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むつら
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#パロディ
y

311
悪夢を…見た。悪夢だ、悪夢、悪夢……デエビゴとかの眠剤の類はよく悪夢を見るというが、これはタチの悪い悪夢だ…本当に………
内容は…自分が幸せに生きる悪夢だった。そんなことできるはずがないのに……ただただ笑顔で、一緒にいたい人と一緒にいて…それから、それから……
自分の腕は…すごく綺麗で、足も…切った後の違和感なんてなく、辛い時に時に重圧感を感じて歩くだけでも苦しいのに、軽々と歩いていて……
「っ、すーっ、ふっ…ぅ」
辿々しい深呼吸をする。本来幸せなはずの夢なのに、とても、とても、自分にとっては悪夢のように感じた。
理想の現実、理想の世界、空想の中で傷ついていなかった自分の身体。
自分が幸せになるには、やはり、自分の身体の傷はあってはいけないもの。
こんな行為に手をつけた時点で幸せになれないのは確実だったんだ。手をつけていなくても、どうせ苦しいままだったんだろうが。こんな退廃的で人から距離を置き置かれる排他的な日常生活を営んでいる時点で本当に幸せを目指しているのかはよくわからない。
どのくらい、眠っていたんだろう。深く、充分な睡眠を取れたような感じはしない。寝ても、寝ても、寝足りないというか、眠ったような感じがしないというか……
考えていても意味がないか…
目覚めたらりうくんは、隣にはいなかった。人がいたという温もりは隣から感じず、自分が眠っていた間はりうくんは少なくともベットでは寝ていなかったのだろう。
まだリビングにいるのか。まだ、と言っても時間がわからないからなんとも言えないが…
リビングにいる可能性が高いであろうりうくんを探すために、自身の身体をぐいっと持ち上げるかのように起き、ベットから立ち上がる。
寝起きだからか、それとも貧血なのかわからないが視界がぐわぐわ歪む。足には力が入らない。頭という重しは、制御を保てていないかのように重い。
地面が歪んで見える。視界が白くぼやがかかったように霞む。
しばらく、視界を安定させるために立ち止まり、いつもの良好な視界になれるように待つ。
数十秒待つと視界が完全に元に戻った。
重たい頭を支えながら重たい足を引きずるかのように歩き始める。
どこも悪くないはずなのに、心臓と喉が締め付けられているような圧迫感がある。
悪いとしたら、精神状態か。
リビングに着くと案の定りうくんがソファに頭をもたれかけ座っていた。目を閉じていて、考え事をしているのか、はたまた疲れて寝ているのかわからない。けれど、寝息も聞こえないし、寝ている時の腹式呼吸で動くはずの腹も目に見えるような動きをしていなかったため、おそらく前者であろう。
声をかけるべきなのか、放置しておきべきなのかわからない。
部屋からリビングまで、足音を立てずに静かにきた。このまま声をかけずに部屋に戻ったほうが安牌なのだろうが、また気づかれずに後退りできる自信もない。
そうすると、閉ざされていたりうくんの瞼がゆっくりと開いた。
こちらからりうくんの様子は見えるが、おそらくりうくんの視野には自分は入ってない。りうくんの死角に立っていて、声もかけられないし、その場から動けない。自分だけが今、気まずいという感情を感じている。
「ふぅっ…」
とりうくんが疲れたため息のような息をはく。
やはり、疲れているのか。当たり前だろう。こんな情緒が不安定で、感情も理性も制御できずに、自分も他人も傷つける行為をしているやつの対応をして……こんな自分がつくづく嫌になる。
昨日はあんなに、いや、昨日の前半は楽しく遊んでいた、なのに……
あの行為がバレた瞬間全てが終わった、と理解していた、全部諦めるつもりでいた。そのはずだった。
