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最初で最後のラブレター

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最初で最後のラブレター

1 - 最初で最後のラブレター

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2025年10月06日

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※誤字脱字・nmmn

ご感想お待ちしております。誰のセリフかわからない等、質問はいつでもお答えします。(訂正も加えます。)





最初で最後のラブレター 小柳ロウ


星導ショウと付き合って、違和感を覚えたのは初めてだった。


「…やっぱ、お前…俺のことなんか興味ないもんな…」

本当はそんなこと言いたくない。そんなことないって分かってるのに俺の口は言うことをきかずに動いてしまう。目には涙が溜まっていて、目の前で座っている彼が歪んで見えてしまう。

「だから違いますって…」

「……」

「どうしたんですか、何かあったんですか?話なら聞きますから、ねぇ…」

かれこれこのうような会話が30分は続いている。涙を溜めながら震えている俺を心配そうに見つめてくるお前。事の発端は先月、星導の行動が大幅に変わったということだ。

いつもは俺との時間を作ると言って丸1日休みを取っていたのもなくなりほぼ毎日任務と鑑定の仕事を入れている。そして、触れ合うことも、行為もすることもなくなり、一緒に住んでいるのに1日話さないということもあった。

なのに星導はいつも通りの対応をしてくる。何かあったら言ってくれればいいのに…俺ってそんなに頼りないのか?そうやって一人で抱え込んでいたのが爆発してしまい、今の状況になっている。言いたくないことを、本当は思っていないことを言ってしまいそうと怯えながら星導を見つめる。

「いつも……いっつもそうやって言って…!」

「…小柳くん…?」

あぁ、駄目だ、そんなこと言っちゃいけない。止まれ…動くな…何も喋るな…

「俺の気持ちに何も気づいてない…!俺の…俺の何知ってんだよ…!」

「…ぇ…?」

違う…そんなこと思ってない。やめて…そんなに悲しまないで…

「っ…ぁ…」

声が出ない…喉から何か出そうな恐ろしい感覚に必死に耐える。

「…小柳くんどういう意味ですか、それ」

「…ぇっ…」

星導は悲しそうな顔で俺を見つめる。

「俺の小柳くんに対する気持ちは嘘だって言いたいんですか?」

「…ち…が…」

言葉が詰まってうまく話せない…違うって伝えなきゃいけないのに…

「…俺に対する小柳くんの気持ちは嘘だったってことですね…」

「…っ」

違うよ、大好きだよ、やめて…大好きだって…声が出ないんだよ、助けてよ…

「…そうですよね…大丈夫ですよ別に、」

「…っ!ち…ぁ…」

そんな悲しい顔しないで…違うんだって…

「俺が小柳くんを愛してた時間が無駄だったってことですよね。」

「ほ…し…」

無駄じゃないよ…全部宝物だよ…星導に愛された時間…全部宝物だって…!

「ごめんなさい、無理に付き合わせちゃって。」

「ほし…る」

無理に付き合ってなんかない、好きだから…付き合ってるんだよ…

「小柳くんの大切な時間を奪っちゃってごめんなさい。」

「お…い」

どの時間も大切な時間だよ…宝物のような時間だよ・・・

「あ、俺があげたプレゼント全部捨てちゃって大丈夫ですよ、邪魔でしたよね」

「ねぇ…」

邪魔なんかじゃない…大切なものだから…

「俺にに気使ってくれてたんですよね」

「星導…」

違う…気使ってなんかない…星導に甘えるのが好きだから…星導が好きだから…

「ごめんなさい…俺もう小柳くんと関わらないので、本当に…俺…」

「…ショウ!!」

星導はどこか正気を失いそうになっている。俺は咄嗟に彼の名前を呼ぶ。過去が蘇るから嫌だった。いつもは絶対にしない呼び方でで。

「い”ッ…!?」

「…!?おい…星導…」

星導は頭に手をやりふらつきながら屈んだ。

「……出てって…くだ…さい…」

苦しそうにしながら一言、俺の顔を見ずに言った。

「あっ…ぇ…」

「…早く!!」

あそこまで声を張り上げている星導に逆らえず、俺は咄嗟に家を出た。外は雨と雪が混ざり合いながら降っていて、部屋着でコートを一枚は羽織って、それだけで済ませているから準備して外に出るときよりも寒く感じる。そして、家から結構な距離のある古びて使われなくなった屋根付きのバス停で腰を下ろす。

