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「こんなことも何も……私は、あなたとワインを愉しみたいだけですから……初めに、そう言いましたよね?」
「そんなその場しのぎな台詞が、通用するとでも思っているんですか…」
グラスをテーブルへ置きざまに、その整った顔をキッと睨み据えた。
「……では、どうすればいいと。……こないだのベッドでの続きでも、すればいいのですか?」
メガネの奥から、私をじっと覗き込む冷めた眼差しに、
「……続きとか、そういうことじゃなくて、何のためにこんなことをって……」
耐え切れずに、横へ目を逸らす。
「何のためになどと……、」
政宗医師は、逸らした私の視線を追いかけ、執拗に捕らえようとして、
「……あなたを酔わせる以外に、何があると言うんです……」
いかにも思わせぶりに、低く声を落とした。
「……酔わせて、どうす、る……」
目も合わせられないままで、とうにわかっているはずのことを聞かずにはいられない私に、
「そんなことを、わざわざ言ってほしいのですか?」
彼が語尾に被せるようにも言い、グラスから一口を飲み込むと、ワインの赤味に色づいて濡れた唇を、舌の先でゆっくりと舐めた。
「……そんなつもりなんか、私にはないですから……」
その仕草にドクッと高鳴る胸を手で押さえ、牽制するようにも口にして、
「……いつもあなたの思うようになるなんて、思わないでください」
整然と取り澄ましたその顔を、再び睨みつけた──。