テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
9件

らう男て、なに🤣🤣🤣🤣🤣🤣
第十四章 観察者
点滴室。
カーテンで区切られた小さな空間。
消毒液の匂い。
静かな機械音。
点滴の滴が、ゆっくりと落ちている。
ぽた。
ぽた。
翔太💙「……」
腕には点滴。
さっきの手術の光景が、まだ頭から離れない。
メス。
血。
黒い瞳。
あの手。
……すごかった。
亮平💚「少し休んでな」
優しい声。
翔太💙「もう行っちゃうんですか?」
思わず白衣の裾を掴んでしまい、慌てて手を離した。
翔太💙「すいません行ってください……」
亮平💚「すぐ戻るから」
翔太💙「はい」
阿部先生はカルテを持って部屋を出ていった。
カーテンが揺れる。
静かになった。
ぽた。
ぽた。
点滴の音だけ。
翔太はぼんやり天井を見ていた。
すると――
カーテンの向こうで人影が止まった。
白衣。
背の高い影。
そして。
すっとカーテンが開く。
翔太💙「あ、ラウール先輩――」
言いかけて止まった。
……違う。
顔は似ている。
でも。
雰囲気が違う。
髪はぼさぼさ。
白衣はしわだらけ。
ポケットからはメモとペンが何本も飛び出している。
隣のベッドのカーテンが揺れた。
男が大きなあくびをしながら近づいて来る。
どうやら、そこで寝ていたらしい。
男はじっと翔太を見た。
まるで珍しい生き物でも見るみたいに。
翔太💙「……?」
男が小さく首を傾げた。
そして呟く。
「へぇ」
その目は、少しだけ楽しそうだった。
翔太は瞬きをする。
翔太💙「ラウール……先輩?」
男は少し考えてから言った。
「違う」
少し間。
そして
「あれは弟」
にやりと笑う。
「精神科医」
ラウ男🤍「ラウ男」
翔太💙「えっ?」
ラウ男🤍「君のことは知ってるよ。雪うさぎ」
訂正しようと口を開くも、遮るように続けた。
ラウ男🤍「狙った獲物は逃さない。教授候補No.1、黒豹の蓮」
少し笑う。
ラウ男🤍「そして油断すると食べられる」
ラウ男🤍「No.2、狼の亮平」
ラウ男は翔太を観察するように目を細めた。
ラウ男🤍「……他にも」
ラウ男🤍「好かれてるみたいだね」
ラウ男はしばらく翔太を眺めていた。
上から下まで。
まるで診察でもするみたいに。
翔太💙「……?」
ラウ男は首を少し傾けた。
ラウ男🤍「へぇ」
翔太💙「な、なんですか」
ラウ男🤍「顔」
翔太💙「え?」
ラウ男🤍「分かりやすい」
翔太💙「なにがですか」
ラウ男は翔太の点滴スタンドを軽く指で揺らす。
ぽた。
ぽた。
滴が落ちる。
ラウ男🤍「今」
ラウ男🤍「四人」
翔太💙「は?」
ラウ男🤍「頭の中」
翔太💙「え?」
ラウ男は指を4本立てた。
ラウ男🤍「黒豹」
一本折る。
ラウ男🤍「狼」
もう一本折る。
ラウ男🤍「あと二人」
翔太💙「……?」
ラウ男は少し笑った。
ラウ男🤍「俳優と……ロイヤルな患者だ」
翔太💙「えぇ!?」
翔太は思わず起き上がりかけて、慌てて点滴を押さえる。
翔太💙「なっなんで分かるんですか!?」
ラウ男🤍「簡単」
ラウ男は翔太の顔を指さす。
ラウ男🤍「ここ」
翔太💙「顔?」
ラウ男🤍「恋愛してる顔」
翔太💙「してません!」
即答だった。
ラウ男はくすっと笑う。
ラウ男🤍「そういう人ほど」
少し間。
ラウ男🤍「一番危ない」
翔太💙「危ないって何がですか」
ラウ男は天井を見上げる。
そして、ぽつりと言った。
ラウ男🤍「この病院」
ラウ男🤍「狼と豹と……獣ばっかりだから」
翔太💙「……獣?」
ラウ男は翔太を見る。
そして、にやっと笑った。
ラウ男🤍「気をつけな、君優しすぎるみたいだから」
そのとき。
ラウ男はふいに立ち上がった。
カーテンが、わずかに揺れた。
ポケットからメモを取り出して、何かを書いた。
ラウ男🤍「観察記録」
翔太💙「え?」
ラウ男🤍「雪うさぎ」
メモを折りたたむ。
ラウ男🤍「捕食対象」
翔太💙「は?」
ラウ男は歩きながら手を振った。
ラウ男🤍「またね」
そして小さく呟く。
ラウ男🤍「面白くなりそうだ」
カーテンが閉まる。
点滴がまた静かに落ち始めた。
ぽた。
ぽた。
翔太はしばらく固まったままだった。
翔太💙「……?」
静かにカーテンが開く。
音もなく……そこに亮平が立っていた。
亮平の視線が、一瞬だけラウ男が去った方向に向く。
何も言わない。
ただ、ほんのわずかに目を細めた。
亮平の視線が、翔太に落ちる。
なんだか難しい顔をしている。
そしてすぐに、いつもの柔らかい表情に戻る。
亮平💚「どうしたの?」
何事もなかったみたいに、微笑んだ。
翔太💙「あの人……なんなんだ」
――――
亮平 side
カーテンの外。
足を止めたまま、しばらく動かなかった。
――見ていた。
ラウールに似たあの男。
まるで別物だ。
……興味がないタイプだと思っていた。
誰にも関わらない。
空気みたいな人間。
だから、放っておいてよかった。
けれど。
亮平💚「……珍しいな」
小さく呟く。
あの目。
観察する目。
値踏みするような視線。
――翔太に向いていた。
ああいうタイプが、
誰かに興味を持つこと自体が異常だ。
ほんの少しだけ、目を細める。
亮平💚「……面倒だな」
けれど。
完全に否定するでもなく。
ほんのわずかに、
楽しんでいる自分がいた。
やがて、何もなかったように表情を戻す。
カーテンに手をかける。
いつも通りの、柔らかい声で。
不安そうに見上げた、可愛らしい翔太の瞳に
俺だけが映っていることを確認すると、
頭を撫で、おでこに、触れるだけのキスを落とした。
まるで、何でもないことみたいに。
亮平💚「今日は帰ってゆっくり休みなさい」