寒さで手がかじかむ。寒いよ、寂しいよ…俺は星導が大好きなのに…でも…星導も俺の居ない方が…きっとそうだ。俺への愛が冷めてしまったんだ。だけど気を使って好きなままでいてくれたんだ。

そうだ、これでよかったんだ。どうせ言い出せない俺の本当の気持ちなんて届かなくてもいい。信じたくないことが頭の中でぐるぐるしてしまう…君から貰った感情も、君に貰った言葉も、些細な気づきも、プレゼントも、笑顔も、思い出も、全部…全部、今日で忘れよう、そうだ、そうすればいいんだ。そうすればきっと楽になるし、新しい道も探せる。それに他の道として、恋人ではなく友達として、彼とまたもう一度やり直すことができる…。

そんな……自分にはできもしないのに…そう考えて気持ちを紛らわす。逃げようと、忘れよう考えてる自分が嫌になる。出来ないって分かってるのに考えてしまう自分が本当に嫌になる。考えるだけで辛くなってしまう…。

こういう辛い気持ちの時には君が隣にいてくれたな。辛いことがあったら君が話を聞いてくれたなぁ……なぁ駄目だ…考えれば考えるだけ思い返してしまう…もう後戻りはできないって、もう元の形に戻れないって分かってるのに、自分のせいでこうなったのに…辛いよ…なぁ、どうすればいいんだ?前みたいに隣にいてよ、隣で笑ってよ、俺の名前を呼んでよ、俺のことを頼ってよ、俺を愛してよ…

声を殺して泣きながら零れた涙と雨が混ざり合う。

「…会いたいよ……」

この声が、彼に届くことはないだろう…



あれからどれ程の時が流れたのだろう。俺の気持ちを塞ぐかのように視界を覆っていた雪は止んでいて、あたり一面は雪が積もっていた。

雪は大人1人分の高さまで積もっていて、誰かが来れるような状況でもなかった。そういえば、西で大寒波が来るそんな話で星導が盛り上がっていたな…このままどうなるのだろう。きっと助は来ない。

そう思い、目を閉じようとした時だった。ポケットの中にあるスマホの振動に気づき、ポケットからスマホを取り出した。

もちろん、星導からの連絡は一切ない。自分の行いでそうなったのに心に穴が開いた感覚になる。そして、誰から連絡がきたのかメッセージをスクロールしてた時だった。

「おい小柳!星導が倒れた!何処にいる?早く来い!」

さっきの振動はライからの新着メッセージだった。星導が…?どうして…メッセージに面食らっていると、スマホの電源が切れてしまった。そうだ…スマホの充電なかったんだ…

「…クソ…」

こんなことになるなら計画的に充電しておくべきだった…そう思いあたりを見回していると、視界に大きな山脈が入った。

この山脈はきっと西と東の境界線となっている山脈だろう。こんな所まで来たのか…あそこならきっと、寒さと雪はしのげるそう思い、山脈の中へと足を踏み入れた。

不安と自身の行動、後悔色々な気持ちの重圧に押しつぶされそうになる。

森の中は思ったよりも暗く、一般人が入ったらきっと生きては帰ってこれいくらいに妖魔がうじゃうじゃいる森だった。

山脈と言ってもとても大きい山脈だ。妖魔が多い所もあれば安全な所もある。今回俺は外れを引いてしまったみたいだ。

大丈夫…夜が明けるまで…そう思い、森の中を歩き続ける。森の中で過ごし俺はとあることに気づいた。それは西で稀に起こる極夜と言う夜が明けない現象だ。これはきっと大雪が続いたからだろう。

夜が明けないのは流石にマズいと思い、森を抜け出そうとスマホを取り出す。一か八かだ一瞬だけ映れば…そう思いスマホの電源を押す。

「…来た…!」

スマホの電源は正常に着いた。ここからは時間との闘い、そう思い二日前に来ているライのメッセージやその他大量に来ているメッセージを無視し、マップを開く。

現在地を確認すると俺が今いる所は東寄りにある海岸近くの山脈だった。ここから本拠点がある西へ戻るのには最低でも三日…妖魔と闘いながらではもっと時間がかかってしまう…でも行くしかない。

