トーナメントは競技場で行うらしい
それも人間と魔族は分けられる
それもそうだ、人間と魔族じゃ種族としてのポテンシャルが圧倒的に違う
人間と魔族…それもニンフとかと当たれば、きっと人間はひとたまりもないだろう
差別をなくそうとは言うが、流石にこればかりは人間側の命が危ない
とりとめのないことを考えながらトーナメント表を見る
たく「お…」
第一回戦は…うたくんと…ニンフの試合か…
たく「見ものだな…」
うたside
半負けで終わった二次試験の後
うた「彼奴は…」
ずっと頭にこびりついて離れない
猫の獣人の彼奴
たくぱん
獣人の中でもトップクラスに弱いとされている猫でありながら
豊富な知識を盾にその体を余すこと無く使い切り
難易度が高い風魔法を使いこなす彼奴
それに、少し前に失踪した旧友に似ている
ヤトナタクセ・ヘグパンカ
うた「…ヤトナ…」
最上級悪魔だった彼奴は、俺なんかよりもプレッシャーがあったはずだ
俺は…はるてぃーとトップに立つ
そしてヤトナを助け出すんだ
そのためにも、まずはこの学校に入学しなきゃなんだが…
うた「第一回戦目なんてついてね〜」
しかも噂によれば相手はニンフ…
初っ端からハイレベルなバトルが見れるとオーディエンスが湧ききっている
正直言って目立つのは勘弁だ
うた「適当に勝つかぁ〜…」
両者が競技場の真ん中に立つ
眼の前には際どい服装の精霊が居た
うた「……」
はる「うたくんメガネ光ってる」
うた「うるせぇうるせぇ…ってはるてぃー?」
こいつも試合だろうになんで…
はる「俺第三試合から」
なんだ。今はただの見物人か
うた「邪魔すんなよ」
はる「邪魔しないから負けんなよ」
間髪入れずに答えられ、少し言葉が詰まる
うた「…負けると思うか?」
はる「相手が色仕掛けに出たら」
それは負けるわ、と巫山戯た態度で返す
はる「まぁ勝てよ〜、俺も勝ってるから」
じゃ、とひらひら手をひりはるてぃーが去っていく
あの様子なら相当自信があるようだ
うた「まぁ負けたらこっちの面子が立たないよな〜」
いっちょ…やりますか
結果は俺の圧倒的勝利
正直言って雑魚だった
……たくぱんの事もあったから不安だったが…意外とこんなもんなのか?
うた「考えてもしかたねぇか…」
無事二回戦進出ってことで…はるてぃー見に行きますかねぃ…
はるてぃーside
うたを少し煽ってから、再び対人間のフィールドに戻ってきた
コロッセオのような形をした競技場は吹き抜けの天井で
明るい空が俺を祝福するように照らしてくれる
少し心持ちなのはさっきの二人組
山田も勿論強い、雷魔法をあんなふうに使って炎対策をしてくるやつは初めて見た
最初の方に当たるともしかしたら負けるかもしれない
あいつには何処か普遍的な常識が通じない感じがする
まるでそんな物傍から知らないような
常識が通用しない世界で生きてきたような
そんな異質さを感じた
だがもっとおかしいのはたくぱんの方だ
実際に戦ったからわかる
あれは猫の獣人なんかじゃない
確信できてしまうほどには、あいつは強すぎた
自販機で買った缶ジュースを片手に物思いにふける
そのまま始まった試合
紫髪のひょろそうな少年が出てきた
相手はいかにも悪そうな風体の男
図体も違うし、悲惨に負けちゃうかもなと思った瞬間だった
息を吐く間もなく男は組み伏せられていて、その上に紫髪が足を組んで座っている
はる「‥うそだろ…?」
会場全体にざわめきが走る
皆何が起こったかわかっていなようだったが
俺は見逃さなかった
まず始まった瞬間に首元に指をやった
首筋、、いや、血管か?そこに指を打ち込み
すぐに足を払っていた、男は起き上がることもなくその上に紫髪が座り込む
この一連の流れを一瞬で終わらせた
トーナメント表をポケットから取り出し名前を確認する
月城優真
はる「おもれぇな…あいつ…」
紙を握りしめて笑う
あいつの魔法は?そのスピードはどこから?
