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#Mysta Rias
( '×' )
13
雨風の強い夜だった。それでも僕は、どうしてもアイスが食べたくて、コンビニに向かった。駐車場には車が1台しかなかった。
そんな中、1人の男が座り込んでた。傘もささずにずぶ濡れで。
すごく気になるけど、なんて話しかければいいか分かんなくて、そのままコンビニに入った。
店内を周りながら、ずっと彼のことが頭にあった。結局、アイスと彼用のコーヒーを買って、出た。
本当に何があったのだろう…。彼は見るからに疲れていた。
「これ、どうぞ。何かあったんですか?」
彼はゆっくり顔をあげた。
「ありがとう…いや、ははっ」
前髪をかき分けた彼の髪から大きな雫が滴る。
「とりあえず、うち来ます?そんなに遠くないですし…、そのままだと風邪引きますよ」
彼は力なく笑った。
「お言葉に甘えようかな…」
傘は1つ。
立ち上がったのに、倒れ込むように中に入ってきた。
彼が風で飛んでいきそうな気がした。
「お腹空いてません?」
彼の背は僕より高いのに、まるで少年と話しているようだった。
「え…?いや…」
こっちに顔を向けるけど、体からは空腹の音が聞こえた。
「帰ったら一緒にラーメン食べましょうか」
「ああ…」
俯いて、少し微笑んだ。
聞くべきか聞かないべきか。
ぐるぐると頭を回転させてるうちに、家に着いた。
「とりあえず、お風呂入ってください。服…僕の着れます?」
彼はどの質問にも曖昧に答えた。
とりあえず、持ってる限り大きな服を用意して、タオルを用意した。
お湯の温度は40度、時刻は深夜1時。
袋麺を作りながら、ぼんやりと彼のことを考えてた。
「ごめん…ありがとう…」
消えそうな掠れた声。
驚いて、思わず鍋ごと振り向く。
「い、いえ、ラーメン食べます?」
「うん、」
やっぱり服は小さくて、ズボンは短いし、上も上半身の羽織しか着ていない。
「すいません、服小さなかったけど…」
「ああ、いや、ありがとう」
彼の笑顔はどうにも寂しく見えた。鍋から湯気が上がって、彼の顔が消えてゆく。出来上がった袋麺にネギをのせた。
彼は、バスタオルを肩にかけ、怒られた犬のように、椅子に座っていた。
僕が箸をおく、彼が目を上げる、目線が合う。彼は綺麗で妖しい目をしていた。
「どうぞ、出来たので」
僕はその目を恐ろしいとは思わなかった。
「…ありがとう」
雨音だけが響く部屋で、僕たちはラーメンを啜った。目の前から彼の咀嚼音が聞こえてくる。湯気に顔を埋めながら、息を吐いた。
「…名前なんて言うんですか?」
「…ルカ」
雨音、時計、心音。彼の声はかき消されそうだった。外は静かに、午前1時30分を迎えていた。
「ルカ…」
張り詰めた表情で、苦しそうに名乗るから、僕もなんだかやるせなくなる。
「僕は、シュウです」
少し声に力がこもった。ちゃんと届いてほしいと思った。
「シュウ、ありがとう」
その笑顔は、嘘じゃない気がした。
コメント
7件
うわあ、第2話、すごく温かい空気感でじんわりきました……。雨の夜、ずぶ濡れの見知らぬ男の人に「これどうぞ」って声をかけるシュウさんの行動が優しさそのものだし、ルカさんの疲れた笑顔と掠れた声の描写に切なさが詰まってて。名前を教え合う最後のシーンで「ちゃんと届いてほしい」って思うシュウさんの心が直球で伝わってきて、読んでるこっちまで込み上げるものがありました。次も読みたいです。