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花月夜れん
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榎本くもり
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「お帰りなさいませ、ア・リ・ス・ト・様!」
久しぶりに見たソーイは、色々大変なことがあったのだろうか。寝癖の数がすごいことになっている。気のせいか語気も荒い。
「ただいま、ソーイ。ごめんね、急に帰って来て驚いたよね」
「ご帰宅は別に問題はありません。が、また変な方を拾ってきたんですか?」
じろりとスペードを睨む。怪しさ、胡散臭さ最高な彼はどうしようもなく気になるよね――。
「彼はスペード。詳しくは今から話すから、とりあえず急ぎの用事を済まさせてくれるかな」
「聖女カナのことですね、今向こう側がバタついています」
「うん、急いで話しにいこう」
「はい」
「リサちゃん、部屋で着替えとか済ませておいて、ボクは父上と兄上のところに行ってくる。スペードは――」
「ここで待たせてもらうっす」
ソーイが何か言いたげだったが、アリスがそのまま外へ向かったので一緒に部屋から出ていった。
私は執務室から出て、あの部屋に向かう。とても久しぶりに感じる。
「お帰りなさいませ、リサ様」
「ルーシー! ただいま」
部屋の前にルーシーが立っていた。とてもいい香りがするのはもしかして、紅茶とクッキー!
「湯浴みはどうされますか?」
「時間がないから、あとでお願いします」
「はい、軽食を後程お持ちしますね」
クスリとルーシーは微笑んだ。もしかして、私ヨダレでもでてた!? 念のためペタペタと顔を触って確かめた。大丈夫よね。
私は、旅で使った服をルーシーにお願いして、動きやすい服に着替え、アリスが戻ってくるのを部屋で待った。
久しぶりのルーシーの紅茶はやっぱりとても美味しかった。
ーーー
「いいか、カナに何かあれば、皆首が飛ぶと思え」
魔法の練習で使った場所に私とアリスは立っている。まわりには沢山の衛兵達。そして、目の前にカトル王子とカナちゃんが立っている。カトル王子の側に立っているがルードとリードも一緒だ。そういえば、カナちゃんと直接会うのはこれが初めてだったりするんだよね。
カナちゃんに会うための条件は、この場に立つアリス側の人は私とアリスだけ。他の人は全てカトル王子側の人だ。
前に見たカナちゃんと比べると、目に力がない。
それに、身体のまわり、黒い靄がうっすらと纏わりついている。
「兄上、リサちゃんはカナの為に――」
「殿下、リサ様は先程話したように――」
「うるさい、ルードは黙っていろ。カナがただ一人の聖女だ。その女がカナの為に働くのは当たり前だろう。カナから聖女の魔力を奪ったのだから」
憎々し気な眼差しで睨まれる。カトル王子の中では、カナちゃんの魔なる力は私が奪ったことになってるんだ。
「ちょっと、ルードってば、蹴り飛ばされたんじゃないの? ケガしてるわよ」
サラが囁いてきた。見える場所にケガはないけれど、彼の表情は確かに少しすぐれない。痛いのを我慢してるのかな……。きっと、私の手伝いをしたせいだよね……。
はやく魔獣の浄化を終わらせて、癒しの魔法をかけてあげよう。
ネス、彼女の中の魔獣の卵を浄化して。
小さな狼獣人がふわりと現れて頷く。
「シェイド」
黒い闇が影から伸びてカナを包み込んだ。キラキラと光が空に昇っていく。その光景に人々は不安な声をあげていた。
「カナ! 魔女め、光の聖女を闇に捕らえるとはどういうつもりだ」
「兄上!」
「殿下、私が説明したではないですか! すぐに終わります!」
「カナ! カナ!」
うん、真っ黒で不安になるよね。これは……。
光の粒子が上に上に昇っていく。だいぶ細くなってきた。きっともう少し――。
「もうやめろぉぉーーーー! 私はもう、失いたく――――っ」
「兄上!」
カトル王子が剣を抜き、私に向かってきた。
あまり急な出来事に私は驚き目を閉じてしまう。
ザクリと、何かに剣が突き刺さる音がした。
あれ、私は痛くない。じゃあ、いったい…………。
ゆっくりと目を開けると、見慣れた白銀の髪と、背中、それに剣の先についた赤い色。
「アリスト…………」
「兄……上……」
コメント
1件
やばい…アリスが刺された…! カトル王子の誤解が痛すぎるし、何よりリサちゃんをかばったアリスの行動が尊すぎて胸が締め付けられました。カナちゃんを浄化してたところだったから余計に切ない…。あの「兄上…」って呼びかけるシーン、声が聞こえてきそうな臨場感でした。次どうなるのか気になりすぎます!