E「ごめん、待たせた」
風呂はとても気持ちよかった。湯船に浸かりながら、今日あったことに思いを馳せた。あろまの運転で来たこと、FBが肉ではしゃいでいたこと、きっくんがビールであろまを驚かせていたこと。
風呂から上がると、先に出ていたあろまがマッサージチェアに座っていた。手にはコーヒー牛乳を持ちながら。
A「やっと出たか」
E「あ、コーヒー牛乳俺も飲みたい」
A「そういうと思って買っといたわ」
マッサージチェアの横に小さな瓶が置かれている。
E「ありがと」
瓶の蓋を開け、一気に飲み干す。
E「やっぱ風呂の後はこれだよな」
A「わかる」
目を瞑って椅子にもたれかかりながら、あ゛〜といかにもおじさんのような声を上げる。実際俺達はおじさんなんだけど。
E「ねぇそれ、気持ちいい?」
A「まぁ…そこそこ…」
E「そっか」
隣にある畳椅子に腰を掛け、あろまのマッサージが終わるのを待った。時刻は23時。こんな時間までやっている風呂屋なんて随分良心的じゃないか。
A「行こうぜ」
気づくとマッサージは終わっていて、早く帰りたそうなあろまの顔が横にあった。
E「うん」
風呂を出て、来た道を戻る。来た時はあまり気にならなかったけれど、明かりが少なすぎて道がよく見えない。あろまはよくこんなところスタスタと歩いてきたな…
それでもまた前を歩くこいつの後を小走りでついて行く、その時だった。
A「ん?」
その音に気づいたあろまが振り返る。
E「いった……」
前しか見ていなかったおかげで足元に転がっている石を踏んだらしい。盛大にコケたのだ。
A「おい、大丈夫か?」
E「んー…平気だけど…」
手を見ると、擦り傷から血が出ていた。こんな怪我するなんて小学生以来かもしれない。
A「お前…それ…」
E「あー、痛いけど我慢できるから」
立ち上がってまた歩こうとしていると
A「貸して」
俺の手を強引に引っ張り、とんでもないことをし始めたのだ。
E「ちょっ…!」
A「うるはぃ…」
俺の手にできた擦り傷の埃を払ったあと、
E「そんなこと…なんで舐めて…」
A「ん…そのほうが早く治るって言うだろ」
E「でも!俺の手なんて…それに汚い…」
A「風呂入ったから汚くない…」
滲んだ血がみるみるうちに舐め取られていく。手を舐められる感覚…なんだか変な気分になりそうだった。
顔をしかめる俺には目もくれず、ひたすらに手のひらを舐める。あたりが暗くて良かった。こんなところ、人に見られたら…
A「ん…きれいになった」
満足した様子で、俺の手を握る。
A「またコケるかもしれないから」
そう言ってそのまま歩いていく。そんなあろまを見て、俺は一切言葉が出てこなかった。なんで?って言葉が頭の中をぐるぐるしている。何かを言おうにも、驚きでそれどころじゃなかったから。
E「…あり…がと」
唯一言葉にできたのはこれだけ。
俺は大人しく手を握られ、後ろをついて行った。
To Be Continued…
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