だが、実際に死にたい死にたいと思っていても、本能というのには逆らえないもので、死ねるわけではない。死にたくないという感情が芽生えるわけでもなく、ただただ死にたい。苦しい、ただ、苦しいだけ。こんなの生きてて何の意味があるんだ。それを考え始めたらキリがないということを毎回考えを放棄した後に思い出す。けれど、考えている間は苦しくて、考えがまとまらないからいつまで経っても頭がごちゃごちゃで、そのことを思い出せない。
そう、また無駄なことを考えているとりうくんの顔の正面がこちらに向いた。
「あっ………」
「…?もう起きたの、?それとも寝れてない?」
「いや、寝てたけど、さっき起きた」
「そっか、おはよ」
「おはよう…」
昨日酷いことを言った自分をまだ気にかけてくれるりうくん。もちろん善意なはずだし、そう信じたい。だが荒んだ自分の心では、一応立ち位置的には友達だから慰めるのが普通だろうという倫理観での行動なんじゃないか……他人を助けることで満たされる欲求的なもので行動しているのではないか……とか最悪な考えにどうしても至ってしまう。そんなこと、りうくんが考えているはずないのに。そんなこと思いたくないのに。自分からりうくんを疑っているくせに、「思いたくない」だなんて……自分が傲慢の化身のようでつくづく嫌になる。
いっそのことその化身になれたら良いのか。こうなってしまったのは自分のせいではない。あの時便所に来たりうくんが悪い、見つけた方が悪い。俺は見せるつもりなんてなかったし、嫌だった。でもあいつが無理やり。
そもそも、こんな行為をしてしまったのも自分のせいではない。周りの人間が、取り巻く環境が、自分を産んだ親が、全部悪いのではないのか。原因なんて自分でもわからないが、その全てからストレスを与えられていたのなら、どれか見分けがつかないのかは当たり前だろう。
なんてまた無駄なことで頭の中を詰まらせてしまう。もう、何も考えたくないくらいには頭の中はパンッパンに情報や考え、そして感情が入っているのに考えるのをやめられない。思考が停止してしまうほど驚く出来事でも起きればな、それも一時的な救済にすぎないかあ…意味なんてない
「………ぁ…ゅー」
考えていたせいで忘れていたが、自分が傲慢の化身になりきって思考をしていた瞬間……とても醜かったな。こんなになりきってあんなことを考えられるのなら、もしかしたら砕け散りそうな心の奥では、爆発しそうな頭の片隅では、こんなことを密かに思って考えていたのかもしれない。自分が自覚していないだけで。いや、今自覚したのかもしれない。
「……ましゅー…?」
「、あ……?」
気づいたら目の前には自分の顔を覗き込んで見ているりうくん。その顔は疑問と不安が入り混じったなんともいえない感情と思考を表していて、そしてそんな顔になっている意味がわからなくて、自分の中にも疑問と不安が押し寄せる。
「びっくりした、何回か名前呼んだんだけど、上の空だったから……」
「え、まじ…か」
「まじまじ」
どうやらいきなりではなく、こちらが気づいていなかっただけだったようだ。なのに、こちらが被害を与えられたみたいなスタンスで考えてしまって…またか、また被害者ヅラかよ。傲慢の化身は引退したんだからもう他責はやめよう。ほんとうに。引退というかそもそも就役していない。あーまた馬鹿みたいなこと考えてる。もうやめよう。だって意味なんてないんだから。
「で、話変わるけど、俺ましゅーが寝てる間考えたんだ」
「うん」
「あー、けど説明すんのめんどくさいし、あとましゅーと決めることのほうが多いからなー」
「…うん?」
「あ、じゃあこうしよう。俺一旦飯食ったら帰るから。その後のことは帰ったら通話で決めよ。」
「ん、?その後…?」
「いやだから一緒に住むって話」
「いやあれまじなの?」
「まじまじ」
「考えてたって、二人暮らしのことを?この時間?まじで言ってんの?」
「まじまじ」
「やかましいわ」
こいつ正気かよ。いや正気ではないのは自分のほうなのだが。こちらの自宅もあちらの自宅も2人が同時に配信できるほどのスペースはない。スペース自体は取れるかもしれないが、りうくんは実写配信もしてるから自分の様子が映ってしまうだろう。そもそもスペース以前にブレーカーが落ちる。ブレーカーはプランを変えればいい話だが、わざわざそこまでするか?もしや、2人で同棲用の家を決めるための通話とか?いやカップルかよ気持ち悪い。
