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『忘れ物』
会社員の男が、仕事帰りにコンビニへ寄った。
レジに並んでいると、前に小さな女の子がいた。
女の子は店員に、
「これ、ください。」
と言って、小さなお菓子を一つだけ買った。
店員が、
「袋いりますか?」
と聞くと、
「大丈夫です」
と答えた。
女の子はお菓子を握ったまま、店を出ていった。
男も会計を済ませて外へ出た。
すると、店の前に女の子が立っていた。
「どうしたの?」
男が声をかけると、
「お父さんが迎えに来るの」
と答えた。
「そっか。じゃあ、ここで待ってればいいね」
「うん」
男はそのまま帰ろうとした。
すると女の子が、
「お兄ちゃん」
と呼び止めた。
「なに?」
「これ、持ってて」
女の子は買ったお菓子を差し出した。
「お父さんに渡すから」
男は笑って、
「自分で持ってなよ」
と言った。
女の子は少し寂しそうに、
「……分かった」
と答えた。
男は家に帰った。
翌朝、ニュースを見ていると、
近所の道路で事故があったと報じられていた。
昨夜、コンビニの前で女の子が車にはねられたらしい。
男は驚いた。
「……昨日の子?」
ニュースでは、
**「女児は事故の直前、コンビニでお菓子を購入していた」**
と報じられていた。
男は背筋が寒くなった。
そしてふと、昨夜のことを思い出した。
女の子は最後に、
「これ、持ってて」
と言った。
男は受け取らなかった。
だから当然、お菓子は女の子が持ったままのはずだった。
ところが――
男は自分のカバンを開けた。
中から、
昨日の小さなお菓子が出てきた。
そして、その袋には、
子供の字で小さく書かれていた。
**「お父さんに渡して」**
男はそこで初めて気づいた。
女の子が待っていたのは、
父親ではなかった。
**自分を迎えに来る「誰か」だった。**
そして女の子は、事故に遭う直前、
お菓子を男に渡したのではない。
――**男を、自分の父親だと思って渡していた。**
コメント
1件
いや、これラストの一文がめっちゃ効くわ…。コンビニの何気ないやり取りから一転、カバンから出てきたお菓子の衝撃がヤバい。しかも「お父さんに渡して」って書いてあったってのが切なすぎる。迎えに来るはずだった人の代わりに、この男に託そうとしたんだな…。背筋冷えたけど、それ以上に胸が締め付けられた。続きが気になるけど、この1話で完結してても刺さるわ。泡魔璃んなちャ_🫧🩵さんのホラーセンス、好みっす🔥