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僕の過去は、決して語りたくない記憶の塊だ。
子供の頃、家はいつも怒号が飛び交っていた。
父の暴力は日常で、母の泣き声は壁を震わせた。
学校では孤立し、誰にも心を開けなかった。
小さな胸に溜まった不安と絶望は、
いつしか心の奥底で黒く澱んでいった。
「お前なんかいなければいい」
繰り返される言葉は、刃のように刺さった。
それでも僕は、笑顔を作り続けた。
誰にも心配かけたくなかったから。
だが、心は壊れていった。
傷ついた僕は、気付けば逃げ道を探していた。
薬があの時の僕の唯一の救いで、
眠りも、感情も、現実も麻痺させてくれた。
今も時々、夢に現れる。
あの恐怖と孤独の夜が。
けれど、それを越えなければ、前には進めない。
僕は知っている。
この過去は消えないけど、
ここから始めることはできる。
僕が一番暗いトンネルの中にいた頃、
救いは思いがけない形でやってきた。
学校で孤立していた僕を、いつも気にかけてくれたのが涼ちゃんだった。
彼はクラスのムードメーカーで、いつもニコニコしているけど、
その明るさの裏に、誰よりも強い優しさを持っていた。
ある日、教室で一人ぼっちの僕に話しかけてくれたのが涼ちゃんだった。
「元貴、今日一緒に帰らない?」
その一言が、凍りついた心を少しだけ溶かした。
そして若井もまた、僕の側にいた。
彼は無口でちょっと怖い存在に見えたけど、
誰よりも僕のことを理解してくれていた。
二人はいつも一緒で、僕にとって初めての“家族”のような存在になった。
彼らがいるだけで、どんなに暗い日も、
少しだけ光が差し込んだ気がした。
でも、僕の心の闇は深くて、
その関係を守るのも簡単じゃなかった。
それでも彼らは離れなかった。
涼ちゃんの明るさと若井の強さが、
僕を支えてくれた。