ
そっちでドアを押してくれ
鍵なら既に開けたから
ウンとかスンとか言ってくれ
どうした?
おい、まさか
“ラフ・ メイカー”
冗談じゃない
今更俺一人置いて
構わず
消えやがった
信じた瞬間裏切った
“ラフ・メイカー”
冗談じゃない
逆側の窓が割れる音
鉄パイプ持って
泣き顔で
アンタに笑顔を
持ってきた
ルララルラ ララルラ
小さな鏡を取り出して
俺に突き付けてこう言った
アンタの泣き顔笑えるぞ
呆れたが なるほど 笑えた