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#独占欲
「いきなり恋の話をされても、今は何も考えられなくて……」
「すみません。寒い中、歩いて疲れましたよね。
とりあえずこちらに座ってください」
テーブルに案内されて椅子に座り、膝の上に両手を置いた。
きゅっと軽く拳を作って緊張に耐える。
そのまま待っていると紅茶とクッキーが運ばれてきた。茶葉のいい香りがする。
「どうぞ温かいお茶を飲んで、甘い物を食べて癒やされてください」
トオルは、私と対面する席に腰を下ろした。
テーブルの上に肘を置いてから指を組み、上目遣いで見てくる。
幼さが残るその顔を見るとつい可愛いと思ってしまう。
「ありがとうございます……。
紅茶を飲むのはすごく久しぶりで、懐かしいなって思います」
「もう、ボクにもレト王子とセツナ王子と話す時みたいにしてくださいよ。気を使わないでください。
歳はかけらさんの一個下ですけど、これでも大人なので」
「うっ、うん。分かった。
私のこと、随分知ってるね……」
「俺がトオルに報告していたんだ。
グリーンホライズンにいる時から話は聞かせてもらっていた。
あんたが、目を覚まして起き上がってからな」
「私がレトと初めて話した時から……。
じゃあ、グリーンホライズンで見つかった敵国の人ってシエルさんだったんですか?」
「それは俺の仲間だ。助けに行けるのはいつになるか分からないけどな」
ずっと変わらないシエルさんの冷たい表情に、一瞬だけ悲しみが見えたような気がした。
しかし、勝手に他国に入った方が悪いから同情できない。
「かけらさんは、もう安心していいですよ。
この部屋はボクとシエルと臣下しか知らない秘密の部屋なので他の人は入ってきません。
地下なので日差しが入らないのが残念ですが、静かで集中できる場所なんですよ」
確かに、やたら静かだ。
地下だからそうなんだろうけど……。
複数の太い柱が支えになっていて壁が少なく、空間が広く見える部屋。
足元には赤い絨毯が敷かれていて、大きな暖炉があるからコートを脱いでも温かい。
向こうには豪華なダブルベッドが二つも置いてある。
まるで小さなお城みたいだ。
どんな場所か確認した私は金色で模様が描かれた白いティーカップを両手で持って紅茶を飲む。
美味しい……。
元の世界で飲んだことのある紅茶の味とそっくりだ。
クッキーもミルクの味がして、甘くてサクサクしていて食べやすい。
色んな形があるし、イチゴジャムが真ん中に入っているクッキーまである。
お茶会に参加している気分だ。
「衣食住も全て揃っています。お風呂もありますからね。
自分の家だと思って寛いでください」
「どの国も食糧難なのに豪華なんだね」
「スノーアッシュは食糧難ではありません。
王都の地下で水耕栽培をしていますし、グリーンホライズンとクレヴェンからいただいた土地で畑も作っていますからね。食料に余裕があるんです。
困っているのは他国だけですよ」
「文明も大分違う気がする……」
「世界で一番文明が発達している国ですから。
他国にいた時より不便に思うことはあまりないと思います」
「歓迎してもらっていて申し訳ないけど、私には何の価値もないよ。
美人でもないし、ずば抜けて何ができるわけでもない」
「なんてことをいうんですか。
この世界に来た時点でかけらさんは大きな価値があるんですよ」
どういうこと……?
っとトオルに聞こうとした時、コンコンッとドアを叩く音がして誰かが入ってきた。
「トオル様、王がお呼びです」
「まだかけらさんとのおうちデートが始まったばかりなのに……。
王の話なんて、どうせくだらない事でしょう。だるいんですよね」
今まで笑顔で話してくれていたけど、急に眉をひそめてを立ち上がる。
自国の王にそんなに会いたくないのだろうか。
「今日はゆっくり休んでください。
かけらさんに似合いそうな服も用意してありますのでぜひ着てみてください。
風邪を引いて寝込んでしまっては、教えて欲しい事を話してもらえないですからね」
「教えて欲しいことって……?」
「また明日お話します。それでは」
トオルは私に頭を深く下げてからにっこりと笑って手を降り、この部屋から出て行った。
急に静かになった部屋にシエルさんしかいなくて気まずくなる。
それでも聞きたいことがあるから、勇気を出して話し掛けてみる。
「あの!少し聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「シエルさんの正体が気になりまして」
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