…コツ、コツ、パンプスの音が廊下に響く。
***
「デンジくん、早川くん、パワーちゃん。今日から君達には、四人で仕事してもらいます」
公安退魔特異四課の三人。上司のマキマに執務室に呼ばれ言われた“四人”の言葉にデンジとパワーは頭にハテナを浮かべた。だが、アキのみは意味を分かっているようだ。
「今電話したんだけど、もう仕事終わったらしいから来るらしいよ」「はぁ…」「早川くんは誰か知ってるよね?」「分かりたくもないですけどね」
はぁ、と溜息をつくアキ。そして相変わらずハテナを浮かべているパワーとデンジの背後の扉がコンコン、と鳴る。
「あ、来たみたいだね。入っていいよ」
マキマの声と共にドアノブが捻られ、入ってきたのは血塗れの女性だった。容姿は中華風の耳飾りに蒼色の眼に黒髪ロングヘア、眼にはハイライトが入っていないのに微笑んでいるという不気味な表情だ。だが顔は美人である。
「…ん、マキマさん、この子ら誰?」「後で。自己紹介、出来る?」
デンジとパワーを交互に見たあとマキマに問うが、先に自己紹介をする為にこくりと頷いたあと後ろで手を組んだ。
「本宮(もとみや)フユ、二十六歳の女。契約してる悪魔は海。コーヒーと煙草と悪魔殺すことが好きでーす」
これでいいですか?とマキマに微笑むと、マキマも微笑む。そしてマキマはフユに手招きをした後、書類を渡す。フユは受け取るがわけも分からずハテナを浮かべる。
「これ二人の書類。目通して」「あ、了解です」
真剣に目を通していると、フユは何かを読んだ後反応し、書類を見ながらデンジへと歩みを進めた。
「…えっと、デンジ…くん?」「あ、ハイ!」「ここ、悪魔って書いてるけど」「あー…まぁ、悪く言えば悪、魔ッ゛、?!」
デンジがそう言った途端、フユはデンジの首に手を伸ばし水の輪を首につけ締め付ける。その水の輪は上へ上へと上り、デンジを浮かせる。
「ぐる、じっ…!」「フユ先輩!」「悪魔は、殺す」「フユ、辞めなさい。ここ見て」
マキマが指さす先には“デンジという少年はチェンソーの悪魔を身に宿している為、チェンソーの悪魔になれる。”と書かれていた。それを見たフユは驚いた顔をしながら手を離した。
「げほっ、ぉえ゛…っ!」「ごめんなさいデンジくん…しっかり見ればよかった」「許せるわけな…」
許せるわけない、と言いかけたデンジだが、フユの胸元が見えてるのに気づきグッ、と親指を立てる。
「気にしてません!いつも死にかけてたんで!」「あ…そう?」
後ろではぁ、と溜息をつくアキ。そしてフユは何かを思い出したようでマキマの目を見た。
「マキマさん、そういや仕事って言ってませんでした?」「うん、行ってこれる?」「了解です」
じゃあ任せたよ、と言うマキマの声と共に四人は扉から出ていく。
[……To be continued]
*あとがき*
いやはや、一話短かったですが二話からは2000文字超えるように頑張ります💪🏻