人目が気になる毎日でも、友人は別で、楽しく話せる存在のはずなのに絶対に他人にバレてはいけない行為がバレてしまうという最悪な失態を犯したせいで友人であるりうくんとも話すのが少し気まずいのに、一緒に住むだなんて正気の沙汰じゃない。
早く帰ってくれ。そして忘れてくれ。今の会話も、昨日作った思い出も、昨日の失態も。全部全部忘れてくれないか。そのガキ単純な脳みそを適切な時に無能にしてくれ。ガキ特有の察しの良さとタイミングの悪さはいらないんだ。
早く大人になってくれ。大人になったらこんな面倒くさいことせず、見なかったことにして、自然と距離を置くはずだ。こんな意味のない慰めや同情や配慮はもう救済措置ともとれない。全てが苦痛に見えるのだ。
人に助けてもらう、頼るということを前提とした生き方はしていないし、そんなことをしてもらう、するほど低いプライドも持ち合わせていない。人に助けてもらうという行為は恥ずべき行為だ。自分の無能さを曝け出し、他人の時間を割き、労力を充ててもらう。そんな恥ずかしいことをするくらいなら、死んだ方がマシだ。
まずまず他人の能力なんて自分が見えているものでしか推し計らえないのだから、もっと助けてもらうために適任の人材がいるのに見逃してしまうこと、その反対で適任かと思いきや思わぬ無能さが隠されており適任と誤認してしまうこともあるだろう。助け舟をもらってその舟が沈んだらどうする。自分は助からず、相手は自分の無能さを自覚して羞恥心を感じるだけ。だから無闇に人に助けを求めない方がよい。自分を助けられる方法だなんて自分が1番わかるはずなんだ。
なんてただプライドが高いだけのくせに無能だった可能性を考えてなんとか回避しようと考える自分が醜すぎる。あぁ、1番の無能は今りうくんを困らせている自分なのに。
「じゃ、そういうことだから」
「はぁ……」
「拒否権なし。あと普通に自炊できないから作って。ましゅー料理うまいでしょ」
「いや趣味ってだけで毎日作ってるわけじゃないから」
「てか飯作んのめんどくさいだけだろ」
「いやそんなことないけどw」
「笑っとるやん」
あーあ、なんか面倒なことになってしまった。りうくんと住むこと自体は別に嫌ではないが、自分を支えているあの行為を規制されて、いや禁止されて、陰でしないように監視もされる。それだけが嫌だ。あれをしないと自我が保てない気がする。自信がない。りうくんと本当に住むことになってもりうくんに当たって関係性が拗れて終わる気がする。というか、もう拗れているような気もするが、りうくんはそうは思っていないのだろう。拗れた人間関係はすぐに手放すタイプの人間だから。
「はい、じゃあ腹減ったから飯作って」
「顔洗ってからね」
「まじはやくー」
朝起きたときと変わらず重たい足を動かし、洗面所へと向かう。顔さえ洗うのがだるいし、面倒くさい……りうくんさえこの場にいなければ別に顔洗わなくてもよかったかな。
りうくんさえいなければ、だなんて、、なんて醜い感情なんだろう。全部自分のせいなのに。自分がりうくんに当たったのが悪かった。りうくんに見つかったのが悪かった。リスカをしたことが悪かった。全部全部自分が悪い。
そうだ、全部自分が悪いんだ。自分さえまともであれば、自分さえいなければ、りうくんに迷惑をかけることもなかった。
自分が死んだらりうくんが悲しむことは理解してる。理解しているが自分が最初から存在しなければそもそも死という概念も生という概念も存在しなかった。自分を悲しむ存在さえいなかった。最初から存在しなければ……
なんてことを考えてももう生まれてしまったのだから意味なんてやはりない。さっさと顔を洗って飯を作って少しでも無能を回避しよう。
いつものように洗顔を手に取り、泡を満遍なく顔につけ、水を両手で掬って洗い流す。そのあとはいつも通り持ち合わせの化粧水やクリームで適当にスキンケアを終わらせる。
