テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
面倒臭い手続きや報告やらをなんとかこなし、1週間後。
涼ちゃん無事復帰!…から怒涛の日々が戻ってきた。
一旦俺達も二人でできることだけで停滞していたが、やっと3人で走り出すことが出来た。不安と葛藤、そして少しのわくわくが、なんだかフェーズ2が始まった時みたいだ。
でも、確かに違うのは、終わりがもうすぐそこにあるということ。
そんな寂しさと共に、今度は君が真ん中で、2人で手を引きながら進み始めた。
◻︎◻︎◻︎
「これにて、記者会見を終わらせて頂きます」
と、元貴が良い深々と礼をする。僕と若井もそれに習い礼をした。フラッシュ音が鳴り響く。別にやらかした訳ではないので、罪悪感というより申し訳なさの方が多かった。もし僕が天使病なんてかからなければ。でもそう考えるのを元貴に禁止されているためどうにか振り払った。
「後で世間とジャムズの反応どっちも確かめよう。報告文もちゃんと全部のSNSに上げたよね?」
楽屋に入ると開口一番に元貴が言った。すぐ側にいたそれぞれのマネージャーが全員肯定する。続けて若井が涼ちゃんここ座ってとソファーに手招きしながら、
「体調大丈夫?退院直後だけど辛くなかった?」
と目や手を確認しながら心配してくれる。相変わらず優しいなあ。
「大丈夫だよ。2人が居たからいつもの調子取り戻せたし。それにしても久しぶりに衣装着たかも」
座らせてもらい、上着を脱いでそう言うと隣に座った若井は安心したように微笑を浮かべる。ちらりと見えた元貴が彼をじとっ、と見つめていた気がする。気のせいだろうか。
「はい、涼ちゃん。これスケジュールね」
と新島さんがいつものまる1ヶ月スケジューリングされたファイルを渡してくれる。ありがとうと受けとり、ぱらぱらと捲ると思わずえっ?と声が出てしまう。
「どうした?」
「いつもの、半分くらいしか無い…」
そう言って元貴を見ると、気まずそうに目を逸らす。
「ごめん…。俺が勝手に厳選して、涼ちゃんの体調が悪くならない程度にしてもらった」
訴えかけるように見たが、元貴が珍しく泣きそうな瞳でこちらを見るもんだから口を噤んでしまった。黙っていた若井が僕の手を取り、こう言う。
「涼ちゃんがこんな状況でもやる気をもってくれてるのは嬉しいし、意見も尊重したい。けど同時に、俺達は涼ちゃんをそれ以上に大事に思ってるから…」
「若井…」
「…最初に言ったでしょ、技術なんか後でいいって。後からちゃんと着いてくるもんだから」
「元貴〜?言いたかったのはそっちじゃないだろ?」
にやにやと目の前の彼はそう言う。途端に元貴は顔を赤くし涙目で思いっきり若井を睨んだ。状況が飲み込めず2人を交互に見ていると、観念したように元貴が咳払いをし、喋りだした。
「人柄キーボードに、お知らせがあります!」
顰めた顔のまま、あの小さい体のどこから出てるか分からない声量でそう言った。うるさっ、照れ隠し凄っ、と隣から聞こえたと思えば更に声を張り上げて元貴が続ける。
「涼ちゃんが、その…今後を存分に楽しめるように、若井と計画を練ったから。今から何するか発表するね」
そう言ってタブレットを開きいたずらっ子のように、ニヤッと笑って喋り始めた。
「まず、涼ちゃんと思い出を沢山作るためにディズニーに行きます。今丁度ミセスコラボしてるし、期間中に絶対だかんね。…ああ、うん、行きたがってたラプンツェルも行こうね。次に涼ちゃんのソロの雑誌が出ます。ピアノ関連の会社だったかな。3番目に忙しいけど1人の雑誌まだでしょ?…冗談ですよ、涼ちゃん目が笑ってないから。他には作りたいって言ってたオリジナルグッズも進めるし、しばらく行ってないカラオケも行きたいし、いつものイタリアン、じゃなくて好きなお店選んでご飯いこう。俺らの奢りだから飲みすぎないでね。そうそう、お揃い解禁するから。あ、でもあくまで3人でお揃いの事。…え?別にショルダーバッグのこと根に持ってないよ。目も笑ってるから。それで極めつけは…」
はい、と若井が元貴から受け取ったタブレットを操作しイヤフォンを手渡された。新曲かな?そう思い聞き入ってみる。しばらくして耳に飛び込んで来た音に驚愕する。
「…!これって…!」
元貴が、フェーズ2を終わらせる時にこの曲で締めようといっていた、少し聞かせてもらったデモだ。壮大さ、明るさと暗さの緩急、歌い方。どれも初めて聞いた時の衝撃がそのままで間違うはずない。なんで、今このタイミングでこれを。ばっ、と顔を上げると。
元貴が、今までないくらい優しく微笑んだ。
「涼ちゃん。フェーズ2を巻きで終わらせる事にしたから。これに涼ちゃんの命を、演奏を吹き込めないまま終わるなんて、俺は考えられない。その為なら他の事をなんだって犠牲にしていいと思ってる。いや、これはちょっと語弊があるかも。ともかく、これを完成させて、最後のライブとしてバベルの塔で弾いて、終わりにしよう」
君が優しく微笑んだ瞳から、涙が零れた。
◻︎◻︎◻︎
読んでくださりありがとうございます!
更新中々出来ず申し訳ないです。極めつけは違う物語はじめちゃったし…。今後はこちらに専念するはずです。もしかしたら後ろ姿の君へのアフターストーリーを上げるかもしれません。笑
話は変わり今日のフィヨルド、私はライビュ参戦します。現地の方は本当に熱中症に気をつけてくださいね汗
次も読んで頂けると嬉しいです。