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#切ない恋
きなこもち
430
🤎×🩵
「……ねえ、アロハ」「んー?」
「今日、なんか静かじゃない?」
ソファに並んで座りながら、まーくんがこちらを覗き込んできた。
アロハは一瞬だけ肩を揺らしたけれど、すぐにいつもの調子で笑った。
「えー? そんなことないでしょ!」
「そう? なんかさっきから、俺のことちらちら見てない?」
「見てないよ!?」
「えー、絶対見てたって!」
「見てないよ!」
そう言いながら、アロハは慌ててスマホに視線を落とした。
……見ていた。
めちゃくちゃ見ていた。
だって、今日はずっと思っていたのだ。
まーくんに、甘えたい。
もう少しくっついていたいし、できれば頭も撫でてほしい。
なんなら、ぎゅってしてほしい。
でも。
自分からお願いするのは、どうしてこんなに恥ずかしいのだろう。
普段だったら、まーくんが自然に肩を寄せてきたり、頭をぽんぽんしてくれたりする。
そのときは普通に甘えられるのに、自分からとなると急に何も言えなくなってしまう。
「……アロハ?」
「な、なに?」
「こっち向いて?」
「えー、なんで?」
「顔見たいから」
「…………っ」
さらっとそんなことを言う。
本当にずるい。
「……まーくんってさ」
「うん?」
「……そういうこと、普通に言うよね」
「え? だって本当だもん」
「……もういい!」
アロハはクッションを抱えて、ぷいっと横を向いた。
すると、隣からくすくすと笑い声が聞こえてくる。
「なにー? 照れ てんの?」
「照れてないでしょ!?」
「はいはい」
「絶対信じてないじゃん!」
「信じてるよー」
絶対に信じていない。
アロハは頬を膨らませた。
けれど、まーくんが笑っているのを見ると、なんだかそれだけで嬉しくなってしまう。
……じゃなくて。
今日はちゃんとお願いするって決めたのだ。
アロハはクッションをぎゅっと抱きしめ、こっそり深呼吸した。
「……まーくん」
「ん?」
「……あのね」
「うん、なに?」
優しい声で返事をされる。
それだけで、心臓がどきどきしてしまった。
「…………」
「アロハ?」
「……やっぱなんでもない!」
「あれー? 気になるんだけど!」
「なんでもないもん!」
「そっかぁ」
まーくんはそれ以上聞いてこなかった。
……あれ?
聞いてこないの?
いや、聞かれたら困るのだけれど。
でも、聞いてほしいような気もする。
アロハはちらりと隣を見た。
まーくんはスマホを見ている。
……なんか、寂しい。
自分からお願いしたいくせに、いざとなると何も言えない。
そんな自分が嫌になって、アロハは小さく息を吐いた。
すると。
「……ねえ、アロハ」
「ん?」
「俺、くっついてもいい?」
「……え?」
思わず顔を上げる。
まーくんは、いつもの優しい笑顔でこちらを見ていた。
「今日、アロハから全然くっついてきてくれないから、俺から行こうかなって」
「…………っ」
「嫌?」
「……嫌じゃ、ないけど」
「じゃあ、いい?」
アロハは小さくうなずいた。
まーくんが肩を寄せてくる。
腕が触れて、体温が伝わってくる。
それだけで、さっきまでの寂しさが嘘みたいに消えていった。
……あったかい。
嬉しい。
でも、本当は。
自分から、これを望みたかった。
「……まーくん」
「んー?」
「……あのさ」
「うん」
「…………」
言うなら、今しかない。
アロハはぎゅっと手を握りしめた。
「……ぎゅー、って」
「ん?」
「…………ぎゅーって、してほしい……」
言えた。
とうとう言えた。
恥ずかしすぎて、顔を上げられない。
アロハはクッションに顔を埋めた。
「……っ、あの、今の、忘れてもいいから……!」
「えっ、なんで!?」
まーくんの声が、ぱっと明るくなる。
「だって、恥ずかしいんだもん……!」
「えー! 俺、めっちゃ嬉しいんだけど!」
「……ほんと?」
「ほんと!」
まーくんはクッションをそっと横に置くと、両腕を広げた。
「おいで、アロハ」
「…………」
