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「カチコミ時だ。」

その言葉で事はトントン拍子に進んでいく。キクタを含めこの街の人達は研究所の元職員で、実験の方針に反発して出ていった人達だった。

「まさか明日子ちゃんのお父さんと解体屋のイエナガ先生も元職員だったとは。」

「明日子のオヤジさんは技術開発部に居て、かなりの仕事人だったらしい。イエナガは見ての通りだ。生き物なら何でも解体したがる。で、 こんな夜更けになんの用だ。」

「サイチ、人間じゃないよね。」

その言葉に、パソコン作業をしていたキクタの手が止まる。

「いつから気づいてた。」

「やっぱり。」

「俺が造ったんだ。アイツの事が頭から離れなくて…。」

「アイツ??」

キクタはタバコを吹かし、話しだす。

「極東支部で俺は、ハセガワ指導の下、人体実験の指揮を執っていた。失敗しては投棄の繰返しのなかユウサクは俺の補佐として新しく入ってきた。」

「ユウサク…。」

「アイツ、絵に描いたような善人で、実験体の奴らにもすこぶる丁寧に接していたよ。投棄されていく姿を見ていちいち涙を流すから“情が移らんように接しろ”って何度言っても聞きやしない。」

「そんな人がどうしてキクタの部下に。」

「先の戦争で生き別れた兄を探してるって。」

「たったそれだけの理由で??」

「お互い敵同士だったらしい。終戦後、負けて捕虜になった兄がここに収容されていると自力で突き止めてきた。」

「会えたの??」

「会えなかった。俺が配属された時には既に投棄済みだったから。」

「彼はどんな反応を。」

「凄く残念がってた、それだけだった。でもある日、俺の側から居なくなった。」

「ある日って。」

「兄とやらが生きていて、面会を求めてきたんだ。」

「嘘でしょ??」

「あの方の、ハセガワが仕組んだことだとすぐに分かった。その頃から上層部には極秘で違う実験を進めている噂があったからな。」

「偽装してまでなんで、ユウサクの兄が欲しかったの。」

「わからん。ハセガワは心身掌握術に長けてたからな、何らかの思想を吹き込まれたのかもしれん。」

「面会中のやり取りは。」

「ない。施設内のカフェで話したいって言われてな、防犯カメラに映ってても会話は記録されてないんだ。でも面会後のユウサクの態度は明らかにいつもと違ってて、すぐに兄がいる研究施設に異動するって聞かなかった。」

「そしてユウサクは兄の元へ行った。…ユウサク??」

「お前アイツのことしってんのか??」

「ペスペラーがそう言ってて…。」

「今アイツどうしてる??」

「実験体になって、失敗して投棄された…。」

「なんだっ…!?サイチ!!」

息を呑むキクタ。私が振り返る頃にはサイチの階段を駆け降りる音が聞こえて。

「待ってサイチ!!」

急いで雨降る街へ飛び出した。

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