迅さん夢です。暗いお話書いてみたかったので書いてみました🫶🏻
ATTENTION◇
※暗い
※夢主が死にます
※救い無し
※名前固定
※キャラ崩壊
「…あれっ、」「…ぁ、迅さん…」
某日、ボーダー本部。琴華と迅はここ数日会っていなかった。理由としては、琴華が休暇を取っていたからだ。しかも玉狛支部の自室に引き籠もり、数日間人を通そうともしなかった。恋人の迅でさえも。
「琴華!いつ外に?」「…二時間前、くらいかな」「そっか…電話してくれたら良かったのに。」「ああ…ごめん、携帯電池無くて」
迅は違和感を覚えた。今目の前にいる琴華は、どこか元気が無いのだ。いつもニコニコして、誰にでも飛び掛る元気な琴華では無い。それに服も見たことがない服を着ている。オーバーサイズの、黒いパーカーだ。
「…琴華?どうしたの?」「ん、なにが、?」「元気ない、よね。てか、顔、みせて」
サイドエフェクトに侵されしまった迅の脳は、未来が視えないとどうも落ち着かなくなってしまったようで。自身でも可笑しいのは分かっているのに、人の未来を盗み見るだなんていけないのに、見えないと安心できないのだ。
「なんで」「目、見たいから」「…未来みたいからでしょう」「え、」
顔を隠していたパーカーのフードをより深く被る。図星を突かれて黙りこくってしまった迅は、なんとか誤魔化そうと言葉を紡ごうとした。
「え、と…」「…あははっ、なんか、迅さんぽくないね」
わざとらしいような、乾いた笑みを零す琴華。ぽくない、それは琴華も同じことだ。迅は一歩踏み出し、琴華に詰め寄る。
「それは琴華も同じでしょ。ねえ、おれら恋人じゃん」「恋人…そう、だね。じゃあ、引かないでよね」
パサ、とフードを取ると、琴華の顔が垣間見えた。見えた顔に、迅は目を大きく見開いた。琴華の顔は顔半分からトリオン漏れの様な黒い煙が出ていた。煙が出ている箇所はギタギタに切り刻まれており、頬にも数箇所切傷のようなものが数個。
「な、に…その、かお…」「引いた?」「違う…驚いてる」「起きたらこうなってたんだよね。片目ももう殆ど見えないや」
五日に一回、死んだ様に眠る琴華。遊真の様に眠らない体質では無く、黒トリガーに眠っている本来の身体を休める為、意志関係なく眠ってしまうらしい。
「起きたら、って…思い当たることとかは?」「あるよ?迅さん達もあるでしょ」「おれ達…?」
「わたしの身体はトリガーに本来の身体がある。つまり、この身体は仮初のカラダ。仮初のカラダに使われているトリオンはどんどん消費され、いつかはなくなる。その時にわたしは、散る。」
グーを作った後、パッと手を広げる。その様は、花から花弁が散るようにも見えた。迅は思わず魅入ってしまった。
「つーまーり、もうトリオンが尽きかけてるって事ね。…頭のいい迅さんなら、分かっちゃうよね」「ッし、…ぬ…?」
迅らしからぬ焦り方で、迅は琴華を見つめる。蒼色の瞳が揺れる中、紅色の瞳は揺れ一つ無かった。
「そういう事。もうお別れなの。…だから、会いたくなかったのに。」
また深くフードを被り直す琴華。どうして迅がこんなに焦っているのか。それは、最悪の未来が視えてしまったからだ。
「琴華、おまえ…っ」「…ああ、視えちゃった?」
「迅さん、手貸してよ。」
琴華の心臓があった場所に、迅の手を持って行って当てる。
「…ねえ、あと何日かなあ」
普通ならば手から伝わる心臓の鼓動。だがその鼓動は、いつまで経っても聞こえやしなかった。
「はぁっ、は、…ぁ、っ…」
過呼吸になりかけてしまい、汗が滴り落ちる。迅はこんなに焦っているというのに、当の本人の琴華は焦ってすらいない。呑気に笑っているほどだ。
「…か、」「ん?」「あと、二日」「わ、意外と早いねえ」
少し驚いた顔をするも、その後またすぐに笑顔を浮かべる琴華。迅はもう訳が分からなかった。
なぜ笑える?どうして?死ぬんだよ?なんで、なんで、どうして
「琴華」「ん?」「どうして、笑えるの…?もう、琴華は二日後いないんだよ?死ぬんだよ?」「そうだねえ。…うん、だからこそ、笑えるんだよ。迅さん。ふっきれちゃうんだあ 」
口角を吊り上げた、気味の悪い笑顔を浮かべる琴華。半分近界民の女を見た迅は、ゆっくり口を開いた。
「…琴華。おれに殺されてよ」
少し目を細め、迅を睨む様に見つめる琴華。琴華だって理想の死に方がある。恋人に殺されたいほど、彼女は依存していなかった。
「琴華がさ、“ああ死ぬ” ってなった時、おれがおまえを殺すんだ」
