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「な、なんだ……?」
「誰?」
ざわつく一同の声で騒ぎに気付いた凛が、モニターから視線を外し、女性の方へとゆっくりと歩み寄った。
「……あぁ、すまない。 新しいクリエーターが見つかりそうだったので、実際に操作できるか確かめて貰っていたんだ」
「なんだ、御堂さんじゃないですか。びっくりした……。って、新しいクリエーターさん見付かったんですか? よかった」
凛の言葉に女性は一瞬、目を見開くとすぐに表情を崩して心底ほっとしたように表情を崩した。
「あぁ。普段はアクターとして動いて貰うが、合間でこっちの仕事も手伝って貰おうと思っている」
「棗雪之丞です。よ、宜しくお願いしますっ」
凛の紹介に合わせるようにペコリと頭を下げると、彼女はにこりと微笑んだ。
「二階堂です。よろしくお願いします! 判らないことがあれば聞いてくださいね。と言っても、私もぜんっぜんわからなくって。ほとんど奈々先輩がこなしてくれていたから」
「奈々先輩?」
「あぁ、メインでグラフィックから音響迄全部やってくれていた先輩です。 一週間くらい前に無断欠勤し始めてからずっと連絡が取れなくって……御堂さんが新しい人を連れて来たっていう事は奈々さんまだ、見付かってないって事ですよね……」
「あぁ。部屋はもぬけの殻だったそうだ」
「そんな……。無断欠勤するような人じゃなかったのに、どうして……」
「……」
悲し気に俯いた彼女の言葉に、その場にいる誰も答える事が出来なかった。
「悲観しても始まらんだろう。ある日突然戻って来るかもしれん。この件に関しては彼女の実家の方にも連絡済みだ。最悪の場合行方不明事件として捜査の手が入る可能性もある」
「奈々先輩死んじゃったんですか!?」
「それは何とも言えんな」
「……信じて待ちましょう。御堂さんの言うように、もしかしたら突然戻って来るかもしれませんし」
「っ、ひっ、ああっ! 草薙弓弦!? ひえええっ、本物!?」
弓弦がポンと肩に手を置くと、目が合った瞬間、さっきまでの悲壮感漂う表情は何処に言ったのかと言わんばかりの顔で、彼女は飛び上がるように驚いて声を上げた。
「やばいね、草薙君効果」
「ハハッ、流石有名俳優。一瞬にしてあの子の目をハートにさせちゃったよ」
一連の流れを少し離れた所から見ていたナギと共に、思わず失笑が洩れる。
「嘘ッ! ナギ君も居る!!! しかも、横に居るのって御堂、蓮さん!? イケメンばっかり……ど、ど、どうしよう」
二人の存在に気付くと今度は二人に視線が集中した。どうやら彼女の中で二人はかなりの有名人のようだ。 正直、自分も認知されているとは思っていなかったので正直驚いた。
「あ、あのっ! 奈々先輩が蓮さんのファンだったんです! サイン貰えませんか!? 戻ってきたら渡してあげたいので」
「えっ? 僕のサイン? ……まぁ、いいけど……」
第2話の台本の裏表紙とサインペンを差し出され、躊躇いながらも書いていく。
弓弦やナギじゃなくて良かったのだろうか? なんて思ったが、失踪した彼女にあげたいと言われれば仕方がない。
「お兄さんの事知ってるんだ……ふぅん。よかったね、可愛い子にイケメン認定されて。嬉しいでしょ?」
書き終えて、それを嬉しそうに抱きしめながら、凛と今後の事について話を始めた彼女を眺めていると隣にいたナギがニヤリとした表情を浮かべながら、肘をつついて茶化してきた。
「……はぁ、何を言ってるんだ。僕が女の子に興味持てない事知ってるくせに」
それを呆れたように返しつつ、ロボットの合体シーンばかりが繰り返し映し出されているモニターに視線を移す。
どこからどう見ても、第一話で見た再現シーンとクオリティは遜色ない。
さっきの短時間でこれを引き出して来るあたり、やはり雪之丞の技術は相当なものだと改めて実感する。
当の本人は、やはりどこか自信なさげで猫背がさらに丸くなり不安そうな様子だったが、きっと彼なら大丈夫だろうと確信めいた思いがあった。