俺は一瞬で電源が落ちてしまったスマホを握りしめて再び歩き始めた。


「……」

暗くて寒い、そして妖魔が沢山いる。そんな森の中に入ってからの記憶がない。気づけば俺は西の中心にある病室の中にいた。

自身の腕には点滴が繋がっていてベットの横にあるサイドテーブルには「起きたら連絡しろ!」とかなり慌てた字で書かれていたメモがあった。

この字体…きっとライだろうと思い、再び眠りにつこうとした時だった。

「あっ…!ロウ!!やっと起きた…」

慌ただしく音を立ててドアが開くとライが入ってきた。そして俺が大丈夫と頷くとライは安堵し、ベット横の椅子に座り、現状確認を始めた。

「ロウ自分が何やったか覚えてる…?」

ライは少し怒り気味で俺に聞いてきた。俺はライに自身と星導の間に何があったかを話すべきか話さないべきか、星導は無事なのか何処から話せばいいのか迷っているとその様子を見たライが話を進めた。

「あのさぁ…偵察任務の応援が必要ならそう言ってくれればよかったじゃん…」

「…は…?」

ライはため息をつきながら俺が状況が読み取れてないことを確認し、少し開いていたドアを閉め、もう一度俺の前へと座った。

「…あのなぁ…お前はもうちょっと自分の行動範囲を見直したほうがいいぞ。」

ライは俺たちの関係に感づいていたらしい。星導から事情を聞き、本部には大雪の偵察任務中に何らかの原因で通信が切れてしまい消息不明となっていた。と報告してくれていたらしい。

「…すまん…」

ライは俺が位置情報を確認してなければ救えなかった。

そして倒れていた俺を連れ出してくれたのはカゲツと説明した。

その説明を聞いた俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになり、下を向き、謝ることしかできなかった。

「まぁいいよ別に…起きたからもう退院は出来ると思う、しばらくは俺の家に泊まっていきな。」

「いや…でも…」

これ以上迷惑をかけるのはと思い、断ろうとするが、「お前今どうせ星導と話せないだろ」と図星を指されてしまい、ライの家にお邪魔させてもらうことになった。


ライの家は準備がいい、ライの家は西の中でも国立病院や大学などがある発展している地域にあるマンション住んでいるため、他のメンバーが多忙な時に泊めさせてもらうことが多い。そのため、メンバー用の洋服が常備されていたり、中々の逸材だ。

そこから数日、ライとの共同生活を送っていた。俺もぼちぼち任務に復帰できるようになっていた。

生活リズムや体調が落ち着き始め、だけど星導との記憶が蘇り、寂しい気持ちに浸る。なんて虚しい生活が続いていた。

「はぁ…」

自分が原因なのに何勝手に落ち込んでいるんだろう…。夜、眠るたびに優しく包み込んでくれる感覚に寂しく感じ、泣きそうになるのを堪える。そんな日々に限界を迎えようとしていた。



「ロウはさ、根は優しいんだから一回くらい気使わずに甘えてみたら?」

「ぇ…?」

夜遅く大雨の中、2人で夜間任務を終え、ライの家へと向かっていた時だった。

「…行ってこい。」

そう言われ、俺は唖然としているとライは俺の背中を強く押した。

会いたくない、会えばきっと今までの関係は崩れてしまう。そう気持ちは訴えているのとは裏腹に玄関に向かって走っている俺、大好きな、大好きな彼に会うために。玄関のドアを開けるとそこには星導が立っていた。

「帰るよ、」

そう言われ、俺は星導の胸に飛び込む。それからどれ程泣いたか分からない。星導は何も言わずに俺の頭を撫でてくれた。



家に帰り、2人向かい合ってリビングで正座をする。星導は何かを決めたように深呼吸をしている。仲直りは出来たのだろうか…俺は不安になりながら下を見つめている。

「小柳くん。」

真剣に名前を呼ばれる。真剣な眼差しを向けられることが滅多になく緊張し目を合わせられるきょろきょろしてしまう。

「ぇっと…俺…」

「ごめん…」

俺がしどろもどろ言い返そうとした時、星導は俺を強く抱きしめてきた。

「ちょっ…どうし…」

星導は何も言わずにただ俺のことを強く抱きしめてきた。

「っ…なん…だよ…」

ここ最近ずっと避けてきたくせに…ずるいよ…なんで…なんでこんなに好きなんだよ… 星導の温もりはとても安心する温もりで、今まで堪えてきた感情が溢れ出す。ごめんと、とても消え入りそうな、辛そうな声が上から聞こえる。そこからしばらく、雨音と一緒に静かな泣き声が部屋に響き渡る。


