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私はフレッド王子の顔が恥ずかしさのあまりにまともに見れなくてエミリーの肩に隠れた。
その行為にフレッド王子がムッと顔を顰める。
するとエミリーが私と王子の前に立ち塞がった。
「王子、いい大人がそのくらいで拗ねないでください! ほら、ロレッタ様を運びに来たのならさっさとお願い致します。早くしないとロレッタ様が風邪を引いてしまいますからね!」
「わかった…」
フレッド王子はシーツに絡まる私を軽々と抱き上げると湯浴みの用意された部屋へと向かった。
「お、王子! 王子にそのようなこと…私自分で歩けますから!」
私は王子から離れようと必死になるがビクともしない。
「本当か?先程は腰が砕けたようになっていたぞ、こんな風に…」
王子は私を支える背中の手を昨日のようにサラッとなぞるように動かした。
「んっ…」
すると口から思いもしない甘い声が漏れる。すると王子がビクッと反応して足を止めてしまった。
「お、王子?」
私は更に力が抜けてしまい、王子の服にしがみついた。
そして王子を見上げると先程までからかうように笑っていた顔を横に逸らしている。
「今はすべきでは無かった、すまない」
王子の様子に首を傾げていると、そのまま湯の張った浴槽にそっと降ろされた。
「じゃああとは頼む…」
王子は少し前かがみになりながらエミリーに声をかけて部屋を早足に出ていってしまった。
「王子は大丈夫でしょうか? 私は何か不快にさせたのかも知れません」
心配になってエミリーに聞いてみた。
「大丈夫です。ロレッタ様は何も悪くありませんよ…それに私今のでさらにロレッタ様が好きになりました。この国きた経緯は酷いものですがどうかこの国で幸せになってくださいませ」
エミリーのあたたかい言葉に私は少し複雑な気持ちになり軽くに笑ってお礼を言った。
「ありがとう…」
でもその資格も価値も私にはないの…と申し訳けなく思い顔を下に向けた。
エミリーは何も聞かずに私の体を丁寧に洗ってくれると優しく髪を整えてくれた。
「仕上げに香料を塗りましょうね。王子の好きな香りにしておきます」
「はい…」
私はされるがまま大人しくしていた。
家では何か言えば文句を言うなと咎められていた。私には意見を言う資格などないのだ。
「では服ですが今色々と仕立てて貰ってますので今日はここにあるので我慢して貰えますか?」
そういうとクローゼットから色とりどりのドレスを出した。
「仕立てる? それなら大丈夫です。私は持ってきたドレスが数枚ありますのでそれで私にお金など使わないでください」
ただでさえ借金で売られたのに更に借金を増やす行為など出来なかった。
「それは王子からのプレゼントですからお気になさらずに、ここの服もそんなに高いものではありませんので大丈夫ですよ」
「そ、そうなのですか…」
しかし見ればどれも高そうな生地に繊細な刺繍の施されたドレスに見える。
私は一番地味なものなら自分にどうにか似合いそうかと端のドレスを選んだ。
「こ、これで…」
奥の右端にあったくすんだ茶色のドレスを指さすと…
「うーん、これではロレッタ様の魅力が半減してしまいます。ロレッタ様はこのお色が似合いますわ」
そういうとエミリーは空の様に澄んだ蒼のドレスを取り出した。
「そ、それは…」
私の好きな色だった。
子供の頃によくこの色のドレスを着ていたが妹のレミリアに自分の方が似合うから欲しいと言われて取られてしまったのだ。
しかも自分が着るからと私がこの色を着ることを止めるように言われていた。
「これは、私には似合わない…ですから」
そんな苦い思い出のドレスから顔を逸らした。
「いいえ、ロレッタ様の美しく澄んだ白い肌の色とそのブロンドの髪の色にとてもよくお似合いですよ」
エミリーが笑ってドレスを差し出す。
そして自分の前に合わせると鏡でその様子を見せてくれた。
「綺麗…」
ドレスの綺麗な色に思わず声が出てしまった。
「ええ、とても綺麗でお似合いです」
彼女の笑顔に負けて私はそのドレスを身につける事にした。