「ぎゅーってするんでしょ?」
「……うん」
アロハは少しだけ迷ったあと、そっとまーくんの胸に飛び込んだ。
次の瞬間、優しく抱きしめられる。
背中に回った腕が、ぽんぽんと優しく動く。
「……えへへ」
嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「なに、嬉しいの?」
「……うん」
「そっかぁ」
まーくんが、アロハの頭をゆっくり撫でる。
その手が気持ちよくて、アロハは目を閉じた。
……あ。
そういえば。
もうひとつ、お願いしたかったことがある。
「……まーくん」
「なーに?」
「……頭、もっと撫でてほしい」
「ん、いいよ」
すぐに返事が返ってきた。
アロハは少しだけ顔を上げた。
「……え、いいの?」
「なんで? いっぱい撫でてほしいんでしょ?」
「……っ、そうだけど!」
「じゃあ、いっぱい撫でてあげる」
まーくんは笑いながら、何度もアロハの頭を撫でた。
アロハは照れくさそうに笑って、再び胸元に顔を埋める。
「……まーくん、優しいね」
「アロハには優しくしたいもん」
「…………っ」
もう、本当に。
どうしてこの人は、こんなに恥ずかしいことを平気で言えるのだろう。
「……まーくん」
「うん?」
「……好き」
自分でもびっくりするくらい、小さな声だった。
けれど、まーくんはちゃんと聞いていた。
「……え?」
「……っ、だから! 今のは、その……!」
「アロハ、もう一回言って?」
「えー! なんで!? 聞こえたでしょ!?」
「聞こえたけど、もう一回聞きたい!」
「やだー!」
アロハはまーくんの胸をぽすぽすと叩いた。
本気で嫌なわけではない。
ただ、恥ずかしいのだ。
すると、まーくんはアロハの背中を優しく撫でながら、耳元で囁いた。
「俺も大好きだよ、アロハ」
「…………」
「ほんとに、大好き」
アロハはとうとう顔を隠してしまった。
耳まで真っ赤だ。
「……まーくん、ずるい……」
「えー? なんで?」
「……そういうこと言われたら、もっとくっつきたくなるでしょ……」
言ってから、アロハははっとした。
……今の。
今の、聞かれた。
絶対に聞かれた。
恐る恐る顔を上げると、まーくんはとびきり嬉しそうに笑っていた。
「……じゃあ、もっとくっつこうよ」
「…………ずるぃ」
今度は、アロハから腕を回した。
ぎゅっと、まーくんに抱きつく。
さっきよりも、少しだけ大胆に。
「……ねえ、まーくん」
「ん?」
「……今日、もうちょっとだけ、このままがいい」
「うん。いいよ」
「……ほんと?」
「もちろん」
「……じゃあ、もうちょっとだけ……」
「うん」
「…………あと、もう一回ぎゅーってして?」
まーくんは笑いながら、アロハを抱きしめ直した。
「はい、ぎゅー!」
「……ふふっ」
嬉しくて、幸せで。
アロハはその腕の中で、何度も笑った。
そして、まーくんには聞こえないくらいの小さな声で、そっと呟く。
「……明日も、お願いしてみようかな」
「……ん? なんか言った?」
「えっ!? な、なんにも言ってないよ!?」
「ほんとー?」
「ほんとだってば!」
まーくんは不思議そうに首を傾げたあと、アロハの頭をぽんぽんと撫でた。
「ま、いっか。今日はいっぱい甘えてね」
「……うん!」
アロハは嬉しそうにうなずくと、もう一度、まーくんの胸に頬を寄せた。
今度は、恥ずかしさよりも嬉しさのほうが大きかった。
だって、
まーくんは、俺が勇気を出して伝えた小さなお願いを、ひとつも笑わずに叶えてくれる人だったから。
コメント
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第1話、すごく良かったです!アロハの「甘えたいけど自分から言えない」もどかしさと、まーくんの空気読んで自然に受け止めてくれる優しさに胸が温かくなりました。特に「おいで、アロハ」から「ぎゅー!」の流れ、思わずこっちが照れましたね。最後に「明日もお願いしてみようかな」と小さく決意するところ、成長を感じられて好きです。続きが気になります!