「小柳くんのお顔ぐしゃぐしゃだ…」

「うっるせぇ…お前もだ…」

しばらくして、今までこんな長時間触れ合ったことがなくそろそろ俺の心臓が持たないと思い、星導をゆっくりと離す。それに気づいた星導は微笑みながら俺の涙を拭ってくれた。

「…で、どうしてなんだよ…」

流石に床で座り続けるのは良くないとソファーに場所を移した。そして俺はライに言われた通りに、自分のしたいように甘えようと星導の肩に寄りかかった。星導は驚きながらも嬉しそうに俺の肩に腕を回した。

「えっと…実は体調が優れなかったんです…」

いつもは目を合わせて喋ってくれる星導が視線を下に向けながら話した。これは相当俺に気にして欲しくなかったんだろう。

そして俺はなんで?と問いかけるように星導にさらに体重をかける。

「……えぇ…」

俺の言いたいことに気づいたのか星導はどこか気まずそうにしている。

「…心配なの…ただそれだけだから…」

普段はこんなこと絶対言わないだろう。だけどこのまま放っておいたらいけない気がしたから。

「どうしたんですか?小柳くん、なんか今日変ですよ…」

今までこんなに甘えたことがないからか星導は俺に何かあったか不安に思っているのだろう。

「お前のせいだよばーか…」

そうだ、お前のせいだよ俺だって本当は普段こんなに甘えたことないから引かれてるんじゃないかって内心ビクビクだし。

それでも星導のことが好きだからその思いで普段は絶対にしない距離感で触れ合ってるんだよ…お前なら分かるだろ…

「…そうですか…」

「そーだよ。」

そうして、星導は心が折れたのか幻滅で下さいよと一言残して事情を説明した。



事の発端は付き合ってから初めて俺が体調を崩してかららしい。

最初は軽い頭痛などで風邪が少し移った程度だと星導も思っていらしいが徐々に頭痛が悪化し、吐き気もしていたらしい。しかも頭痛や吐き気がしたり、悪化したりするのは俺と触れ合っている時や話している時、酷い時は俺が視界に入るだけでもだったらしい。

この症状に流石の星導も違和感を感じたらしく、医者に事情を話したらしいが明確な診断結果が出ず、現状は対象の人物とは距離を取るそれだけしか対策がなかったらしい。それで距離を取っていたらしい。だけど今は症状が完全に治ったらしく、本人曰く大丈夫と言っている。



「んで、言ってくれなかったんだよ…」

相談してくれれば状況が変わっていたかもしれないのにと俺は震えた声で星導に言いかけた。

「…本当にごめんなさい…迷惑かけたくなくて…」

泣きそうになりながら体重をかけている俺を星導は自身の体へと寄せ、両腕で俺を持ち上げ、向かい合うように抱きしめてきた。

そして俺は星導に顔を見られないように星導の胸に顔を埋めた。

「俺、ずっと頭痛が酷くて、頭の中で自分の知らない記憶と闘ってたんです…ごめんなさい本当に…俺、小柳くんに酷いこと沢山言っちゃいましたよね…」

俺の頭を撫でながら少し震えた声で。

「違う…星導は悪くない…俺が…俺が…」

違うよ…何も知らずに勝手に勘違いしてた俺が悪いんだよ…

「…俺、小柳くんのこと大好きです。」

「…っ!俺も…!星導のこと好き…だから…!」

そうだ…これを伝えたかったんだ。ちゃんと言葉にして、自分の口から、この言葉を伝えたったんだ…

「…んふ…小柳くんから初めて聞きました。」

星導は嬉しそうに俺の頭を抱え抱きしめた。これほど嬉しそうに星導が話しているのは初めて聞いた。その幸福感で胸がいっぱいになる。

「俺、もう小柳くんに隠し事しません。本当はもっと沢山触れたいことも全部隠しません。」

星導は前よりもとても嬉しそうな声で衝撃的な事実を伝ええる。俺は星導の衝撃的な言葉に鼓動が早まりながらも

「俺も…もっと…星導に甘えるわ…」

星導の言葉よりも何千倍にして返してやろう。そう思い普段は…これからも絶対に言わないだろうと思いながら星導を見上げながら言う。

「…っ~~なんですかそれぇ~…!」

俺の言葉は星導にクリティカルヒットらしい。星導の照れる顔に満足しながら俺たちは唇を合わせた。深夜に鳴り響く雨音と共に、初めて直接伝える感情はきっとお互いにとって、最初で最後のラブレターとなるだろう。


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