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あー、しぬ、好きすぎますやん
ア〜〜〜〜〜〜〜〜〜(成仏)
好き
暗い夜、いつものラップバトルが終わって寒くて体が身震いしながら帰宅する中、不意に空を見る。
「(すっかり冬になったなぁ…)」
ついこないだまで暑くて汗だくだったりしたのに。
防寒対策はしてきたつもりだったが、冬の夜は予想以上に冷え込んで堪らずくしゃみをする。
思わず手に息を吹きかけて寒さを誤魔化していると、後ろから声を掛けられた。
「あの、」
顔だけを動かして声がした方を見ると、そこには小柄な女の子が立っていた。パッと見た感じ高校生くらいだろうか。
「ピラフ星人さん、ですよね?」
「うん、そうだよ」
僕がそれを認めた途端、女の子の顔はぱあっと明るくなり、体の動きが忙しくなった。
「あの!私ほんとピラフ星人さんのこと大好きで!、バトル毎回見に行ってます!ラップもすごい上達してて、見る度にかっこよさが増してて益々好きになってます!大ファンです!」
怒涛のマシンガントークに気迫を感じながらも、適当に返事を返しているといきなりラインが危なめの質問をされた。
「ピラフ星人さんって彼女とかいたりします?」
「いや、別にいないけど…」
いきなり方向が変わった質問に戸惑いながら答えると、空気が少し変わった。
「…じゃあ」
「は?」
ふと影が見えて、女の子の手元を見るとそこには何故かスタンガンを持っているのが見えた。
「(まずい、ハナから関わらない方が良かったタイプの人だ、これ)」
途端にそう思うも、もう遅かった。その少女が持っているスタンガンがバチバチッと火花を散らして自身の体に当てられる、そう思いぎゅっと目を瞑るも、衝撃はいつになっても来なかった。
「それはアカンやろ」
暗転している視界の中に訛りのある聞き慣れている声が頭に響いた。まさかと思い目を開けると、そこにはやはりミメイくんがいた。
僕の体に向けられていたスタンガンをミメイくんが少女の腕ごと掴んで、もう当たる寸前のところで止まっていた。
「えっ、ミ、ミメイ…さん?」
「おう、何してんの?これ」
いきなり現れたミメイくんに少女が目を瞠目させるも、お構い無しにスタンガンを持っている少女の腕を持ち上げて問いただすミメイくん。心做しかその顔は少し不機嫌そうに眉間に皺が寄っていた。
「いや、えっと、な、なんでもないです!!」
そう言いながら少女は掴まれていた腕を振り払い、踵を返して走り去っていった。
案外あっさり去ってくれた少女に安堵して、ふと横で突っ立っているミメイくんに気になったことを聞いた。
「ミメイくん、なんでここに?」
純粋に気になったことを聞いただけなのに、僕がそう言った瞬間にばっとこちらを向いて、さっきよりも更に不機嫌さを滲ませる顔をしてきた。
「なんでって、スマホ見たらわかるやろ」
スマホ?と思い電源をつけると、待ち受けにミメイくんからのLINEの通知があって、遅いから迎えに行く、と書かれていた。
「あー、通知見てなかったです」
「お前…」
さらに鬼迫の顔を向けられたので、慌ててフォローの言葉をかけた。
「いやでも、さっきはホント助かりました。まじ終わったと思ったんで」
僕がそう言うと、殺気立っていた顔が一瞬ピクリと動いた。
「…ミメイくん?」
なぜか沈黙を貫くので、疑問に思い顔を覗くとボソリと声が聞こえた。
「…んわ」
「はい?」
聞こえそうで聞こえない声量がもどかしくてもう一度聞き返すと思った以上に大きい声で繰り返され、今度ははっきりと聞こえた。
「気に食わんわ」
「…何がですか?」
いきなり子供のようなことを言い出すので困惑していると、腕をぐいと引っ張られる。
「あの、ミメイく、」
まるで癇癪を起こした子供のようで、行動の意味がわからずにいると、いきなり顎を掬われて目線がかち合う。
「二度とそんな危機感のないこと言えんように家に帰ったらぐちゃぐちゃにしたる」