テラーノベル
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その招待リンクは、真夜中に届いた。
《転生者限定配信 視聴不可・記録不可》
《観測者も、プレイヤーも》
《本当の居場所を知りたいなら》
画面の向こうで、心臓が鳴った。
「……行くしか、ないよね」
怖くないと言えば嘘になる。
でも、知らないまま強さだけ背負って生きる方が、ずっと怖かった。
指定されたのは、存在しないはずのサーバー。
ログインした瞬間、
視界がインク色に歪む。
集まっていたのは、十数人。
年齢も、見た目も、バラバラ。
でも、全員が――
「転生者、だ」
空気でわかった。
中央に立ったのは、仮面の配信者。
「ようこそ、“闇の配信”へ」
声は落ち着いていて、冷たい。
「ここは、
この世界に馴染めなかった者たちの場所」
巨大なモニターに、数字が映る。
XP、勝率、ランキング。
「才能を持ち込み、
期待され、
壊れた者たちの墓場だ」
胸が、苦しくなる。
最初のバトルが始まった。
観客はいない。
煽りもない。
ただ、勝たなければ存在を否定される空間。
インクが飛ぶ。
動きは、異常なほど正確。
(……みんな、上手い)
でも。
誰も、楽しそうじゃない。
勝っても笑わない。
負けた瞬間、俯く。
「強いのに……」
私は、手が震えた。
私の番が来る。
「XP4550。観測者型」
ざわめき。
「あなたも、
ここに落ちる資格があるか試そう」
……違う。
私は一歩前に出た。
「ねえ」
マイクを掴む。
「これ、誰のための配信?」
一瞬、静寂。
「勝つため?
比べるため?
それとも、前の世界を引きずるため?」
言葉が、止まらなかった。
「私は、
満員電車に文句言って、
友達と笑って、
放課後にちょっとバトルするのが好き」
「それが全部、“弱い”って言うなら」
深呼吸して、言い切った。
「私は、ここには落ちない」
仮面の配信者が、低く笑った。
「……理想論だ」
「転生者は、
普通にはなれない」
私は、首を振る。
「なれるよ」
「だって、私はもう――なってる」
その時。
「……私も」
誰かが、声を上げた。
「私も、
勝つたびに、孤独になるのが嫌だった」
「強いって言われるの、
もう怖かった」
次々に、声が続く。
震えながら。
泣きながら。
闇の配信が、崩れ始めた。
仮面の配信者は、沈黙したまま、
最後に一言だけ残した。
「……そうか」
画面が、暗転。
配信は、終わった。
気づけば、私は自分の部屋にいた。
朝日が差し込む。
スマホには、通知。
ミオからのメッセージ。
《今日、学校遅刻しそう!一緒行こ!》
思わず、笑った。
それから。
闇の配信は、二度と開かれなかった。
転生者たちは、
それぞれの場所に戻っていった。
普通の学生。
普通の配信者。
普通じゃない強さを持った、普通の人。
私は今日も、動画を上げる。
「はいどうもー!ユイです!
今日はちょっとだけバトルして、
そのあと友達と寄り道します!」
《おかえり》
《やっぱこの空気が好き》
《最強なのに、青春》
XP4550。
それは、
私を孤独にする数字じゃない。
誰かと、笑うための力。
満員電車に揺られながら、
私は窓に映る自分を見る。
強くて、
普通で、
青春の真ん中にいる私。
「転生して、よかった」
インク色の世界で、
私は今日も、ちゃんと幸せだ。
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