TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「はーい、今日もお疲れ様でした!」


「「お疲れ様でした!」」


時間は19時過ぎ。

ルークとエミリアさんも宿屋に戻り、私たちは夕食を囲んでいた。


「今日はどうでした?」


私の質問に、最初に答えたのはルークだった。


「私は武器屋の方に行っていたのですが……ちょっと色々ありましたね」


「色々?」


「はい。武器屋がある通りで騒ぎがありまして……」


「騒ぎって、もしかして爆発事故?」


「いえ、そういうのではなくて……。

子供と大人が揉めていたんです」


「へぇ……?」


……んん?

子供をいじめる大人……ってこと?


「大人の方は、感じの悪い大男でした。

仲裁に入って話を聞いてみると、その子のおじいさんが鍛冶屋をやっていて、それを大男に笑われたのだとか。

ナマクラな武器しか作れない、腕の悪い職人だ……と」


「はぁ……。

その人も大人げないね」


「子供に難癖付けるなんて、大人失格ですね!」


私の言葉に、エミリアさんも同意してくる。


「結局、その子をおじいさんの鍛冶屋まで送って行くことになったんです。

その後はそこで、色々と武器を見せてもらいました」


「そうなんだ? 何か良い武器はあった?」


「いえ、見せてもらったものは少し特殊な武器だったんです。

いわゆる魔法剣士……という方用の武器でして、魔法なしで使うとナマクラと呼ばれても仕方ない斬れ味なんです。

ただ魔法を乗せてこその武器なので、それを考えれば素晴らしいものでしたね」


「魔法剣……! そういうのもあるんだね」


「はい。剣に魔法を乗せる際、魔力が流れる経路を作ると、その伝わり方に無駄がなくなるんです。

もちろん普通の武器にも魔法は乗せられるのですが、魔力の消費がどうしても大きくなるんですよね」


「それって、魔石スロットにも通じるところがあるんですよ」


エミリアさんが、ルークの話に乗っかってくる。


「魔石スロットって、単純に武器にくっついているわけではないんです。

構造的なところを言いますと、魔石スロットの部品から植物の根みたいな感じで、武器本体に向けて力の経路が伸びているんです。

それは魔石スロットが多いほど複雑になるので、作るのも難しくなって、それで高価になっちゃうんですよね」


「へー」


「だから、アイナさんの持ってる魔石スロット5つの杖っていうのは……それだけでかなりの値打ちものなんですよ」


「な、なるほど……。

アイーシャさんに、改めて感謝をしなければ……」


「逆に言えば、それをもらっちゃえるほどアイナさんが良いことをした……ってことなんですよね。

わたしも、そのアイーシャさんという方にお会いしたかったです」


「そうですね、機会があれば――

……あるのかな? もしあれば、紹介させて頂きますね」


「うぅ……、クレントスの方なんですよね?

機会は無さそうですが、もしあったらよろしくお願いします……」


エミリアさんはしょんぼりしながら、サラダをつつき始めた。


それにしても、魔法を乗せる剣……か。

加えて、魔力が流れる経路――


……何だか、神器を作るときにも関わりそうな情報じゃない?

神器は色々な力を宿しているから、もしかしたらそっちの知識も必要になるかも……?


でも私は『工程省略<錬金術>』があるし、そこら辺は飛ばせるのかな……?


――ああ、もう!

スキルは持ち合わせているのに、知識が追いつかないこの歯痒さ!


「ねぇねぇ、ルーク。

私も機会があれば、その魔法の剣……の鍛冶屋さんに行ってみたいなぁ」


「興味がおありですか?

それでは、依頼を受けなかった日にでも寄ってみましょう」


「うん、そうだね。そのときは案内をよろしくね」


「はい」



「――それで、エミリアさんはどうでした? 今日は何かありましたか?」


「はい。今日はばっちり勝ちました!」


……勝った?


「え? 勝ったって――」


「……!!

あ、いえ、ばっちり買いました!」


え、あれ? ……聞き間違えたかな?


「そうなんですか? 何を買ったんですか?」


「えっと、服を――

あ! いえ、本を買いました!」


……どっち?


「服は――」


「服は買ってません!」


「そ、そうなんですね? それじゃ、本を買ったんですね」


「はい、本を買いました!」


……何か怪しいんですけど? ……まぁいっか。


「ちなみに、何の本を買ったんですか?」


「この辺りの伝承に関する本です」


「へー」


私が興味を示すと、エミリアさんは鞄の中から小さな本を出して見せてくれた。


中を見てみると、やはり鉱石や宝石、鍛冶に関することが多く載っている。

ちなみに本の中身はすべて手書きで……割と薄い本だけど、それなりの値段はしそうだった。


「なるほど、色々載ってますね。

まさにミラエルツ、って感じです」


「そうなんです!

土地に根差した文化や伝説を調べてみるのも面白いものですよ」


「ふむふむ、確かに。ところで今日は、ずっと本を見ていたんですか?」


「え? ……あ、そうですね。

後は聖堂とかに寄って……はい、そんな感じでした!」


「なるほど……」


「それで、アイナさんは今日は何をしていたんですか?」


エミリアさんの話が終わると、そのまま話題がこちらに向いてきた。


「鉱石の関係ということで、鉱山に行ってきました」


「鉱山ですか? アイナさん、鉱石が好きですね……」


「いえ、エミリアさん。アイナ様は勉強熱心なのです」


ルークがしれっとフォローしてくる。

でも今はそういうの要らないから……あ、いや、鉱石好きと言われるよりはマシか。


「それで、中には入ったんですか?」


「はい。最初は外で見ていただけなんですが、崩落事故が起きまして」


「「え!?」」


「それで怪我人が出たので、ポーションを出してお手伝いしました。

生き埋めになった人を助けたりもしましたよ」


「ははぁ……。何とも凄いことをしていたんですね……」


「さすがアイナ様。お休みの日にまで人助けとは……」


エミリアさんは驚き、ルークは何やら感動している。

いやいやルーク君。そこは感動するところじゃないよ? ただの偶然だからね?


ちなみに大雑把に話してしまったけど――

……ナイフで斬り付けられたことは、言わない方が良いよね?

話が大きくなってしまいそうだし。


「それと……崩落が起きる直前に、坑道の奥で爆発音がしたんですって。

冒険者ギルドの爆発事故と、何か関係あるかも……って話が出ましたね」


「だから私の話のときに、爆発事故のことに触れられたんですね」


ルークはなるほど、といった感じで頷いた。


「何だか物騒な話ですね……。

でも、アイナさんが巻き込まれなくて良かったです」


「そうですね、ひとまず無事に戻れて良かったです。

……あ、そうだ。その鉱山で、ジェラードさんが働いていたんですよ」


「え? ジェラードさんって……この前、ルークさんが退治した男性ですか?」


「変なことはされませんでしたか?」


ルークは真面目な顔でこちらを見てくる。

……もう、心配性なんだから。


「ううん。真面目に仕事をしていたし――」


……それに、襲われたときには助けてくれたし。

おっと、これは言わないでおこう。


「帰りはここまで送ってもらったんですけど、ずっと静かでしたね」


それを聞いて、二人とも『え?』という表情を浮かべた。

……うん、気持ちは分かるけど。


「その後は、自分の部屋で錬金術のあれこれをやってましたね。

それで――」


「ふむふむ」


「……あ、いや。

食堂ではしにくい話だから、後で私の部屋でお話をさせてください」



……ここからは、軽いノリで作ったダイアモンド原石の話をしないとね。

でも、食堂なんていう人の多いところでする話ではないから、部屋に戻った後ですることにしよう。

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

51

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