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(※夢主はゾルディック家の一員でイルミの妹。銀髪。幻影旅団に一度所属していた過去がある設定です)
あの日、私はクロロ=ルシルフルにすべてを奪われた。家族も、心も、誇りも。
幻影旅団にいたのは――復讐のためだった。
でも、その復讐すら、アイツは奪っていった。
「……久しいな。まさか、君にまた会えるとは思っていなかったよ」
冷たい月明かりの下、クロロは相変わらず静かな声でそう言った。
かつて私の世界を壊した男が、こんなにも穏やかな顔で、まるで罪の意識など一つもないかのように、立っていた。
「私も。……でも、あなたに会えて嬉しいなんて、微塵も思ってない」
私はそう言いながら、隠していたナイフを右手に握った。
クロロの喉元を目がけて、寸分の狂いもなく投げた刃は――
「……やっぱり、殺すつもりだったんだね」
振るう前に、彼の掌で受け止められていた。
「俺を殺したい?それとも、“あのときの自分”を殺したいのかい?」
彼の声には、皮肉も怒りもない。
あるのは、ただ私への興味――それだけだった。
その無感情さに、心が軋んだ。
「……私は、あなたが許せない。けど……」
「けど?」
「それでも……本当は、あなたを忘れたかった」
「……」
「忘れて、誰かみたいに、ただの“ゾルディック家の妹”として生きていきたかった……でも――」
「でも、忘れられなかった?」
私は唇を噛んだ。
悔しくて。
情けなくて。
それ以上に、まだクロロの声に、心が動く自分が――許せなかった。
クロロが一歩、近づく。
私は一歩、後退る。
でも、足は震えていて、もう動けなかった。
「……また、旅団に戻ってこいとは言わない」
「……っ」
「ただ、君が今、何を求めているのか。それだけは、知りたい」
私は、目を閉じた。
復讐?
愛情?
裏切り?
それとも――許し?
どれも本物だった気がする。
どれも、偽物だった気もする。
「……教えてよ、クロロ。私の心は……本当にあなたのせいで壊れたの?」
クロロは答えない。
けれど次の瞬間、ふいに私の手首を掴んで、自分の胸元に引き寄せた。
「壊れたなら……壊した責任、取ろうか?」
その言葉に、心のどこかが――また、壊れた音がした。