顔

ただ整形させているだけで。

ただ怒っているだけで。

接点はないと、会うことはないと思っていた。

それスノの企画で、街に出て「借り物競走」をする。

周りはスタッフが囲んでいるし、撮影中だから、ファンも寄って来れない。

スタートしてから、ずっと阿部達のチームを追いかけてくるファンがいる。

数人いるが近づけない。

阿部も、視界の端に入れていた。

収録が進むにつれ、阿部はファンの存在を忘れていた。

阿部のチームには、女性のゲストが一緒だった。

笑い合う。

3人ではしゃいでいる。

その数人のファンの中に彼女がいた。

安藤玲奈がいたのだ。

嬉しさが隠せない。

阿部を見ながら着いて行く。

会えるなんて思ってなかった。

本物は、格好いい。

自分は、なんてツイてるんだろう。

収録の休憩中、阿部は女性ゲストと喋っていた。

警備の外から安藤玲奈が声をかける。

安藤ー阿部ちゃん！

阿部ーどうも〜。

安藤ー安藤玲奈と言います。大ファンです！

阿部ー安藤玲奈さん？

阿部は立ち上がり安藤玲奈の方へやって来た。

安藤玲奈は大喜びしている。

阿部ーあなたが彼氏を俺の顔に整形させて似てなかったら捨てた人？

安藤ーそ、それは・・。

阿部ー彼氏を何だと思ってるの？

自分の所有物じゃないんだよ？

俺の顔に整形させて、何がしたいの？

そんなファンいらない。

俺の顔に整形もさせないで。

安藤ー・・。

阿部ー事務所にも手紙送ってこないで。

俺、あなたのこと嫌いだから。

安藤ーな、なによ！

阿部ちゃんが好きなだけじゃない。

彼氏になってもらいたくても無理だから、実際の彼氏に阿部ちゃんになってもらってるだけじゃない。

阿部ー俺、怒ってるから。

安藤ーふん！もうファンやめるわ！

阿部ーいらない、やめて嬉しい。

安藤ー・・。

阿部ーじゃあ。

このやり取りを女性ゲストも聞いていた。

宮舘が説明したら、怒っていた。

と同時に、阿部の男らしい一面を見てびっくりしていた。

女ゲー阿部さん、やるわね。

阿部ーいや、普段あんまりこういうの言わないんですけど。

女ゲー格好良かった。

阿部ーさ、収録続けましょう。

女ゲー勝つわよ！

阿部・宮舘ーおぅ！

阿部はもう安藤玲奈を視界から外した。

彼女は、悔しそうな顔をして阿部を見送った。