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わどぴーʚ🌶 ɞ
5,158
ミユキアルカラム
282
ローラ📽️
92
AM10:00
「いらっしゃいませー!!」
澄んだ声とともに、ドアの小さな看板をめくる。「Open」と書かれたその看板を。
時は遡り、六時。
「カフェの手伝い?」
「はい。カフェアビアントは人気なお店だと聞きました。ランチどきはとても賑わい、兄弟の方々も手伝いに来るんですよね?」
「ええ、そうね。でもそれで、あなたが手伝う理由には・・・」
「僕は、居候させてもらっている身でもあるんです。手伝って、この家の迷惑にならないように、貢献できたら良いなって」
「・・・わかったわ。でもあまり、無茶はしないで」
「・・・!!ありがとうございます」
そして、現在に至る。
「常連さんですよね?いつもご利用ありがとうございます」
「では、注文を繰り返します。サンドイッチセットと、オレンジジュースですね。かしこまりました」
ぼそっとショコラがつぶやいた。
「・・・すごいわね。ワタル。二時間教えただけなのに、もうベテランのようだわ。常連さんの顔も覚えてしまうし」
「即戦力、ランチどきは救世主だね」
「—かしこまりました。ビターさん、オムライスと麦茶を!!」
「合点承知、ワタル」
カランカラン。扉の鈴が鳴った。
「ここのカフェアビアント、サンドイッチが美味しいんだよ」
「ウチ、スイーツも食べたいな。オススメはなんかないの?」
「えっと、何だっけ・・・?」
「スイーツのおすすめはチョコレートケーキになります。ご注文になりますか?」
「・・・そうなんだ!じゃあ、一つ」
ふう。お客さんの顔、注文したもの、提供できるもの、テーブルの位置、会話、全て頭に入っていく。・・・これも、あの世界の仕事のおかげかな。
「あぁん!?うるせえよ。持ってきたやつ呼んでこい、早くしろ、おい!!」
初めてのクレーマーだ。確か、あの席は僕だ。提供した人は。
「はい、何か不都合が・・・」
「不都合が、じゃねえんだよ。これ、見ろよ。俺、潔癖症だから。こんな髪の毛入ったパスタ、食えるわけないんだけど。どう責任取るつもりかって聞いてんだよ。あぁん!?」
確かに、髪の毛がパスタの中に入っている。でも、その髪の毛の色は、黒。僕の髪の毛の色は茶色だから、違うんだよね。そもそも、帽子の中にうまく隠してるつもりのお前の髪の毛の色、黒だよね。
でも、ここで否定してもいちゃもんだって余計に状況が悪化するだけなので、ここは素直に従っておこう。
「ああ、本当だ。誠に申し訳ございませ」
「謝るんじゃなくて、早く慰謝料よこせよ」
バシャッ。
持っていた水の入ったコップをかけられる。床に水が滴り、濡れて不細工になった自分の顔がこぼれた水に写って見える。その間にショコラさんがクレーマーを外に退場させていくのが見えた。
ドアがいつもより、乱暴にしまった。
「すみません、自分のせいで・・・。モップと雑巾借りますね」
モップで、こぼれた箇所を綺麗に吹いていく。その上から雑巾で乾拭きをして、さらに綺麗にしていく。持っていたハンカチで、濡れた顔を拭いていく。何事もないように、お客さんに料理を運んでいこうとする。
ガシッ。
「ワタル・・・。休んでて良いのよ。さっきクレーマーに水をかけられたばかりでしょう。少しは自分の体を労っても」
「全力休憩。無茶してる」
別に大丈夫なのに。それに、ここで働くのは楽しいのに。
「大丈夫ですから」
こんな顔は初めてなんだ。無理して作る笑顔なんて、まだ習っていなかったんだ。
引きつった笑顔は、さらにショコラさんとビターさんを心配させるものになっていた。
PM17:00
「・・・・・」
何も思わない。感情が、心が空っぽになってしまったみたいだ。衝撃と絶望で感情を言葉にするのが苦しくなってしまったのかもしれない。僕がカフェにいたら、また迷惑をかけてしまうかもしれない。
ちゃんと言おう、もうカフェアビアントには顔を出したくないって。
「ショコラお姉ちゃん、ビターお兄ちゃんなんかワタルくんが変だよ」
「ガーナの言う通りだよ。目が笑ってないっていうか・・・。何かカフェであったのかい?」
「・・・今日クレーマーが居たの。その対処にワタルが行ってね、水をかけられたの」
「!?」
「ワタルは大丈夫だって言っていたけれど」
「そんなの絶対嘘に決まってるにゃ!!」
「きっと迷惑をかけたくないとか思ってるんだろうけど、お見通しだよ」
「・・・吃驚仰天。ショコラ、今日のクレーマー、たまたま僕らのターゲットだよ」
「姉さん、僕が行く」
「・・・カカオ、分かってるだろうけどこれはアルカラム家に喧嘩を売ったとみなしたわ。地獄の苦しみを与えてやりなさい」
「分かってるよ、姉さん」
カカオはそう言って、アルカラム邸を出て行った。
「(お兄ちゃん、ガチだにゃ)」
この会話を二階の部屋から聞いていたわたるは、こう思っていた。
過保護すぎるだろ、と。
クレーマーさん、人生終了のお知らせだね、とも思わなくも無かった。
最後に、ワタルはこう呟いた。
「思い出させるな。ただの人間風情が」
コメント
1件
第4話、読み終わりました。ワタルくん、カフェの仕事をすごく覚えるのが早くて、それでいてクレーマーへの対応も冷静で…でも無理して笑顔を作るあたりが切なかったです。ショコラさんたちの過保護な反応、最後の「ただの人間風情が」というセリフがすごく気になる!クレーマーさんの今後が心配ですが、アルカラム家の結束が感じられてほっこりもしました。続きが楽しみです!