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眠りひめ
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取材が終わると、そのままスタジオへ移動した。
メイク室の鏡の前に5人並んで座る。
「佐野さん、少し顎上げてもらえます?」
「はい」
前髪を整えているメイクさんに、言われるまま顔を上げると、鏡越しに隣の柔太朗と目が合った。
「はやちゃん、眠そうだね」
くすくすと笑われる。
その笑い方があまりにもやわらかくて、つられて口元が緩んだ。
「めちゃくちゃ眠いわ。昨日遅かったから」
「知ってる」
その一言に、思わず視線を向ける。
「はやちゃんのドラマ、今日からでしょ?次の現場が巻けば家でちゃんとリアタイできるんだけどな。最悪、車で見ながら帰るわ」
「ファンかよ」
照れ隠しみたいに笑う。
「王道の恋愛ものやるのって、実は珍しくない?俺、結構楽しみにしてるんだよね」
たったそれだけの会話だった。
なのに、ちゃんと見ようとしてくれてるんだと思ったら、朝から体のどこかに張り付いていた疲れが、少しだけ剥がれ落ちた気がした。
「本当に仲良しなんですね」
メイクさんが鏡越しに笑う。
「昔から、ずっとこんな感じです」
柔太朗は迷いなく答える。
笑って、自分も頷いた。素直にうれしかった。
⸻
撮影は5人そろっての集合カットだった。
「もう少し寄れますかー?」
カメラマンの声に合わせて、自然と中央へ寄る。
柔太朗と肩同士が触れた。
薄い衣装越しに伝わる体温なんて、意識しなければ分からないくらいのものなのに、心臓だけが不自然なくらい大きく鳴った。
「いいよー!そのまま!」
シャッターが何枚も切られる。
離れようと思えば離れられる。
でも、誰も動かなかった。
それを言い訳にして、自分も動かずにいた。
撮影が終わって一歩離れても、肩に残った熱だけは、しばらく消えてくれなかった。
コメント
2件
第9話、読み終えたよ!メイク室での柔太朗と「はやちゃん」の会話、めちゃくちゃ良かったな。「知ってる」って一言で、ちゃんと見てくれてることが伝わってくる感じがたまらん。撮影中に肩が触れた時の心臓の音、それに「離れようと思えば離れられるのに動かなかった」って、二人の距離感がすごく繊細に描かれてて、胸にきた。あんりさんのこういう空気感の描写、ガチで好きだわ🔥