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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「ところで大司祭様。

ガルーナ村の一件で、国から何かお話はありましたか?」


引き続き大司祭様と話をしていると、エミリアさんがそんな話を始めた。


「ああ、その話か。

大聖堂が証人という形になって、もしもアイナさんがご存命なら、褒賞が出るということにはなっていたんだが――

……アイナさん、近い内に一緒に王城に来て頂けないでしょうか」


褒賞! ……は欲しいけど、王様には会いたくない!


――っていうのが本音ではあるんだけど、でもどうせ、いつか行くことになるよね。

『疫病のダンジョン・コア』の件もあるし……。


「分かりました。しばらく王都に滞在しますので、ご都合良いときにご一緒させてください」


「ありがとうございます。

国王陛下に報告した際に、ぜひ一度会いたいと仰っておられまして……」


……やっぱり?

あ、でもそのときはまだ私の生死は分からなかったときだよね。

そのあとにガルーナ村へ兵士が派遣されていたみたいだけど……そこからの報告は、もう戻っているのかな?


戻っているなら、私が生きていることが伝わっているかも――

……って、何だかややこしいなぁ。まぁ1回、それは置いておこう。


「ちなみに、謁見はいつ頃になりそうでしょうか」


「申請も要りますし、1週間ほど掛かると思います。

日程が決まりましたら、こちらから使者を出しますので。

……ところで、滞在先はどちらになりますか?」


「王都には昨日着いたのですが、昨晩はエミリアさんに紹介して頂いた宿屋で一泊しました。

これからのことは、今のところ未定です」


「ふむ……。

それでしたら、大聖堂でお部屋をご用意することもできますが」


そんなありがたい申し出が大司祭様からあったものの、エミリアさんの表情が何だか渋い。

事情は知らないけど、それならここは断っておこう。


「お気遣いありがとうございます。

宿屋を含めて、この街をもう少し見たいと思っておりますので……」


「なるほど、承知しました。

必要ができたときには、またご相談ください」


「はい、そのときはよろしくお願いします」


「滞在先が決まりましたら、わたしが伝えに参りますね」


「おお、そうしてくれると助かる。エミリア、よろしく頼むよ」


「はい!」


――そのあと30分ほどお話をしてから、大司祭様の部屋をあとにした。


エミリアさんの話によると、大司祭様がここまで時間を取ってくれるのはとても珍しいそうだ。

王都にいる間は、基本的にはとても忙しいのだとか。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「さて、レオノーラさんに会いに行くんですよね」


「むぐっ……」


私の言葉に、エミリアさんは変な声を出した。


「ちょっとツンツンしてるところはありましたけど、エミリアさんのお仕事を代わりにやってくれていたみたいですし。

何か問題でもあるんですか?」


「いえ……レオノーラ様は、可愛くてわたしも好きなんですよ……?

もう少し優しく接しては頂きたいですが……」


「なら、そんな嫌がることも無いのでは?」


「い、嫌がってるなんて……!

ああ、えぇっと――」


エミリアさんは辺りを見回して、誰もいないことを確認した。


「あの、レオノーラ様にはお姉様……オティーリエ様、という方がいらっしゃいまして……わたし、この方がとても苦手なんです。

レオノーラ様はオティーリエ様と仲がとても良くて、一緒にいることも多いので――」


……なるほど。

エミリアさんはレオノーラさんにビクビクしているのではなくて、オティーリエさん? にビクビクしているのね。


「レオノーラさんと同期っていうことは、オティーリエさんは先輩みたいな感じなんですか?」


「職位は同じなのですが、一応そういうことになりますね……。

あ、そうだ。アイナさんもあんまり無茶なことをしないで頂けると……」


「無茶って……」


「ああ、いえ。アイナさんから何かするということは無いと思うんですが、売り文句に買い文句……っていうじゃないですか。

頭にきても、冷静にご対応頂ければ……と」


「ああ、そういう系なんですね」


何となく、クレントスのヴィクトリアのことを思い出した。

そういえば元気にしてるかな? 風邪のひとつくらい、引いていて欲しいけど。


「ちなみに先に言っておきますが……。

オティーリエ様は、この国の王位継承順位が第22位の方なんです」


「……え。王族なんですか?」


「はい。この国の王族は、子供の頃から大聖堂に入れられることがあるんです。

ちなみにレオノーラ様もそうなんですよ」


「ひぃ……。も、もしかしてエミリアさんも!?」


「いえ、わたしは普通の庶民です……」


あ、そうなんだ。

もしかしたら……って思ったけど、さすがにそんなことは無かったか。



「――あ! エミリア様、もう時間は良いの!?」


唐突に女の子の声が響いた。

聞き覚えのあるこの声は――


「レオノーラ様! は、はい。大司祭様とのお話は済みました!

……えーっと、それで今日は……オティーリエ様は?」


「お姉様? 今日はいらしてないわよ。

エミリア様はお姉様のこと、ちょっと過敏すぎるんじゃない?」


「うぅ……。いつも怒られるんですもん……」


「あーもう! 私の前でそんなしおれないでよね!」


そう言いながら、レオノーラさんはエミリアさんの頭をよしよしと撫でている。

……何だかこの二人、見ていて面白いぞ。


「それで、エミリア様。

こちらのお二人、ちゃんと紹介してくれるかしら?」


「はい、わたしが旅先で知り合った大切なお友達です!」


「初めまして、私はアイナ・バートランド――」


「初めまして、アイナさんね。よろしくお願いするわ」


名乗りを途中で切られた!? 『ちゃんと』とは一体……。

少し文句は言いたいところだけど、相手は王族なんだよね。


深呼吸して落ち着こう。

すーはー、すーはー。……よし、おっけー。


「私はルークと申します。お見知りおきを」


「ルークさんね。よろしく」


ルークは私のやり取りを見て、名前だけを名乗っていた。

こういうところ、案外柔軟だよね。


「ところでアイナさんとルークさん。これからお時間はあるかしら。

もしよければ、私の部屋でお茶でもしない?」


「えーっと……」


「はい、決定ね。美味しいお菓子もあるからお楽しみに」


……あれ? まだ返事してないんですけど。


「エミリア様。そういうわけなので、四人でお茶をするわよ」


「は、はい……。

あの、オティーリエ様は本当にいらっしゃらないんですよね?」


「ああもう、そんなに私が信用ないの?」


「い、いえ! そういうことではなくて――」


「はぁ。エミリア様とお姉様がもっと仲良ければ、私も嬉しいんだけど」


「わ、わたしだって仲良くはしたいんですよ?

でも、毎回突っかかって来られるとですね……」


「まぁ、そこは同情するわ」


何やかんやで、エミリアさんとレオノーラさんとの話は続く。

その中で、オティーリエさんがどんな人なのかも少しずつ見えてきた。


エミリアさんはエミリアさんで、何だか人間関係に苦労しているっぽいなぁ……。

そういえば以前『ライバルって響きには嫌な思い出しかない』……みたいなことを言ってたけど、もしかしてオティーリエさんのことなのかな?


そうなってくると、会ってみたいような、会ってみたくないような。

まぁこの調子だと、そのうち会うことになりそうだけど……。


でも今日のところはもう少し、オティーリエさんのいない間にレオノーラさんのことを知っておきたいかな。

今のところ、エミリアさんの味方……っぽくはあることだし。

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

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