「そしたら、おまえはトリオン切れじゃなくて、おれに殺されたことになるでしょう?」
迅もまた、気味の悪い笑顔を浮かべる。
迅も 最早人間ではないと自負しているから、琴華のような笑みになる。この話をしている間に周りの視線を集めてしまっていたらしく、二人は支部へ戻った。
「…それが、ほんとの迅さんなんだね。」
迅に聞こえない程の声で、呟いた。
***
「…みんな、驚いてたね」「そりゃな」
玉狛支部へ戻り、宇佐美や小南に事情を話した。驚き泣き叫ぶ者も居れば、黙りこくってしまう者も。十人十色な光景に、琴華は思わず笑ってしまった。
「そんな驚くことある?だって知ってたでしょう、わたしがいつか死ぬのなんて」
「でも数日前まで変わらず一緒だったじゃん、おれも受け入れられてないよ、」
急に眠って籠り、急に現れたかと思えば死ぬと言う琴華。そんな琴華に、迅も、誰もが驚いていた。
「ふうん…そんなもんか」「…琴華って、見た目人間なのに、中身化け物みたいだよね」「え、褒めてる?」「褒めて…る?」「なにそれえ」
くすっといつも通りに笑うものの、ボロボロの半壊した顔がどうしても目を引いてしまう。悲しそうに目を伏せる迅に気づいた琴華が口を開く。
「…ねえ、そんなに悲しいこと?」「は?」
「わたしがいなくなって、なんか変わる? 」
首をこてん、と傾げ、迅に問う。
「変わる、だろ」「ええ?」「普段居た人間が消えれば、何かは変わる」
「人間って、そんなもんだよ」
琴華は呆気にとられた。まさか、そんなこと言われるとは思ってもいなかったからだ。
自分も一応は人間であるはずなのに、そんな感情、抱いたことも無かったから。
「…そうなのかな」「そうだよ」
屋上の淵に座っている脚をぶらぶら揺らす琴華。
脚からは黒い煙が上がり、爪先はもはや消失しかけている。
「ねえ迅さん、あとどんくらいかな」「聞きたいの?」「うん」「…あと、二時間ちょい」
迅は琴華の顔を見ることが出来なかった。それは決して琴華の顔が醜いから、という理由ではなく、見ると哀しくなってしまうから。
「ふーん。結構早いね」「…琴華はどうやって死にたいの?」「刺殺…かな〜?」「こわいんだけど」「いっつも刺されてたからね」
ランク戦の事を言っているのだろう、と察した迅は、換装してスコーピオンを出す。 そしてスコーピオンを包丁の形に真似る。
「お、さすが変幻自在のスコーピオ」「いいの?これで。おれに首締められて死ぬでもいいんだよ?」「迅さんこわっ」
けらけらと笑う琴華。あながち迅の言葉も嘘では無いのだが、それを言うのは辞めておいた。
すると、琴華の身体に異変が起きた。
「あれ、」
琴華の身体にどんどん切り傷が増える。片目は潰れ、腕は片腕しか無い。脚も膝先からは無く、見るも無惨な姿だった。これが、今の琴華になる前の…“本当”の姿の琴華だった。
「生身ってこんな感覚だっけか…久々」「琴華。黒トリガー忘れないでね」
琴華が自分の命よりも大事だと毎回のように言っていた黒トリガー。それを抱きしめながら死にたいというのだ。
「えへへ、ありがと。」
「…ねえ迅さん。迅さんは未来があって、未来も視えるから“未来”。わたしは未来も無いし、そんな特別な力ないから、“屍”。」
スコーピオンを持つ手が震えてる迅に気づいた琴華は、優しい声で語りかける。
「真反対だ」
あはは、と笑う。
迅は、何も言葉を発さなかった。
「…そろそろ時間だよ。悠一さん」
旧ボーダーの頃に呼んでいた名で、迅に語り掛ける。びくりと迅の肩が揺れた。
「ッはは、簡単に死なせやしないよ」
迅が言う言葉の意味に、琴華は寒気を覚えた。
琴華を忘れない事で、彼女は永遠に生きつづける…とでも言うのだろう、と。
迅は琴華を組み敷き、両手でスコーピオンを心臓が“あった”場所へと近づける。
「ばいばい。玉狛の皆に、宜しく」
琴華の涙ぐんだ笑顔を見て、迅はスコーピオンを突き刺した。
ぴかり、と光が迅を照らす。迅はこの光景に見覚えがあった。
カタン、と音が鳴った。
「はっ、簡単に死なせないって言ったからか?黒トリガーなんかになりやがって」
床に落ちた二つの黒トリガー。その片方を拾い上げる。
「おれにしか使えないようにしてんだろうな」
屋上のコンクリートに多数の染みが出来る。
目をぐしぐしと擦り、もう片方の黒トリガーを手に取った。この事を、皆に伝えるために。
「_未来と、屍」
ℯ𝓃𝒹
コメント
2件
まじ最高