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花柄の新調したテーブルクロスの上の料理を平らげながら、おじいちゃんは僕の知らない仕事の話を父さんとしていた。

僕は味噌汁の大根を避けて豆腐を食べて啜った。


「転勤にともなって、引っ越しを考えているんだ」


父さんが野菜炒めを箸でついばんでおじいちゃんと話している。

母さんは困り顔で、


「この家に住んで、けっこう経っているのにねえ」


「仕方ないだろうな。仕事を優先しなければ住んでいけないのだから」


おじいちゃんは漬物のナスをそう言って大口を開けて、ご飯と一緒に押し込んだ。


「本当に、急なことだけど……。来月には決まるかも知れない」


「まあ、歩と亜由美はどうするの? 歩は藤堂君と篠原君と小学校へと入ってからずっと一緒だったのに」


「なあ、歩。来月に引っ越すんだけれど、引っ越し先は隣町なんだ。お前は賢いから一人で電車に乗れるし、友達の家に遊びに行くんだったら、電車でたったの一駅だ。金は母さんが友達に会いに行きたい時に支払ってくれるから。別の学校に通うことになるけれど、そこでも新しい出会いがあるはずだしね。どうだい、悪いことばかりじゃないだろう」


僕はざわざわした靄が心に再発していたけど黙って頷いた。

おじいちゃんは僕を見ると、意地悪そうな顔に見える引きつった顔をして、僕の頭を優しく撫でている。


「お前は俺に似ているからな。賢いから。きっと、隣町からちょくちょくと友達に一人で会いに行くんだろうて。大丈夫だよな。歩」


「うん……」


話に加わらない亜由美は喋れないんだ。いつも100円ショップで買えるA4のノートと鉛筆を持っていて、何か伝えたい時に、綺麗な字でノートに言葉を書いて相手に渡す。相手はそれを読んで亜由美が生まれつき喋れないことを知る。

最初は誰でも可哀想だと思うけれど、しばらくすると、とても綺麗な字を書くしはっきりとしたことだけを書くから立派な大人になれるだろうと思うようになるんだ。

亜由美はしっかり者だった。


三つ編みが一本だけ頭の斜めから背中に垂れ下がり、前髪は目元まで伸びていて、目はくりくりしているようだが、いつもひんやりとした心の持ち主だった。

白いスープと死者の街

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