知的好奇心が止まらない
脳内のメモに名前を焼き付ける
後で話しかけに行こう
たくぱんside
代何回戦か
いつの間にか、合格者はもう決まりきり、あとは順位を決めるための消化試合となってしまった
まぁそれでも会場の熱の持ちようは変わらないのだが
結果的には俺と山田は合格圏内
ほぼほぼ首席だ
あいつにとっては一次試験が一番の難所だったろうな
適当に買った缶コーヒーを片手にそう思う
下を覗くとゴツい筋肉質の男と甲冑を身にまとった…どっちかはわからないがおそらく男が対峙していた
あの二人には見覚えがある
確か…
たく「ギメールと‥ヘズカ…」
あの二人も居たのか
ギメールは
俺の武術の指南役だった男の息子で吸血鬼
家にこっそり忍び込んではよく俺を連れ出して遊んでくれた
そしてそのギメールの友達がヘズカ
機械族という人造人間やアンドロイドに近い存在
ふたりとも面白くて、明るくて、ずっと救われていたっけ
懐かしい姿に目頭が熱くなる
慌てて瞼を強く擦って、二人を見る
二人ともすごく強くなっていて、オーディオンスも完全に湧いている
一癖も二癖もある能力を使いこなし、なんなら観客のためにド派手な技まで使いだして
生粋のエンターテイナー
まるで競技場が彼奴等だけのステージみたいで誰もが惹きつけられるような戦闘
気づけば鼻歌を歌いながらその戦いに見惚れてしまっていた
山田side
なんとか終わった三次試験
窓ガラスの破片が散乱し、冷たいコンクリの床、くたびれたベッドしか無い我が家に変える
山田「あ”〜つッッッかれたぁ〜…」
たく「流石にきつかったな…今日はもう寝るか…」
そう言ってベッドに座り込んだたくぱんがベッドを丹念に撫で始める
こいつなんだかんだ図々しいよな…
たく「山田…」
神妙な面持ちで此方に向かって、あいつが言う
たく「俺等ここで暮らすのやばくねぇか…?」
沈黙
山田「…あ?」
急になんだコイツと半ギレで突っかかると
たく「いや、俺等一応青拓生になるわけで…」
山田「おん」
相槌を打ちながら話を急かす
だから何なんだ
たく「よくよく考えたら、住所不定、寝床不法侵入先、親なし、金無しって…」
たくぱんのその言葉で一気に血の気が引いていく
正直言って、高校生でそのステータスは色々とやばい
さすがの俺でもわかってしまう
山田「…バイトか…」
たく「あ、身分証明書とかもない」
どんどんと露呈する状況の悪さ
山田「…!!!どうしろっつってんだよ…!!!」
二人狭いコンクリの部屋で頭を抱える
たく「とにかくだ、ひとまず家と金と身分証明書がいるな、親は諦めるとして…」
ブツブツとつぶやき出す
最初はまともなことを言っているがどんどんと支離滅裂になっていく
かくいう俺も正直考えきれていなくてどうも頭が回らない
たく「偽装か…?俺が作ってデータを全て…よし」
一人納得して此方に向き直ってきた
たく「ひとまずは!俺がどうにかするから!!山田!一旦寝よう!」
でかい声で溌溂と言うたくぱんには焦りが見え隠れしていて
どこか危なっかしい
山田「せやな!考えてもしゃーないし!」
正直言って考えたくなかった俺はそれに明るく同調する
明日のことも、何もかもがノープラン
やっていけるかは心配だが、俺にできることはもう無い
せいぜい、学校のためにまともな風体を目指すぐらいだ
その日は、さっさと眠ってしまった
コメント
4件
相変わらず神作だわん.....
やば好きすぎ 🤦♀️ 最高 !!