少しブラシで一般男性よりは長め、女性で言うボブくらいの長さで、寝返りなどで少し絡まったであろう髪をとかしていく。自分もそれなりに身だしなみに気を遣っているため、りうくんと同じくらい、もしくはそれ以上には綺麗でサラサラな髪をしている自身がある。何もしてなさそうなのにりうくんがあそこまでサラサラなのは何故なのだろう。
昨日の晩、手ぐしで撫でるようにりうくんの髪を乾かしていたのは、少し楽しかったかもしれない。自分の髪を乾かす時間は長いのもあり面倒だが、あの時間は少し心地が良いような感じがした。またしたいかもしれない……ってもし同棲したらやらされる可能性が十分あるな。したいとは口が裂けても言わないようにしよう。髪を乾かすマシーンにされてしまう。
身支度を終わらせたので言われた通り飯を作る。冷蔵庫にある食材で適当にりうくんが朝に食っても重たくなさそうなものを作ろう。正直日常的に生肉を食いに行ってるツイートをしている強い胃の持ち主のりうくんには関係ないかもしれないし、足りないだなんて言われる可能性があるが、こっちはりうくんより年齢も上で、胃が弱く、お腹が痛くなりやすい軟弱体質なんだ。自分を優先させてもらう。
ん〜、おそらく腹持ちが良く胃に負担もないのは和食だが、1番手っ取り早く作れるのは洋食だな。食パンもあるし、ベーコン、卵もある。この材料だと、理想的な朝の食卓が思い浮かべられるが、脂がなあ……重たそう
いやでもいちいち考える時間と調理する時間で食事に時間をかけるのも馬鹿みたいだしなあ、洋食にするか。一応りうくんに聞いてみるか?ん?どっちでもいい!早く作って!とか言いそうだが。
「りうくん?」
「んー?なにー?」
「和食か洋食どっちがいい?」
「えー、食べれればどっちでもいいかもー早く作ってーお腹すいたー」
「はいはい」
予想通り。斜め上の、和食!という回答にいくこともないようで逆に安心した。いつものりうくんだ。
作り終わり、食卓に皿を並べ、りうくんを座らせ、手を合わせ、食う。
「ん、うま!」と朝の元気さとは思えないような声を出す。
それと正反対に、トーストにかじりついて、胃の不快感と、これ以上食べることに不安感を抱く自分。これ以上に対極なものがあるのか。
りうくんに、ベーコンと目玉焼きが乗っていて、サラダだけが自分の胃の中に消えたプレートを差し出す。
「あんまお腹すいてないから、あげる」
「ええ〜!?いいのぉ!!やったー!!」
「ましゅー朝はちゃんと食べないとだめだよ??まあ、俺が食べるけどね」
そう、ニッコニコの笑顔で喜んで、残り物を食べてくれた。こいつは純粋に自分が与えられた飯だけだったら腹が満たされていなかっただろうし、自分は食べきれなかっただろう。Win-Winの関係だ。
「ん、ごちそうさま!」と食器を片付け始めるりうくん。そういうところはしっかりしてて、ガキではないなって思う。それで食器も洗ってくれたら完璧なんだが。
「それじゃあ帰るから、通話するんだから配信すんなよー」
「はいはい」
「はあ、」 と短いため息がでるほど心身ともに疲れた気がする。あーけどこれから二人暮らしをするための通話もするんだ、、気が重い、体も重い。
起きたときより精神状態はマシになったな、と自分でも自覚できるレベルには精神も思考も安定している。りうくんの同棲しよう!とかいうバカみたいな発言で毒素を抜かれたような、そんな感じがする。
通話するときまでこの精神状態が保たれるかはわからない。保たれてるといいなあ、という期待と希望を微かに抱えて、キッチンの食器を片付け、途中だった編集作業に取りかかった。
コメント
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うわ、めっちゃ重いけど……読んでて息苦しくなったわ。 悪夢の描写とか「理想の自分=傷のない自分」っていうの、グサッときた。それでいてりうくんの能天気な「まじまじ」連発に思わず笑っちゃったし、この温度差がまた沁みるんだよな。 「全部自分が悪い」ってループしてるましゅーの思考、読んでてしんどいけど、でも最後に「毒素抜かれた感じ」って言えるようになったのが救いだよ。りうくんの無神経そうで実は真っ直ぐな距離感、結構好きだわ。 続き気になる〜!