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他の皆が来た。初対面の人もいる。最初に見て思ったことと言えば、人の顔をじっくり見ることなんてなかったから、なんだか新鮮。けど、普段とは変わらない。表情を見るだけでltとupprnが喧嘩してるのは分かるし、tycさんの目をみれば光っているように見える。音は聞こえないけれど、こうやってみんなで会えたことに嬉しさを感じる。その時、とんとん、と肩を叩かれた。後ろを振り返ると、この村の村長、mmnt mrsだった。
『自己紹介しますよ。初対面の人もいるでしょうから。』
そう紙に書いて見せてきた。自分は指でOKサインを出すと、iemnが用意してくれた椅子に座った。
『皆さんには自己紹介シートを作って頂きます!と、言っても名前を書くだけですが! 』
mmntmrsがスケッチブックをめくったと思ったらそのような文章が書いてあった。また、次のページをめくる。
『紙を渡すのでそこに自分の名前を書いてください!本名は書かなくて大丈夫です!』
スケッチブックを見せた後、立って、紙を配りだした。自分はomezkhtmnguとフルネームで書く。その下に、バスケットボールの絵を描く。 暫くするとmmntmrsが、
『できましたか?』
とスケッチブックに書く。村長は、皆が返事したのを確認し、左からと指を差した。
『upprn』
『lt ヘアピンつけときゃいい問題じゃない』
『zncps ただのくま』
『gso ぐさぁぁぁぁ!!!』
『tyc 弱いけどゆるして』
『kk 🍬』
『rk Мじゃない』
『hn ねここそせいぎ』
『mzr ⛄️』
『srimr 最年少かも?』
『mtw じゃがりこ』
『rir- ロンキ、サンダー…』
『gnms 現実ではばくはつしません』
『iemn クトゥルフさそって』
『omezkhtmngu 🏀』
『mmntmr 村長です』
皆の個性が出ている。文字の形とか、周りの文字とか。
『自己紹介が終わったので、部屋分けしましょう!!諸事情により、2人1部屋なんですけど、どうやって決めます?』
「〜〜〜!!」
「〜〜〜〜?」
「〜。」
聞こえないな。なんにも。何か言ってるのはわかるんだけどな。
『多数決で、くじで決めたいと思います』
自分は別に誰とでもいいな。
部屋割
女部屋
hn×kk
tyc×lt
up×mzr
rir-×ht
gs×mm
男部屋
zn×ie
mt×sr
rk×gn
(rir-か、)
『では各々部屋に移動しましょう!』
「結構広いな」
「〜〜?」
「…ん?」
『喋れるんですね』
「周りからどう聞こえてるかとか、わからないからあんまり喋らないけどね」
『物、整理しますか。』
(これはここに、バスケットボールはここに置いておこうかな。)
「わっ!?」
誰かに突き飛ばされたと思い、後ろを見ると、本に下敷きにされたrir-の姿。
(自分より弱いのに、守ってくれたんだ。)
「ありがとう」
音が聞こえないことの弊害。危険な時に察する事ができない。火事のサイレンだって、地震…はわかるか。火事はわからないからな。感謝と謝罪を心の中で何回も唱えながら、自分は急いで本を退ける。rir-の腕には痣ができている。
「…っ、ごめんな。」
「〜〜〜〜〜〜。」
ストレスで耳が聞こえなくなって、皆に迷惑掛けて。
(ごめんなさい…っ、)
ストレスのせいって、馬鹿みたいで。
過去
生まれた頃から、親がいなかった。お父さんは離婚、お母さんは自分のことを産んだときに死んでしまった。だから、赤ん坊の時から施設育ち。施設は、いい場所。皆が集まって、遊んでいたり、温かいご飯を食べたりして幸せだった。だから、学校も温かい場所なのかなって、思ってた。これまで施設で勉強してきて、6年生の時に、小学校に入ることになった。
「望月八です。宜しくお願いします。」
そのような自己紹介をする時には皆はニコニコで拍手をしてきた。
(やっぱりここもいい場所なのかな。)
そんな思いを持っていたのが悪かったんだ。小学校に来てから、1ヶ月が経った頃の事。お手洗いから戻ってくると、クラスがざわついていた。なにかな、と思い耳を傾けると、
『え、望月って親居ねーの?』
『そうだよ、親いないんだよ。』
『だからか、あんなにウザいのは。 』
『教育がなってないんじゃない?』
そのような会話だった。ウザい、その言葉が耳に残った。
(ウザい、自分が?なにか、やらかしちゃった、かな?)
頬に涙が伝っていく。陰口が飛び交う教室に耐えられず、廊下を走っていく。
「おい、廊下を走るな!!」
先生にそう言われても、止まらない。止まりたくない。廊下を走るのは、悪いことなのに。
走って、走って、施設にまでついていた。
「望月さん、どうしたの?学校は?」
その時は、感情がぐちゃぐちゃで、施設の人に心配されても、無視して、走る。 寝室の隅っこに座って泣く。大声をあげて、泣く。
「望月さん、なにがあったの?」
「や、こないで!!」
その頃はまだまだガキだから、そんなことしか言えない。
陰口を言われた次の日、重い体を起こして、学校に行った。そしたら、机に落書きと花瓶に置かれた花があった。
『うざい』『親いないのまじ?』
そんな書かれた言葉がちくちく、心に刺さる。
(親いないのって、そんなに悪い?)
だんだん、自分が嫌になってくる。
その日、給食を机から落とされた。つまづいて転けたとか言ってるけど、わざとだって、わかってた。
ずっといじめを受けてきたせいで、耳が聞こえなくなって、散々だ。自分の人生を崩されたんだ。でも、給食を落とされた時、少食だからって給食をわけてくれた女の子が居た…気がする。いつも、自分の席に座って、眠ったふりをしている子、だったかな。