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Chapter2.光の都,ルミナリア
「屋根の上から“見てただけ”って、何回目だと思ってる?」
レオンがぴしゃりと指摘する。
「……十五回目だな。記録してある」
「記録すなや!!」
カイが一歩前に出る。
ミナは、蹴りを放った足をそっと地面につけて、 「ふぅ」と一息ついた。
「……セラ様の安全を脅かす行動は、たとえ旧友でも見逃せない。 次は、俺が止める」
「えっ、ちょ、待ってカイくん!?ミナちゃんより痛そうなんだけど!?」
「当然だ。俺は“手加減”を知らない」
「こわっ!!」
レオンがため息をつきながら、メモ帳を閉じる。
「……まったく。君が動くと、ややこしくなる。 せめて、瓦の修理費くらいは払ってくれ」
「えっ、あれ俺のせいなの!?ミナちゃんの蹴りやろ!?」
「君が屋根にいなければ、蹴る必要もなかった。因果関係は明白だ」
「理屈で詰めるのやめてぇぇぇぇ」
「……ったく、何回言わせんのよ。 セラちゃんのこと、屋根の上から見下ろすの禁止って言ったでしょ?」
「うぅ……わかってるけど、つい……」
「 “つい”が多すぎんのよ、あんたは」
そう言いながら、ミナは足をさすり始めた。
「……いっててて……またやっちゃった……」
「……え、なに?今の蹴り、ミナも痛かったの?」
「そりゃそうでしょ!あんたの頭、石より硬いんだから!!」
「いやいや、俺のせい!?俺の頭のせいでミナちゃんが痛がってるって、 なんかもう、どうしたらいいの……?」
「反省しなさい。あと、治療費はそっち持ちね」
「えっ!?俺が!?!?」
レオンが横からすっとメモを取りながら、ぼそりと呟く。
「……ミナ、次からは蹴る前に、足に魔力緩衝をかけておくといい。 衝撃を分散できるから、自分のダメージは減るはずだ」
「……あ、それいいかも。ありがと、レオン!」
「……いや、そうじゃない。 “蹴らない”という選択肢をまず考えてくれ」
カイは腕を組んだまま、ミナの足元を見て、 小さくため息をついた。
「……次からは、俺が止める。 お前が怪我するのは、本末転倒だ」
「え〜、でも私の方が手っ取り早いし……」
「……俺の方が静かに、確実に止められる」
「それはそれで怖いんだけど!?」
🏙️ 王都・路地裏の騒ぎのあと
ミナが足をさすり、かなめが瓦の山から這い出し、 カイとレオンが静かに見守る中——
「……まったく、騒がしいと思ったら」
その声に、全員がピタリと動きを止めた。
振り返ると、 ラベンダーの髪を風に揺らしながら、セラ・ルミエールが立っていた.
「もう……みんなして、何やってるのよ」
その言葉に、ミナがぴしっと背筋を伸ばす。
「セラちゃん!?いやこれはそのちょっとした事故で!」
「事故っていうか、事件っていうか……いや、俺は悪くないっていうか……」
かなめがもぞもぞ言い訳を始めるが、 セラは静かに、でもしっかりとした声で言った。
「かなめ、屋根の上は禁止って言ったわよね?」
「ミナ、蹴る前に一呼吸おいてって、何度言ったかしら?」
「カイ、レオン、ふたりとも止めるのが遅いわ」
「「……すみません」」
「「……反省します」」
セラはふぅっとため息をついて、 でもその顔には、どこかあたたかい笑みが浮かんでいた。
「……ありがとう。私のこと、ちゃんと見ててくれて」
その一言に、全員が少しだけ顔を上げた。
「……セラちゃん……」
「……姫様……」
「……やっぱり、あんたは“光”やなぁ……」
かなめがぽつりと呟いたその瞬間——
「でも次やったら、今度は私が蹴るからね?」
「えっ、セラちゃんまで!?」
🏙️ 王都・高台の通り
れるは、セラを追って少し離れた場所から路地裏を見下ろしていた。 視線の先では、ミナが足をさすり、かなめが瓦の山から這い出し、騎士が淡々と説教をしている。
そして、セラが現れて、 「もう、みんなして……」と呆れながらも微笑む。
その光景を、れるは無言で見つめていた。
「……なんなんだ、この国は」
呟いた声には、呆れと戸惑い、 ほんの少しの、羨望が混ざっていた。
「騒がしくて、無秩序で…… だが、誰もが“そこにいていい”と、自然に思わせる空気がある」
彼の国では、誰もが役割を演じ、 感情を抑え、秩序の中に生きていた。だがこの国では、 姫が呆れ、侍女が蹴り、騎士が説教し、詐欺師が笑う。それでも、誰もが“そこにいること”を許されていた。
「……セラ・ルミエール。 君は、こういう世界を守ろうとしているのか」
れるの手が、無意識に胸元のペンダントに触れる。
その中には、彼の国で失われた“ある記憶”が眠っていた。
「……ならば、俺は——」
そのとき、背後から声がした。
「王子、こんなところで何してるんですか〜? まさか、姫様のこと見てたとか?」
振り返ると、そこにはゆうが立っていた。 Reluの側近にして、唯一の“ツッコミ役”。
「……見ていたのではない。観察していただけだ」
「はいはい、観察ね〜。 でも顔、ちょっと笑ってましたよ?」
「……気のせいだ」
れるは少し,頬を赤らめていた.